十九話 <視点・エクル>
ロドルさんの正体と、かるくティティの生まれも暴露。
ただし本人は寝ています。
「輪廻人って知ってるか?・・・・・・知らねぇか。それなら、人の魂はみな輪廻の輪の中にあり人は死んでもまたどこかで生まれ変わるって事は?」
首を縦に振る。
「人が生まれ変わる時は、誰もが真っさらな状態で生まれてくる。死ぬまでに得た知識、築いた関係、成形された性格など。全てがなにもないところから人生は始まるだろ?その中には記憶も含まれる。普通生まれ変わる前、前世の記憶なんて誰も覚えちゃいねぇ。だがな、稀にそのあるはずのない記憶を持ったまま生まれてくる奴がいるんだよ。それが輪廻人だ」
ティティの寝息が聞こえる。規則正しく胸が上下している。
「一千年以上前だ。俺の古い友人に魔法使いがいた」
「一千年前!」
「魔法使い!」
エクルもルゥカもその二つの言葉に反応した。
「そいつが俺に言ったんだよ。輪廻人である俺は記憶を持って何度でも生まれ変わる。もう自分が生きている間に魔法使いは現れないと悟ってな」
「ロドルさんの友人が魔法使い?」
にわかには信じられない。
「森の小屋でヤツが書いた地図があっただろ?ちょいと見せてみろ」
差し出された手につい条件反射で地図をのせる。
「・・・・・・何だこれは?」
まあ、誰でもそう言うよね。なんたって地図とは呼びたくない地図だし。
「あの、バカが・・・・・・」
ため息をついて額をおさえる。
「お前らこれを見てよく探す気になったな。・・・・・・大丈夫だ。ここに記してある場所は分かる」
地図を睨みながら言ったロドル氏の言葉に二人が喰いつく。
「分かるの!?」
「どこ?教えて!」
その迫力にロドル氏が気圧されるほどだ。
「お前ら落ち着け。聞いたらすぐにでも行く勢いだな。ティティのことを忘れてやるなよ」
シュウ、と空気が抜けるうように二人から勢いがなくなる。
「あの声の主も気になるところだが、それはティティが起きてからだな。お前らも休むか?」
「うー・・・・・・でもでも・・・・・・」
「その前に僕らからも訊きたいことがあるんだけど。その声について。実はロドルさんも魔法使いなの?」
「・・・・・・いや、違うが。いきなり何を言い出すんだ?」
ロドル氏は話が見えないという顔をしている。
『ふむ。やっと出番かの。わしの名はダ・リーリ、賢者ダ・リーリ。我らは魔宝石。魔力を持ち、意思を宿したもの』
『そんな慇懃に言うほどすごくはないけどね』
『ポーデトルト、茶化してはいけませんよ。こういうことは雰囲気が大切なのですから』
『そうですわ。大切なのは雰囲気とノリ、ですわ』
『それとあとは』
『多少の見栄?』
『・・・・・・みんな自重しようよ。収拾がつかなくなるから』
ホントに収拾がつかなくなりそうで怖い。
彼らは個性がありすぎだ。
「はじめて聞く声も混ざってるな。姿が見えねぇがどういうつもりだ?」
やはりダ・リーリたちの声はロドル氏にも聞こえているらしい。
でも、魔法使いではないと言っている。
(姉さんと似たようなものかな?)
彼らはいまだに姿を見せてくれない。声だけでは不安だ。
ダ・リーリがコホン、と一つ咳払いをした。
『ふむ。やはりわしらの声は聞こえておるようじゃの』
『でも』
『魔術師』
『ではないわね』
『違うものだわ』
交互に淀みなく話すのはリーズメルとイヴメルだ。
『輪廻人とか言ったかの。魔術師が存在したとされる一千年以上前から同じ魂で転生を繰り返してきたということであろう?ならばその魂にマナが浸透しているやもしれぬ』
「魂に浸透?」
よく分からない。
そんなエクルたちに気づいたのかさらに説明してくれた。
『マナが魔術を施行するのに適した形をとっていた一千年以上前から幾度も生まれ変わりをしてきたのであろう?なればその時代を生きたそなたの魂にはそのマナが自然と沁みているのいるのじゃろうて』
「でも魔法使いではないんでしょ?」
ルゥカが質問する。
『うむ。魔術師ではない。少々ルゥカと似ておるかの。魔術は使えんがわしらの声は聞こえる所がの。一時ではあるが魔術師と共にいたのであろう?その魔術師に多少は影響を受けとるかもしれん』
「どんな影響だ?」
『魔宝石の声を聞き、あるいは姿を視ることができる、そんな影響じゃよ。まぁ、全ては憶測にすぎんがの』
「ロドルさんも視えるの?いいな・・・・・・」
一人、見えないルゥカが羨ましがる。
『あくまで可能性のじゃ。今は試すことはできんがの』
「何でできないの。さっきから一度も姿視せてくれてないよね?」
少々責めるような口調にってしまったのは不安の裏返しだ。
『ティティが眠っておるからじゃ』
長い髭をなでながら難しい顔をするダ・リーリの姿が思い浮かんだ。
「魔宝石ってのがどんなものか今一分かんねぇが、こいつらにも身体があるってことか?だが、原理は謎だがティティが起きていないとダメだ、と」
ロドル氏が上手くまとめてくれた。
『ふむ、元々わしらは宝石に宿った魔力と意思の、非常に曖昧な存在じゃ。気づかぬ者にはただの宝石としか見られないほどにな。しかし、ティティはそんなわしらを実体ではないが具現化することができる。魔宝石に宿った意思を細部まで明細に想像することで成せる技じゃ。故にティティが眠っている今、わしらは具現化できぬ』
そうだったのか。これも魔法の一種だろうか?
『魔法とはちと違うかの。ティティが元々持っていた特殊な能力がわしらと出会ったことにより開花したと考えるべきじゃろて』
エクルの心を読んだようにダ・リーリが説明してくれた。
誰かの姿を細部まで・・・・・・細かくハッキリと、思い浮かべる。とても常人の技ではない。そんなことがティティにはできる。また一つティティのすごさを知った。
「ねぇ、それが魔法じゃないならティティの魔法はどんなものなの?」
ルゥカが訊く。
そういえば前にティティ自身も魔法を使えるようなことを言っていた。
『ゼワン・ダ・ユロ。通称ゼワン。聖歌という形無きものを媒体とした医療の技術に特化した国・・・・・・それがティティの故郷じゃ。そこの教会でティティは育ったそうじゃ。両親はおらず顔も知らぬと言っておった。詳しいことが知りたければ直接ティティに訊いとくれ。わしからはこれ以上は言えんわ』
他人の過去だ。当然だろうと納得する。
それはさておき・・・・・・
「歌で治療する魔法?」
「そんなものがあるんだ。すごいね!」
世界には実に様々な魔法が存在するのだ。改めて実感する。
「あいつも幸せだな。二人も技を受け継ぐ魔法使いが現れたんだ。生きていいる間に会えなかったことだけは悔やまれるがな」
どこか感慨深げにロドル氏が呟く。
ティティの特殊な能力は「魔宝石に宿った意思を細部まで明細に想像すること」です。「妄想」ではありません。「想像」です。これ重要です。
閲覧ありがとうございました。
エクル達があの地図で探す気になったのは初めて魔法を見たことと、今までにもこんな落書きレベルの地図を見たことがあるがらです。




