二十二話 〈視点・ルゥカ〉
引き続きルゥカ視点です。
*どうしても気になったので書き直しました。
内容は変わりませんが、所々文章が増えたり減ったりしています。
面倒ですが、また読み直していただけたら幸いです。
「輪廻人って知ってるか?・・・・・・知らねぇか。それなら、人の魂はみな輪廻の輪の中にあり人は死んでもまたどこかで生まれ変わるって事は?」
首を縦に振る。
「人が生まれ変わる時は、誰もが真っさらな状態で生まれてくる。死ぬまでに得た知識、築いた関係、成形された性格など。全てがなにもないところから人生は始まるだろ?その中には記憶も含まれる。普通生まれ変わる前、前世の記憶なんて誰も覚えちゃいねぇ。だがな、稀にそのあるはずのない記憶を持ったまま生まれてくる奴がいるんだよ。それが輪廻人だ」
前世の記憶を持って生まれる輪廻人・・・・・・。
「一千年以上前だ。俺の古い友人に魔法使いがいた」
「一千年前!」
「魔法使い!」
ルゥカもエクルもその二つの言葉に反応した。
「そいつが俺に言ったんだよ。輪廻人である俺は記憶を持って何度でも生まれ変わる。もう自分が生きている間に魔法使いは現れないと悟ってな」
「ロドルさんの友人が魔法使い?」
にわかには信じられない。
「森の小屋でヤツが書いた地図があっただろ?ちょいと見せてみろ」
ロドル氏が手を差し出す。
「・・・・・・何だこれは?」
予想通りの反応。一応これが地図です。信じたくないよね。
ロドル氏がため息をついて額をおさえる。
「お前らこれを見てよく探す気になったな。・・・・・・大丈夫だ。ここに記してある場所は分かる」
「分かるの!?」
「どこ?教えて」
こんな地図で場所が分かっちゃうなんて輪廻人ってすごいんだ!!
「お前ら落ち着け。聞いたらすぐにでも行く勢いだな。ティティのことを忘れてやるなよ」
い、いや。忘れてたわけじゃないんだよ。
「あの声の主も気になるところだが、それはティティが起きてからだな。お前らも休むか?」
「うー・・・・・・でもでも・・・・・・」
あー、疲れたけどそれよりも。でもでもティティのことも心配だし。どうしよう。
「その前に僕らからも訊きたいことがあるんだけど。その声について。実はロドルさんも魔法使いなの?」
「・・・・・・いや、違うが。いきなり何を言い出すんだ?」
私も気になってたけど、エクル突然すぎるよ。心臓に悪いから。
『ふむ。やっと出番かの。わしの名はダ・リーリ、賢者ダ・リーリ。我らは魔宝石。魔力を持ち、意思を宿したもの』
そう言ったダ・リーリの自己紹介を皮切りに、皆の声が聴こえた。
「はじめて聞く声も混ざってるな。姿が見えねぇがどういうつもりだ?」
やっぱり、ダ・リーリたちの声はロドル氏にも聞こえているらしい。
でも、魔法使いじゃないんだよね?
ダ・リーリがコホン、と一つ咳払いをした。
相も変わらず、交互に淀みなく話すのはリーズメルとイヴメルだ。
『輪廻人とか言ったかの。魔術師が存在したとされる一千年以上前から同じ魂で転生を繰り返してきたということであろう?ならばその魂にマナが浸透しているやもしれぬ』
魂に浸透?うーん、よく分からない。
エクルも首を傾げていたのか、ダ・リーリがそんな二人に気付いてさらに説明してくれた。
『マナが魔術を施行するのに適した形をとっていた一千年以上前から幾度も生まれ変わりをしてきたのであろう?なればその時代を生きたそなたの魂にはそのマナが自然と沁みているのいるのじゃろうて』
「でも魔法使いではないんでしょ?」
ルゥカが質問する。
『うむ。魔術師ではない。少々ルゥカと似ておるかの。魔術は使えんがわしらの声は聞こえる所がの。一時ではあるが魔術師と共にいたのであろう?その魔術師に多少は影響を受けとるかもしれん』
「どんな影響だ?」
ロドル氏が目を細める。ちょっと怖いよ。
『魔宝石の声を聞き、あるいは姿を視ることができる、そんな影響じゃよ。まぁ、全ては憶測にすぎんがの』
えーじゃぁ、視えないのは私だけ?ずるい~。
『あくまで可能性のじゃ。今は試すことはできんがの』
「何でできないの。さっきから一度も姿視せてくれてないよね?」
え?居なかったの?エクルが普通に話していたからてっきりそこにきるのだと思っていた。
『ティティが眠っておるからじゃ』
何でそこでティティ出てくるの?
ルゥカは内心で疑問符を浮かべる。
「魔宝石ってのがどんなものか今一分かんねぇが、こいつらにも身体があるってことか?だが、原理は謎だがティティが起きていないとダメだ、と」
『ふむ、元々わしらは宝石に宿った魔力と意思の非常に曖昧な存在じゃ。気づかぬ者にはただの宝石としか見られないほどにな。しかし、ティティはそんなわしらを実体ではないが具現化することができる。魔宝石に宿った意思を細部まで明細に想像することで成せる技じゃ。故にティティが眠っている今、わしらは具現化できぬ』
これも魔法?
『魔法とはちと違うかの。ティティが元々持っていた特殊な能力がわしらと出会ったことにより開花したと考えるべきじゃろて』
特殊な能力。ティティって多才なんだ。
それよりも
「ねぇ、それが魔法じゃないならティティの魔法はどんなものなの?」
ルゥカが訊く。
以前ティティ自身も魔法を使えるようなことを言っていた。これがティティの魔法でないのならティティはどんな魔法が使えるのだろう?
『ゼワン・ダ・ユロ。通称ゼワン。聖歌という形無きものを媒体とした医療の技術に特化した国・・・・・・それがティティの故郷じゃ。そこの教会でティティは育ったそうじゃ。両親はおらず顔も知らぬと言っておった。詳しいことが知りたければ直接ティティに訊いとくれ。わしからはこれ以上は言えんわ』
本人の知らないところで詳しくは訊けないよね。知りたいなら本人に訊こう。
「歌で治療する魔法?」
「そんなものがあるんだ。すごいね!」
世界にはティティとエクル以外の魔法もあるってことだよね。すごい!
「あいつも幸せだな。二人も技を受け継ぐ魔法使いが現れたんだ。生きていいる間に会えなかったことだけは悔やまれるがな」
どこか感慨深げにロドル氏が呟く。
「うーん、それはちょっと違うかも。事態の認識に相違があるよ・・・・・・おはよう」
グッと身体をのばしながら欠伸をかみ殺してティティが言った。
「え、ティティ?もう起きて平気なの?」
「いつ起きた?いや、起きてた?あんな大ケガしたんだから、もっとゆっくり休んで」
「ほぅ、魔法ってのはやっぱりすげぇな」
び、ビックリした。
「・・・・・・ん?おはよう?」
あれ?
「何かおかしかった?もう朝だよ」
言われて、小屋にある窓の外を見てみれば清々しい東雲の空が広がっている。
「その顔は・・・・・・みんな寝てないね?目の下に隈ができてるよ」
指で自分の目元をなぞり、にこやかに笑うがやはりどこか陰りがある。一晩寝ただけでは体力の回復はできないらしい。
「ティティ、ケガは平気なの?疲れてない?」
「ちょっとだるいけど大丈夫だよ。これくらい余裕。それよりも迷惑かけてごめんなさい。そして、ありがとう。助けてくれたエクルにもケガの手当てを手伝ってくれたルゥカにも。巻き込んじゃっただけなのにこんないい隠れ家に案内してくれたロドルさんにも。ホントありがとうございました」
姿勢を正し、ティティが頭を下げる。
「いくらあの程度じゃ死なないとはいえ痛いものは痛いからね」
「ティティ、あれはかなり危なかったよ。危うく死ぬところだったからね」
まだ意識がはっきりしてないのかな?それともその時の記憶が曖昧?
「死なないよ。あれくらいじゃ、ね」
「どうして?あれは絶対に危なかった。誰が見てもそうだよ。ねっ?」
エクルとロドル氏に同意を求め、それに二人は頷いて肯定の意を示す。
『それは私が共にあるからですよ』
穏やかな淑女の声がした。マチルダだ。
『私の能力は“不老”そして“不死”・・・・・・。大人になることもできず、いくら辛い思いをしても死ぬことのできない。多くの者が望み、多くの者が忌み嫌うもの。それが私です』
マチルダの声に自己嫌悪はない。あるのはただ憂いと哀しさだけだ。
「不老不死・・・・・・」
知らない言葉ではない。魔法使いについて調べていると自然とよく目につく。
しかし、魔法使いは長寿ではあるが不死ではない。現に、魔法使いはすでに死に絶え一千年の永い時を経てやっと一人の魔法使いが現れた。
「そんなマチルダのおかげでわたしは何度助けられたか」
首を振ってため息をつく。仕方ない、とでも言いたげだ。普通に世間話をしているふうである。何だか軽い。
「ところで、この後どうするの?いつまでもここでお世話になるわけにはいかないし、宿に戻る?」
さ、この話はもう終わり、と言うように話題をかえる。
「ううん、すぐにでも地図の場所へ行こう!」
「え?地図の場所が分かったの!?」
エクルがこれまでの話を説明すると案の定
「よし、すぐにでも行こうか!」
なんて言い出した。
「ちょっと待った!」
「ちょっと待て」
エクルとロドル氏が制止をかける。
「病み上がりの人が何言ってるの!」
「そうだ。ルゥカだって昨日から一睡もしてねぇだろ。無茶言うなや」
「うっ・・・・・・そうだけど・・・・・・」
地図の場所に着くまでどれだ歩くのか分からない。
「そんなこと言って、実はエクルもロドルさんも気になってるんじゃないの?行こうよ、ねっ?」
ねっ、て・・・・・・。
ロドル氏がチラリとエクルとアイコンタクトをしたことにルゥカとティティは気づかない。
「ティティ、年よりに無理させるなや」
「・・・・・・! そうだよ。僕も何だか疲れたし」
「疲れてるの?なら任せて!」
パッと顔を輝かせたかと思うと突然にティティが歌いだした。
誰も口を挟む間もなく「よし、どう?」と訊くティティの声に我にかえる。
ティティの魔法の歌だ。ついさっきそのことを教えてもらったばかりなのすごいけど、その手があった・・・・・・。
「すごい!身体が軽い」
「ぐっすり寝て起きた後みてぇだな」
「疲れもとれてる。これがティティの魔法」
「良かった。これで大丈夫だね」
にっこり。
「はぁぁーー。もう一回地図、見せてみろ」
観念したのか特大のため息をついてロドル氏が手を差し出す。
再度エクルがガザゴソと荷物をさばくり中から地図を取り出し手渡す。
「ふっ・・・・・・じゃ、行くぜ?」
無意識に緊張していたのかその言葉を聞いてつてた息を吐く。
「それでどこなの?近い?遠い?」
待ちきれないのかティティが矢継ぎ早に質問する。
「お前さんの顔がちけぇよ」
「あ、つい」
「だがそれと同じくらいちけぇよ。・・・・・・ここだからな」
「「「は?」」」
「だから、この小屋がこの地図に描かれた場所だ。まだゴードが町と呼べるほど広くなかった頃に描かれたものだからな。当時の家が建っていたのは旧領主邸の辺りだけだって前に話しただろ?」
そういえば、いつだか食堂で話してたよね。でもロドル氏の言う昔が一千年以上も前のことだったなんて・・・・・・。
「昔は両側にも建物があったんだが時代の流れと共に壊されてなくなっちまった。この小屋が残ってたのは小屋の主と領主が知己の仲だったからだ」
そのおかげで今日まで残っていたのか。
「それなら、ここで呪文を唱えればいいんだね」
「そうと分かれば早速唱えてみよう!さ、エクル」
目的の場所はすぐそこだよ。
「そんなに見られると緊張するんだけど」
「大丈夫、大丈夫!気にしない、気にしない!」
そうそう。気にしない。気にしない。気にしたら負けだよ、エクル。
しばらく渋っていたエクルだが、観念したのか大きく深呼吸をして呪文を唱えた。
瞬間、今までに何度か見たあの光の線が走る。
円を描き、置いてあった木箱や工具、壊れた清掃具を透過して魔法施行の証明となる魔方陣が浮かび上がる。
複雑な魔方陣が完成する頃には小屋の中は光が溢れ、とても目を開けていられなくなった四人は反射的に目を閉じる。
それでもなお眩しい、白い世界でふわりと浮遊感を感じたのは刹那の時間で次の瞬間にはしっかりと足が地についていた。
かなり、重複しておりますがこれでエクル視点に追いつきました。
閲覧ありがとうございました。
次回からまた進みます。




