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十八話 <視点・エクル>

バレちゃった…。

 迷うことなくロドル氏が向かったのは

「旧領主邸?」

「そうだ。こっちだ。使用人用の扉から入るぞ」

 大きな格子状の門の横にある小さな扉から中へ入る。

 馬車が余裕で通れそうな正門に対して使用人用の扉は腰を屈めてやっと通れるくらいだ。

 どこから出したのか鍵をエクルにわたし、それを鍵穴に差し込み捻る。全員が扉を通った後、再び鍵を掛けロドル氏の先導で歩く。

 

 たどり着いたのは夕方ティティがロドル氏にアレは何かと訊いた水車のついた物置小屋だった。

 ここの扉に付いていた錠前もロドル氏から受け取った鍵で難なく開いた。

「それとこれをあっちに持って行ってくれ・・・・・・それと、そこにかけてある布も頼む」

 ロドル氏の指示に従い木箱を二つ並べて、その上に畳んで厚みをもたせた布を敷き即席のベッドを作る。

 そこへロドル氏がそっとティティを下ろす。

「うぅ・・・・・・」

 横たえられたティティが呻き、うっすらと目を開ける。

「ティティっ!」

 エクルとルゥカが覗き込むように身を乗りだす。

「ここ・・・・・・どこ?」

「旧領主邸の物置小屋だよ」

「ほら、水車のある。ティティがロドルさん訊いてた」

 エクルとルゥカ交互に答える。

「旧、領主邸?水車・・・・・・ロドルさん?・・・・・・ごめ・・・・・・迷惑かけ・・・・・・」

 今の状況を思い出したのだろう。掠れた声で謝る。

「ううん、ティティは悪くないから」

 涙ぐんだ目でルゥカが慰める。

「ティティはまず少しでもはやく元気になることを考えて」

「二人の言うとおりだ。もう一眠りしておけ」

『そうじゃな。一曲歌ってから眠りにつくとよい』

 口々にそう言われて小さく頷く。



 喜びも悲しみも全て過去のこととしよう

 過ぎ去りし嘆きも置き去りに

 振り返った先にある愛さえも全ては過去のこと

 今この瞬間だけは無であること

 それは自らが望んだこと

 (のち)に悔いるな 今を望め

 この未来(さき)に待つのは未知


 不安も恐れも全ては過去の感情(もの)

 すれ違う心や向けられる優しさにも目を覆い

 盲目で在ること

 今この瞬間だけは虚無であること

 主の導きを無駄にせぬために

 心を殺して 空虚を仰ぐ

 主の御心のままに



 歌い終わると、またスッと眠りにつく。疲れたからちょっと昼寝してます、というような雰囲気だ。少し安心する。

「さて、後で説明すると言ったな若人。姿が視えねぇからって逃げられると思うなよ」

 落ち着いたところでロドル氏が切り出した。

「エクル、お前のことについても知りてぇな」

 ドキリと心臓が跳ねる。化け物、と(かしら)がティティに言っていた姿が脳裏をよぎる。

「心配するな。別にどうこうするつもりはねぇよ。ただお前らが何者なのか知りてぇだけだ」

「知って・・・・・・どうするの?」

 懐疑心(かいぎしん)のこもった目でルゥカが見つめる。

「俺はな~、とある人物を待ってるんだ。それはもう、気の遠くなるくらい永くな」

 とつとつと語りだす。

「古い友人に頼まれてな。自分もう永くない、だから俺にもしその人物が現れたら自分の代わりに導いてやってくれって頼まれたんだよ。気難しいヤツでな。変わった話し方をするヤツなんだが当時俺の知り合いはもうヤツしかいなかった。ヤツにとっても頼めるのなんて俺くらいしかいなかったんだよ」

 目を細めて遠くを見る。

「でも、それと僕らが何者なのかとは関係ないんじゃ?」

「全く、というわけじゃねぇと思ってる。が、まあ俺個人が興味あるって言うのも理由の一つだな。それに類は友を呼ぶって言うだろ?もしヤツの言う待ち人なら必ずこの町に引き寄せられると本人が断言していたからな」

 ティティが寝返りをうって肩から落ちた布をロドル氏がかけ直してやる。

「それで、お前らは一体何者なんだ?」

 再度その質問をぶつけてくる。

 覚悟は決めた。正教会に突き出す機会なら何度かあった。それをやらなかったのだ。ロドル氏を信じたい。

 グッと腹に力を入れる。

「すでに予想はついていると思うけど僕は魔法使いだ。ティティもそう。でも姉さんは違う。姉さんは普通の人だよ」

 一度目を見開き黙ってしまったロドル氏に不安を感じてエクルは言い募る。

「僕は魔法を使えるけど姉さんは使えない。町を歩いている人たちと同じだよ」

「確かに魔法は私たちの想像を遥かに超えている力だけど、それでもそれは使う人の気持ちで変わる。魔法を悪だと決めつけないで」

 懇願するようにルゥカが訴える。

「おめぇら確か、何か探してるって言ってたな?」

 唐突にロドル氏が脈絡のない質問をする。

「い、言ったけど・・・・・・」

 それがどうした?とエクルが眉を寄せる。

「探している物ってのは本当にこの町にあるのか?在処を記した、地図とか持ってたりしねぇか?」

 それを気にせず重ねて質問する。

「地図は・・・・・・一応持ってる」

 あれを地図と呼べるのなら。

「その地図ってのはゴードからから一週間歩いた距離にある森の小屋で見つけたものじゃねぇか?」

「「っ!?」」

 何でそれを?

「図星、みてぇだな。そうか・・・・・・おめぇらが見つけたのか。あぁ、永かったな・・・・・・」

 ロドル氏がどこでもない、遠くを見つめる。

 あの小屋は魔法で隠されていたはず。どうしてロドル氏が小屋の存在を知っている?


「待ってたぜ。エクル、いや次代の魔法使い殿」


 ロドル氏はエクルを見てニヤリと笑う。

「待ってた?ロドルさんが僕を?」

 なぜ?


バレちゃたった、言っちゃった。

ロドル氏は何者か…次回へ続きます。



閲覧ありがとうございました。

ティティの歌を考えるのが大変です。

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