十話 <視点・ルゥカ>
今回はやや短めです。
「わたしには見えないよ。どうして教えてくれなかったのー?」
少し涙目になりながら訴える。
『『知ってると思ったんだもの』』
『まさか見えてないとは思わなんだんじゃ』
リーズメルとイヴメルが言葉通り声を揃えて言い、ダ・リーリがそう嘯く。
「あれ、見えてない?」
壁を指してエクルがルゥカに訊く。
「ぜんぜん。壁があるだけだよ」
わずかに目を見開く。
『ルゥカとかいったかの。二人は姉弟じゃったな?』
「うん。そうだけど、それがどうかした?」
『ふむ・・・・・・』
『わずかではあるけど』
『あなたにも能力があるのね』
エクルと二人顔を見合わせる。
『わしら魔宝石の声はの、能力がない者には聞こえんのじゃ』
「え、そうなの?誰にでも聞こえるものじゃないんだ」
「でも、姉さんにはあそこの戸が見えないんだよね?ティティにも」
「うん、見えない」
「それだよ!見えなくても隣の部屋には行けるかな?」
その事を訊きたかったの、とティティが身を乗り出す。
『扉さえ開ければ』
『行けるわよ』
『ただ見えないだけでそこにあることには』
『かわりはないもの』
「ねぇ、何でティティは魔法が使えるのに見えないの?」
「それは僕も思った」
「わたしのは魔法とはちがうんだけど・・・・・・何で?」
ティティにも分からないらしい。
『ティティが見えないのは単にこの時空の者ではないからじゃろ。ルゥカが見えないのは能力が弱いだけじゃな。そしてエクルだけが見えるのはそのどちらの条件も満たしているから』
『この時空の人間であり』
『魔術師だから』
「なるほど」
納得するティティ。
「ティティ、ちょっと気になったんだけど訊いていい?」
「なに?ルゥカ」
小首を傾げてティティが応える。
「わたしのは、魔法じゃない、ってどう見ても魔法にしか見えないんだけど」
「あ、うーん・・・・・・」
『ティティのも一種の魔術じゃ。だがなティティは自分が魔術を使っとるという意識がない』
どう答えたらいいのか悩むティティにダ・リーリが助け舟を出す。
『勘違いしとるようだから先に言っておくが、火を熾したり、閃光を放ったり、それらの魔術はリーズメルとーヴメルによるものじゃ』
「「へ?」」
二人揃って間の抜けた声を出す。
「あ、やっぱり。わたしはね、そういうことできないんだ」
『ティティがしとるのはリーズメルとイヴメルが魔術を使う手助けのようなものじゃ』
「手助け?」
『彼女らの能力は“魔道”じゃ。リーズメルとイヴメルが呪文を唱え魔術を発動させる。それを狙った的に正確に当てるのがティティの役目じゃ』
『わたしたちだけでも』
『魔術は使えるのよ?』
リーズメルとイヴメルが弁解するみたいに言った。
『でも』
『より正確性を求めるのならば』
『より威力を求めるのならば』
『『それが一番最善』』
「わたしができるのは歌うことだけなの」
少し照れたように頭の後ろを掻きながら言う。
「歌う?」
『リーズメルとイヴメルとは違う系統の魔術じゃがな、ティティの歌を甘く見るでないぞ』
「ダ・リーリ、そんなにすごくないよ。でも今日色々あって疲れてるだろう二人に一曲。明日には疲れがとれてるよ」
断言する。
「そんなに上手いの?わぁ、楽しみ」
歓声を上げるルゥカ。ティティはそれに応えるようににっこり笑って歌い始める。
(不思議な歌。聞いたことない言葉だけどなんか心が落ち着く)
ゆったりとした曲調のどこか耳に残る曲だ。
ダ・リーリの言っていた意味が分かる気がする。
ティティは上手い。あまり歌を聴く機会のなかったルゥカでも分かるほどに。
目を閉じてティティの歌に身を委ね、ルゥカの意識は深く深く沈んでゆく。
歌が終わり、ふと気づくとティティの向いではルゥカとエクルが座ったまま静かに寝息をたてて眠っている。
「あらら、眠ちゃった」
その二人を起こさないように横に寝かせる。
『想定内ね』
『予想の内ね』
くすくす、とリーズメルとイヴメルがこちらも遠慮して小さな声で囁き合う。
『ま、当然じゃな』
「分かってたなら先に言ってよ。隣りの部屋、先に開けたらダメかな・・・・・・?」
もぉ、と姿の見えない彼らに頬を膨らませて怒ってみせる。
『それはまた明日にすればよいではありませんか?今日はもうお休みなさい』
『マチルダの言うとおりですわ。いざという時に動けぬ身体では困りますでしょう?』
マチルダとソフィアに窘められて渋々承知する。
「はぁい。おやすみなさーい」
火の番を彼らに任せてティティも眠りについた。
扉の存在に気が付いたのはエクルだけでした。
魔術についての手掛かりは二人が寝てしまったので明日にお預け。
閲覧ありがとうございました。
みんな(エクル達)が寝てしまったのでまた来週。




