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十六話 <視点・エクル>

【注】前回に引き続き不快な表現を含む文章があります。

 苦手な方はお戻りください。

 怖くてロドル氏の顔が見られないが身体が緊張するのが気配で分かった。

 彼らにしてみれば目の前に大金が立っているようなものなのだろう。

「ねぇ、さっきから気になってたんだけど、その化け物ってもしかしてわたしのこと?」

 ティティが自分を指して問う。

 エクルたちより一歩前にいるためどんな表情をしているか知ることはできないが、ただ純粋に不思議に思ったから訊いたというような声音だった。けれどそれはどこか抑揚がなく冷たい声音だった。

「はっ、他に誰がいるんだよ。あー、でもせっかくの金が一人分だけだってのももったいねぇな。ついでにそこのガキ二人とジジィも化け物だってことにして突き出すか。国民の平和のために」

 最後の一言をことさら強調する。

「そりゃあ、いいぜ(かしら)。名案だ」

 どうにかしてロドル氏だけでも逃げられるようにしなければ。

 自分たちと居たがために、ただそれだけのために正教会に魔法使いとして突き出されるなんてあまりにも理不尽だ。

 彼らが魔法使いを呼ばう「化け物」というそれは全ての人の魔法使いに対しての認識だ。

 その考えを広めた中心である正教会で明るい未来が待っているはずがない。いくら違うと声を大にして叫んでも聞き届けられることはなだろう。

 今ここで何とか逃げ切ってもこの盗賊たちはティティや一緒にいるエクルやルゥカ、たまたま居合わせたロドル氏にことを吹聴して回るだろう。

 彼らに捕まっても、運良く逃げ切ってもどちらに転んでもエクルたちが助かる道はない。どうすれば・・・・・・?

「そういう訳でおとなしく捕まってもらおうかっ!」

 言い終わるのと同時に頭が踏み込んでナイフを振るう。一歩下がってそれを避けたティティに頭の横にいた手下が間を入れずに追撃を仕掛けるが、紙一重でその攻撃をかわす。

「よそ見してんじゃねぇよ!」

 ハッとして咄嗟にダガーを構え、振るわれたナイフを弾く。

 エクルとルゥカにも両側にいた手下が襲い掛かる。避けて、弾いて、受け止めて。分かっていたことだけど明らかに相手の方が強い。

 エクルもルゥカも防戦一方だ。

 カラン、乾いた音がしてナイフが地面に転がる。

「生言ってんじゃねぇぞ。若造が!」

 背後にいた手下が右手をおさえてロドル氏を睨んでいる。

「くそっ!ジジィが」

 どうやらロドル氏に手刀をくらったらしい。実はかなりの実力者なんじゃ・・・・・・。

「昔とった杵柄だ」

 エクルの心を読んだようにチラリと流し目をを寄越しながらロドル氏が言った。渋い。

「ジジィの分際で調子こいてんじゃねぇ!」

 言うなり頭がロドル氏に斬りかかる。

 それを余裕で避けて懐に拳を叩き込む。が、頭は自ら後ろに跳んでダメージを軽減する。

「ぅおっと」

 さっきロドル氏に手刀をくらった手下が足払いをかけてきた。

 気配で気づいたロドル氏だったが、かわしきれずにバランスを崩し地面に片膝をつてしまう。そこへこの好機を逃すまいと頭がナイフを突き出した。


「ロドルさん!」


 叫んだのは誰だろう・・・・・・。

 迫る切っ先。

 顔を歪めるロドル氏と頭との間に人影が割り込む。そして、ナイフは吸い込まれるようにその人影に突き刺さった。

「ティティ!」

 ナイフが刺さったところからジワリと赤い血が広がる。

「くぅ・・・・・・」

 苦痛に堪えきれずティティが膝をつく。

 駆け寄りたくても手下が邪魔をして身動きが取れない。

「化け物が何してくれんだよ。死んじまったら金になんねぇだろ!」

 怒りに任せてナイフの刺さった付近を蹴る。

 呻き声を漏らしながらティティが地面に倒れこむ。

 言っていることとやっていることが矛盾している。それでは余計死ぬ確率を高めているだけだ。

「頭落ち着いてくださいよ」

 足払いをかけた手下が宥める。

 ティティを濡らす赤い水溜りはゆっくりと範囲を増し、止まる気配はない。

 何も考えられずに自然と口から呪文が漏れた。

「!」

 今ここで魔法を使うことは危ういだとか、自分が魔法使いであるとか。それがロドル氏にバレてしまうとか、全てがどうでもいいと思った。

 とにかく今は目の前の障害物を退かしてティティに駆け寄ることだけを考えていたその後で自分に何ができるかすらも分からずに。

 手下の身体を浮かせて、二メートルくらい持ち上げたところで魔法を解く。浮いた状態で魔法を解かれれば支える力はなくなり当然身体は地面に落ち、強かに打ち付ける。

 制御が巧くいかずにルゥカに近くにいたもう一人まで一緒に浮かせてしまった。ま、いいやと思い続けて肉体強化の魔法を自分にかける。

 地面に横たわり気を失った手下二人を飛び越えて頭とそれを宥める手下の側頭部にダガーの柄を叩き込む。

 あまりの速さと突然の魔法に二人とも対応する間もなく昏睡する。

「ぅうわー!!」

 ティティが応戦していたはずの手下が叫び声を上げ、エクル達に背を向け走り出した。

 ここで逃げられたらまずい。直感的にそう思い、一息で追いつくと足を引っかけて転ばせ鳩尾に拳を叩き込んだ。

「くはっ」

 呆気なく手下は意識を手放した。


ティティ負傷。頭のせいでさらに悪化。

ティティは「自己犠牲は美徳」という考え方の人ではありません。


「十六話」投稿までに2回下書きを消失。その都度内容は簡略化。3度目の正直で無事投稿。

…精神的ダメージが大きいです。


閲覧ありがとうございました。

次回、ティティの運命や如何に!?……なんて。

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