↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/44

20.歪んだ過保護と、至高のエスコート

「ふん。不潔で脆弱な人間どもめ。我が最愛の奏を見る目だけは確かなようだが、その薄汚い泥の手で奏に触れることは、万死に値すると知れ」


 アスモデウスは、怯える住人たちを一瞥すると、低く冷酷な声で吐き捨てた。いつものオタクとしての狂乱は完全に身を潜め、完全に冷徹な魔王の顔をしている。

 だけど、アスモデウスが次に取った行動は、別の意味で完全に常軌を逸していた。


「さあ、我が至高の光、奏。このような劣悪な環境、一秒たりともお前の聖なる足を地につけさせるわけにはいかん。条例第百二十八条に基づき、俺がお前を完全にエスコートしてやろう」


 アスモデウスは、スラムの住人たちが凝視する真ん前で、大真面目な顔をして奏の前に跪いた。そして、奏の手を恭しく取ると、まるでガラス細工でも扱うかのような手つきで、その細い指先に深く、情熱的なキスを落としたのだ。


「えっ……ちょ、ちょっと、アスモデウス様!? 何をして――」

「案ずるな、奏。お前をこの不浄なる大地の塵一つから守るため、俺の最高級の魔力障壁で常にお前を包み込んでおいてやる。さあ、俺の腕の中へ。お前はただ、俺の後ろで美しく微笑んでいればいい」


 アスモデウスは立ち上がると、奏の腰に強引に手を回し、自分の身体へとぴったりと引き寄せた。アスモデウスの体温と、奏を絶対に離さないという強い意志が伝わってくる。さらには、奏の足元が泥で汚れないようにと、奏が歩く先々の地面に、紫色の禍々しい魔力で作られた「光の絨毯」を即座に展開し始めた。

 それは、魔王城にいた時と同じ、あるいはそれ以上に過激で、過剰なエスコートだった。

 アスモデウスは本気で奏を特別扱いし、神聖な偶像として世界から隔離しようとしている。魔王城の誰もいない寝室なら、奏はその愛に赤面し、甘えることもできたかもしれない。

 だけど、ここは奏の故郷だ。今、奏の目の前には、飢えと恐怖で死にそうになっている、かつての奏の『家族』たちがいるんだ。この状況でのそのあまりにも場違いで、仰々しい振る舞いは、周囲の空気をさらに最悪な方向へと歪めていくことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。