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二十六話  〈視点・エクル〉

新年です。おめでとうございます。

どうぞ今年もよしなに…。



前回の区切りが微妙で申し訳ないです。

エクルが魔法使いの屋敷貰っちゃおうかな、って話でした。確か。

『ずいぶんと北の方にあるみたいだから結界の外は寒いかもねぇ。あ、北っていうのは魔法陣のあった所を基準にしてだよ』


 ポーデトルトがさらりととんでも発言をした。ちょっと待った!!

「ポーデトルトここがどこだか分かるの!?」

『大体の位置ならね。地図はあるかい?』

 おもいがけない告白にみんな驚いた顔をする。分かっていたなら早く教えてよ。

 ガサガサとルゥカが(ふところ)から地図を取り出す。かなりくたびれた地図の上の「ゴード」と記された箇所にティティが人差し指を置く。何をするのかと訝しげに六つの目がそれを見つめる。

『ずっーと北。山脈を越た・・・・・・そう、その辺りだと思うよ』

「へ?」

「えぇ!?」

「おいおい・・・・・・」

 ポーデトルトの指示に従いティティの人差し指が示した場所は万年雪が降り積もり、前人未到の地と言われる山脈の向こうの雪原だった。

「ポーデトルト、ホントにこんなトコにあるの?」

 信じられないというようにルゥカが訊ねる。

『細かい位置は分からないけどこの辺りのはずだよ』

『何がそれほどに信じられぬか知らぬがポーデトルトの能力(ちから)は“探求”じゃ。魔宝石(まほうせき)を探し、求めることがコレの能力じゃ』

 そうダ・リーリが説明する。

 あれ?ってことは

「ポーデトルトには初めから魔宝石の在処が分かってたってこと?」

『そんなことはないよ。敷地自体が結界に囲まれてたからね。有る、ということは分かっていたけどそこまでだよ。それに近づきすぎると逆に分かりづらくなるしね』

 そういうものなのか。

「あ、だから結界その外は真っ白だったのか!」

 そういうことか、とティティが手を叩く。

「なるほど。あの結界の外は猛吹雪で一歩先すら見えない状態だったのか」

「よくこんな所に屋敷を建てようと思ったな。アイツの考えることはわからねぇよ」

 確かに人が寄り付かない豪雪地帯に屋敷を建てれば絶対に見つからない。

「・・・・・・あ!」

「どうかしたの?」

 何かに反応するかのように呟いたティティにルゥカが反応した。

「あ、うん。そろそろ時間みたい」

 そう言って一粒の小さな石を取り出した。

「これも魔宝石なの?」

「違うよ、ルゥカ。これは時空石。わたしが色々な時空(せかい)を旅するのに使ってる不思議な鉱石なの」

 黒曜石のように真っ黒で、表面は研磨したみたいに滑らかですごく綺麗だ。親指の先よりやや大きめで仄かに光っている。光を反射しているのではなく石自体が光を発しているのだ。

「時間ってどういうことだ?」

「次の旅に出る時間ってことだよ。この時空石って不思議でね。その時空(せかい)に魔宝石がないことが分かるとわたしが何をしなくても自動的に次の時空に連れて行ってくれるの」

「ティティ、行っちゃうの?お別れなの?」

 ルゥカが潤んだ目でティティを見る。

「・・・・・・うん。残念だけどお別れ」

 つられてティティも目にうっすらと涙を浮かべる。

「また、会えるかな?」

 たぶん最初で最後の魔法使いの友人。もう二度と会えないなんて言わないで欲しい。

「それはわたしにも分からない。時空石の移動先はランダムだから。もしわたしがまたこの時空に来てもルゥカたちが生きているとも限らない」

 そうだ。ティティは不老不死。老いもしなければ死にもしない。魔法使いは長寿であるが不死ではない。

「これで最後ってことか」

「うん、そうなると思う。どんなことにも絶対はないから」

 寂しそうに頷く。


『エクル、そなたは賢しい。与えられた才を疎まず受け入れた強さもある。きっと優秀な魔術師になるじゃろう。わしが保証しよう』

『そうよ』

『自信を』

『もって』

『魔術に』

『必要なのは』

『知識と』

『『センス!』』

 くすくすと可愛らしく笑う。

 ダ・リーリにそう言われると心強い。リーズメルとイヴメルは相も変わらずどこかずれたことを言うがその気遣いが嬉しい。

『あらあら、エクルの心配事はそれだけではありませんよ』

『ティティと別れてしまうの寂しいのですわ。ね?』

 マチルダとソフィアが鋭いことを言う。

「わしもみんなとお別れするの寂しいよ」

「ティティ!」

「ルゥカ!」

 ギュッと少女二人が抱き合う。

『人生は出会いと別れの繰り返しだからね。出会いがあれば別れがあるのさ。・・・・・・僕、今良いこと言った』

『はいはい、そうだね。ティティそろそろ本当に時間だよ』

 ポーデトルトがイイコト、を言ってフォーガストが適当に相づちを打って流す。

「うん。ルゥカ泣かないで。最後は笑ってさよならしたいな」

 肩に手を添えてそっと離す。

「ティティ、会えてよかった!短い間だったけど一緒に旅ができて楽しかった」

 声が震えている。

「ロドルさん、いつもロドルさんがしてくれるお話楽しかったよ。もっともっと聞きたかった」

「俺は輪廻人(りんねびと)だ。次に会ったときはもっとたくさん話を聞かせてやる。覚悟しとけ」

 そう言って快活に笑う。

「エクルは魔法使いであることをやめないでね。忘れられてしまうことはとても怖いことだから」

「僕が魔法使いをやめてしまったらカミルレさんの想いが無駄になってしまう。それだけは絶対にしたくない。それに何より僕自身が魔法使いになりたいと思ってる。だからティティ心配しなくていいよ」

 ロドル氏と握手を交わし、続いてエクルともしっかりと握手をする。

「みんな元気でね。さよなら、さよなら、さよ・・・・・・・・・・・・」

 泣き笑いをしながら、こんなに近くにいるのに大きく手を振る。

 さよらならを連呼し、それが次第に聞こえなくなる。ティティの口がパクパクとその形に動き何かに吸い込まれていくように、グラリと身体が傾いだと思った瞬間姿を消した。当然ながら後に残るものは何もない.。


「・・・・・・行っちゃった・・・・・ね・・・・・・」

 ポツリとルゥカが呟く。

「本当にこの世界の人間じゃなかったんだな。その場を目の当たりにして初めて実感したぜ」

 ロドル氏が感嘆する。

 エクルだってティティが目の前で消えて初めて実感した。ああやってティティはいくつもの時空(せかい)を翔び回ってのだと。

 ティティは不思議な子だった。

 思えば、ティティに会ってから本物の魔法を知り、自分以外の魔法使いを見た。短い間だったが誰かに直接魔法を教えてもらうこともできた。

 彼女がいなかったら今自分はここにいられただろうか?

 いくつもの偶然と出会いが折り重なってエクルは一つの目的を達成することができた。

 何か一つを盛り越えればその次が待っている。戸惑うことはたくさんあったけど迷うことは何もなかった。

 この屋敷を拠点にまた旅を続けようとエクルは思っている。確かにここは安全だけど、隠っていては駄目だとなぜか思うのだ。ルゥカは分かってくれるだろうか?

 ・・・・・・たぶん大丈夫。今日まで一緒にいてれたエクルの姉だから。

 次に進もう。やるべきことはたくさんあるのだから。

「さて、それじゃ俺らも行くか。頼むぜエクル」

 ポンッと肩を叩かれた。

「玄関ホールに戻らなきゃね。なんかお腹空いてこない?戻ったらご飯にしようよ」

 そういえば昨日の夕飯食べそびれたような・・・・・・。色々ありすぎてすっかり忘れていた。

 

 いつの季節かも分からぬ暖かく気持ちのいい木漏れ日が窓から差し込む。

 三人は並んで書斎を後にした。



これにて『奇跡の継承者と時空の旅人』終了となります。

最後までお付き合いくださりありがとうございます。


閲覧ありがとうございました。

本編は終了し、おまけを1・2話書こうかと思っております。

(年が)新しく始まったのに(話は)終わるって縁起が良いのか悪いのか?…どうでしょ?


2013/01/06「人物紹介」更新しました。


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