十三話 <視点・ルゥカ>
ルゥカがキレます。
時々、エクル視点か、ルゥカ視点か分からなくなります。
「はて、自分はどちらのつもりで書いたのか…?」 …なんて。
次の日は朝食をとると早々に地図を片手に町へ繰り出した。
宿のある通りから一本出た大通りに沿って歩き、道なりに行くと目的の場所へとたどり着く。
今朝、食事をしながら相談した結果一番近い所に行ってみようということになったのだ。
ゴードの町は大きく五つに分けることができる。門から一番近く、宿屋が密集している地区。そこを囲むように食事や酒を提供する店が軒を連ね、町の中心には所狭しと商人たちが様々な土地で仕入れた品物を並べている。競うように声を張り上げ客寄せをしている姿があちらこちらに見える。
門を背にして、そこの左手にあるのが旧領主邸と富裕層の者達が自宅とは別にここ逗留するときだけ使う邸が建ち並ぶ。いわゆる別荘というやつだ。
旧領主邸とは、昔この辺り一帯を治めていた領主の邸で今では誰も住んでいない。
右手には自警団の宿舎がある。この自警団は町の勇士によるもので定期的に巡回しては日々平和のために奮闘している。
宿舎の近くには正教会もあり、驚くことに自警団との仲は悪くない。大抵の場合武力で問題を解決したがる彼らと卓上議論が大好きな教会とではそりが合わないことが多いのだが、ゴードではその例に当てはまらないらしい。
町の勇士による自警団というところがいいのかもしれない。町の住民や商人達には喜ばしいことかもしれないがルゥカたちにとってはあまり嬉しくない。迷惑なだけだ。
もし何かに巻き込まれでもして自警団のお世話になったとして、エクルとティティの正体がバレた場合に即座に仲のいい正教会に情報が漏れてしまう。仲が悪ければ正教会に報せるのを躊躇して少しは時間がかせげる可能性があるのだが。
とにかく極力目立たないようにしなくれはいけない。
宿屋が密集した地域を抜け、三人が向かったのは食事や酒を提供している地域だ。今は朝食をここで済ませようという人達でごった返している。
「エクルどこ?」
「ルゥカ、ちゃんとついて来てる?」
「ティティここだよ!」
はぐれないようにしながらどうにか目的の場所に到着した。
「着いたよ。着いたけど・・・・・・」
「何か違う気がする」
「わたしもルゥカに賛成」
人が二人並んで歩けるほどの広さの道を挟んで民家がずらりと並んでいる。
店が軒を連ねる所から少し奥まったここまで喧騒が聞こえてくる。
「これ、どうやって調べるの?」
ルゥカがじっとりとした視線を地図を持っているエクルに投げかける。
「分からない」
実にあっさりとエクルが答える。
「一軒、一軒訊いて回るのかな?ここどこだか知ってますか?って」
「それはちょっと・・・・・・」
ダメだろ、とエクルが止める。
「ここはハズレ。よし、次行こう!」
仕切りなおすようにルゥカがパン、と手を叩いた。
そんなことを何回か繰り返している間に時間は過ぎ、日が暮れてきた。早く宿に戻らないと宿屋の夫婦が食事を用意して待っていてくれる。
「だいたいこの地図が適当すぎ!」
山のある方角と建物らしき四角が三つ並びその下に「道」と記された空間があるだけだ。
他には並んだ四角の真ん中の一つに×印が書かれているのと、魔法とは関係のない模様が描かれていることだけだ。
魔法に関係がないことはダ・リーリのお墨付きだ。ここに描かれているから何か関係があるかと思ったら違うとダ・リーリが言っていた。紛らわしい。
「こんなんで分かるわけないしっ!この人本当に自分の能力を後世に伝える気あったの?」
「ずいぶんと大雑把な性格だったんだろうね」
プツン、とどこかが切れてしまったルゥカにのほほんとティティが同意する。
「ちょっと大袈裟に言って、格好つけてみたかっただけだよ!絶対」
「普段からこんな話し方してたのかな?見栄っ張りな人だったんだねぇ、この人」
ベッドに座り枕にボスボスと何度も手を沈める。ちゃんと加減はしてるけど。
「こんな回りくどいやり方しなくてもどこそこに行けってもっと分かりやすく簡潔に書けばよかったんだよ。ってかわざわざゴードまで来ないであの小屋でよかったんじゃん!?」
「仕様がないよ。見栄っ張りな人だったんだから」
性格、見栄っ張り決定。
言いたい放題だ。初っ端からこれでは先が思いやられる。前途多難にもほどがある。
ひとしきり不平不満を吐露してやっと落ち着いたルゥカにエクルはやれやれと肩をすくめる。
「まだ探し始めたばかりなんだから。明日はどうする?町の中心に行ってみようか?」
「そこって色々な物が売られてるトコだよね!」
目をキラキラさせてティティが身を乗り出す。
「そうだよ。ここに商売に来る商人達が集まる場所だから」
ありとあらゆる物が集まるゴード。
色鮮やかな果物に甘いお菓子。彩りも豊かに染め抜かれたシルクやサテン、シフォンやビロードに至るまで多数の品数があり、それに合わせるための装飾品も各地から集まってくる。王都の次に華やかな町。
これだけ人が集まる所に魔法使いが居をかまえるだろうか?正教会があんなにも近くにあるのに危険ではないだろうか?難しいことは分からないが、とにかく行ってみなければ分かることだ。
町の中心というだけあってすごい賑わいようだ。今回もはぐれないようにしながら人の間をすり抜けるようにして歩く。
「甘~い、甘~いお菓子はいかが?」
「そこの綺麗なお嬢さん、この布で仕立てた服を着れば意中の相手も必ず振り向くよ!」
「愛しい人への贈り物に、頑張った自分へのご褒美に。ピアス、ネックレスにブローチ、指輪も何でも揃ってるよ!」
客を呼ぶ声が四方八方からかかる。
「すごいね。目移りしちゃうよ」
「なに?姉さん。何か言った?」
「わぁー、たくさんある!あ、あれ・・・・・・」
腕の長さほども離れるともう何を言っているのか聞こえない。
「あ、ちょ!ティティ」
「え、どうしたの?」
フラフラとティティが何かに吸い寄せられるように歩いて行ってしまった。
「どこ行くの!」
気づいたルゥカが慌てて後を追う。姉の異変に気づいたエクルもそれを追う。
「いらっしゃい、お嬢さんたち。お連れさんかね?ゆっくり見ていっておくれ」
若い店主が気さくに声をかけてきた。
ティティはとある店の前で真剣に商品を見ている。
赤や青、紫に黒など美しい宝石の数々が店先に並べられている。店主に曖昧に返事を返してティティの肩に手を置き注意を引く。
「ティティ、勝手にどっか行ったらダメでしょ。ほら、行くよ。後でまた来ればいいから」
「うぇ~ん。少しだけー」
また来ます、と店主に笑顔で言い強制的に連行する。
「もぉ、ティティは何をやってるの。宝石なんて高価な物買えるわけないでしょ」
「気になる物でもあったの?」
「もしかしたらあの中にダ・リーリたちの仲間がいるかなと思って」
名残惜しそうに店のほうを見る。
「そんな稀少な物があんなトコで売られてるわけないよ」
「そうだよ。露店にでる前に商人が自分で隠すかお金持ちに高く売ってるって」
そんな珍しい物を彼らが放っておくはずない。
「でも分からない人にはただの宝石にしか見えないんだよ?だったらあっても不思議じゃないよね」
確かにそうだけど。だからって店を一軒一軒見て回るつもりなのだろうか?ただでさえ地図の場所も分からないのに。
「あ、あそこにも宝石商がいる!」
言うがはやいかティティが駆け出す。
「あ、コラッー」
「ちょっ、ティティ!?」
その日は終始ティティがこの調子でルゥカもエクルも疲労困憊していて、ベッドに倒れるように横になるとあっという間に寝入ってしまった。
手紙(?)を遺した過去の魔法使いに三人とも不平不満。言いたい放題。
閲覧ありがとございました。
今回もみんなお疲れで爆睡パターン。
また、次回に。




