6 どこにもない国
真春の話しです。
ずっと昔、平成でも、昭和でもないころ、一人の青年がこの町にやってきました。
青年はとあるお金持ちの三男でしたが、昔のことですから長男でないので家は継げませんでした。
青年は画家になろうと、故郷を離れこの町にやってきました。でも、絵を描く仕事はそれほどあるわ
けでもありません。
町に出てきた青年は生活のために、人形の修理をするようになったのです。幸なことにいつの間
にか、絵を描く仕事よりも人形師の仕事の方が多くなっていきました。
注文主の望む人形を作っていく仕事が増えて行ったのです。時には娘さんの、お孫さんの、奥さん
に似ている人形を頼まれることも多くなっていきました。
そんなある日、青年の元に一人の少女が身の回りのお世話をする、お手伝いさんとしてやってきま
した。お人形のように色白で小柄な少女でした。
青年と少女が恋に落ちるのにさほど時間はかかりませんでした。画家は少女をモデルにして沢山絵
を描きました。
『いつか二人で田舎に家を買って一緒に住もう。それまで頑張って働くから』
お金がたまりようやく家を買おうと思った頃、少女は肺の病気で亡くなってしまいました。
失意の青年は少女に似せた人形を、来る日も来る日も作ろうとし、ようやく一体の人形が完成しました。
朝な夕な青年は、人形に少女の名前を付けて呼びかけました。
『真春ちゃん、君はいつ見ても可愛いね。』
ユキ「真春って、じゃああなたはお人形さんなのね!」
真春「人形だったとも言えます。いつの間にか、人間の真春の心を私は宿すようになったのですから。」
香菜梨「真春さんからはかくれ里の波長を感じますが、それはどこでついたものでしょうね。」
真春「たぶん、ナイチンゲールの歌です。」
みんな「ナイチンゲール?」
青年は仕事も手がつかなくなっていました。そんなある日、青年の家族が青年が悲しみに沈ん
でいるのを心配し、一羽の小鳥を持って来ました。それが当時としてはめずらしいナイチンゲールでした。
ナイチンゲールは夜鳴き鶯とも言われます。
ナイチンゲールの声がやがて、青年の気持ちをかなえ、人形に魂を宿したのです。
少女の姿や心を持ちながら、でも少女ではない存在。普段は小さなお人形、でも青年が呼びかけると人型になるのです。
やがて青年は年を取りこの世を去ります。遺書によって人形は引き出しの中に入れられ、家族に
より住まいは長く閉じられることになりました。その一族の人も皆絶えたのです。
真春「ナイチンゲールは、西洋のエレホンから来た鳥だったのです。」
ユキ「エレホン?」
真春「ユートピアとか、理想郷とか言われています。アジアでは桃源郷、シャングリラと言われている場所です。」
チュー吉「そうか!かくれ里とおなじだ。」
真春「英語でNOWHEREと書きます。それをさかさまから読むと、EREHWON エレホンと読めます。」
ユキ「NOWHERE?どこでもない場所、、、あっ!」




