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十四話 <視点・ルゥカ>

短め仕様となっております。

 それでも、翌日には疲れもとれてすっきりと目を覚ます。記憶はないけどたぶんティティのおかげだ。また歌ってくれたに違いない。ホントに不思議な歌だ。

 自警団と正教会のある地区にはバレないかと終始怯えながら探して回り、旧領主邸のある富裕層の別荘が並ぶ地区では旧領主邸を訪れた観光客や別荘に出入りしている商人たちに混じり歩き回った。

 旧領主邸はその広い敷地にある庭を一般に開放しているのだ。

 四季折々の花が咲く花壇や、つる草を巧みに使った東屋。植木を複雑に植えて造られた迷路などがあり一日中そこで楽しむこともできる。

 特に小さな子どもに人気があると諸々の説明や敷地内を案内してくれたのは、ここで庭の管理や世話をしている人の一人でロドルと名乗った。禿頭(とくとう)の六十歳前後の男性で、実は彼とはすでに認識があった。

 夕方のちょうど混み合う時間に店に入ってしまった三人は相席なら空いていると言われ、その時一人で来ていたロドル氏が快く空いていた席に座らせてくれたのだ。

 それ以来、同じ時間にその店に行くと決まってロドル氏がいて夕食を一緒するようになった。と、言ってもロドル氏が食べるのはつまみ等の軽食とお酒なのだが。ようは飲みに来ているのだ。

 仕事のあとのこれがたまらないと体格のいい身体を揺らしながら豪快に笑っていた。

 ロドル氏はあれで意外と情報通で色々なことを知っていた。旧領主邸のことはもちろん、どこの宿が安いとかあそこの店の主人はよくまけてくれるとか、どこそこの店はいい酒を仕入れているとか。その内容は多岐に渡る。

 そのロドル氏がまさか旧領主邸で働いているとは知らず再会したときは驚いた。しかし、ロドル氏の方は予想していたのかよく来たな、と言ってニヤリと笑った。

「もー、教えてくれればよかったのに」

「教えてくれてれば真っ先に行ったのに。ね?」

「ね、ってそこで同意を求められても。まぁ、順番を繰り上げて行くことはしたかも」

「それじゃあ面白くねぇだろ?話聞いてりゃ、おめぇらが来ることは簡単に予想できたんだ。これはもう驚かすしかねぇだろ」

 そう言って、ロドル氏はジョッキの中の酒を一気に呷った。

 一通り旧領主邸を案内してもらい、まだ仕事のあるロドル氏とは一旦別れいつもの時間のいつもの店のいつもの席に座り今日の出来事を語らう。

「そういえば知ってるか?昔はな、ゴードも小さな町でな。家が建ってたのだって今の旧領主邸の辺りだけだったって話だ」

「今の広さの五分の一?」

 ティティが驚いた顔をする。

「想像もつかねぇだろ?このゴードの町が、だ。今でこそ旧領主邸が建ってるが昔は普通の民家が何軒かあるだけだったんだ」

「町って言うよりも村だね」

 夕食のロールキャベツを口に運びながらティティが相づちを打つ。

「そうさなー。どちらかと言えば村なのかもな」

「そんな小さかった村が町まで大きくなったんだ。すごいね」

 主に話しているのはロドル氏とティティだ。ルゥカとエクルは二人の会話を聞いている。

「人の集まる所はな自然と発展するもんよ」 

 遠くを見つめるように目を細める。まあずっと昔のことだがな、と豆を塩茹でしただけの簡単な料理をつまむ。

 村が大きくなり、町になって、人が集まるようになる。人が集まれば必然的にそこで物を売ろうとする物が現れ、さらにそこに住み着く人も現れる。

 ひっそりと暮らしていた魔法使いには迷惑なことだったかもしれない。

 家が増え、人が増えるのに自分の技を継ぐものは現れない。

 同じ力を持つ者は見えない糸で引かれるように一つの場所へと集まるものだとダ・リーリが言っていた。それなら、自分たちがこうして魔法使いの痕跡を辿り旅をしているのもその見えない糸によるものなのだろうか?

 理屈はどうあれ今は亡き魔法使いに導かれるようにゴードの町までやって来た。

 地図に記された場所が分からず手詰まってはいるけれど今までだって少しずつ前に進んできたのだ。きっと必ず今度もどうにかなるはずだ。諦めずに探せばきっと見つかる。

 夜の色が濃くなるにつれ、店内はさらに賑わい密度が増す。ロドル氏とティティの会話を聞きながらルゥカはそんな事を考えた。

 まぁ、地図をもっと分かりやすく書いてくれればこんな苦労はしなかったはずだけど。


いつだか、前にエクルの視点が長いと書いたことがありましたが、今回のルゥカ視点の方が比べたらダメなくらい長かったです。


ロドル氏、新キャラですね。豪快なおじいさんです。


閲覧ありがとうございました。

次回からは久しぶりのエクル視点でお送りします。

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