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消えた弟  作者: しおやき
第三章 転

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8月8日 午後の中



「・・・・くら」


 念のためゆっくりドアを開ける。

 変な音がするわけでもないが、してはいけないことをしてるから慎重に事を進めなければいけない。

 そして背中越しにドアを静かに閉めた途端、開けたときよりも暗くなったその視界に何故か寒気がしてしまった。


 夏なのにひんやりする。


 (なんか・・・変な臭いする)


 思ったよりも部屋は暗くて、その原因は窓がないことだと分かるのに少し時間がかかった俺は、電気をつけようにも、何故か足下に物が色々置いてあるからスイッチがある場所を好き勝手探せなくて少し焦ってしまった。

  

 「・・・・母さんは普通に入れたみたいだけど・・・」


 物置に戻って来た時何も言ってなかったから、多分この足下に散乱してるものはきっとお父さんが昨日の夜散らかしたものかもしれない。

 踏み場を探して足を置いたけど、裸足だから明らかに紙を踏んでいる事がわかる。


「何してたんだよ・・・なんかの事件現場みたいだな」


 持っていたヘアピンは落とさないようにポケットにしまい、慣れてきた目で辺りを凝視すると数歩先左手に机が見えた。


  (・・・ここか)


 けいすけが言っていた机は多分このこと。



 目的の机に手をついて、引き出しのほうに回ろうとして移動する。手元が見えなさすぎて、机の上に置かれた電気スタンドに手を滑らせ、手探りでスイッチを探した。


 (・・・ん?なんだこれ・・・・)



 「眩しっ・・・うわぁ!!!」



 机上を照らす光が目元に入り少し目を細めた。

そしてそれと同時に細くなった視界に入り込んできたのは光とは別の何か。


 あまりにも予想していなかったものが突然目の前に現れて、息が止まりそうになった俺は思わず声を上げて後ろに転けてしまった。


  「・・・いっ・・・・」

 

 転けた衝撃で後ろの壁に頭を打ち両手で後頭部を抱えたが、大きな音を出してはいけないことを思い出して背中を丸くして痛みにギリギリで耐える。


 (やばい・・・母さんに・・バレてないよな)


 なんとかして身体を無理矢理起こして、後頭部に回していた手を今度は口に持っていき声が出ないように自身で塞いだ。


  (・・な、なんだよこれ)


  「布?」


 ドス黒い赤色に染まったガーゼのような物が透明な袋に密閉された状態で入っている。

 

  「にしちゃあなんか・・・でこぼこしてるけど・・・」

 

 乾ききらずに袋に入れたのか、その袋いっぱいに赤と黒が混ざったような色が散らばっている。

 そしてその布は小さな何かを内側に巻いているような状態で不自然に膨れ上がっていた。

 

 「・・・・え、なにこれ」

 

 手に取って見ようとしたが、そこだけ光に照らされていたから余計に気味が悪く感じて俺はすぐに手を引っ込めた。部屋に入って感じた変な臭いの正体はまさにこれかもしれない。

 

  触らぬ神に祟りなしだ。


 当初の目的の引き出しに意識を戻して、またかけられていた鍵と微かに届いてくれる光に助けられながらしばらく手を動かし、そして意外にも簡単にその引き出しの鍵は開いてくれた。

 

 (開いたわ・・・・こっちは簡単か)


 よっしゃ、と思いすぐに引き出しを開ける。


 (・・・こいつか)



「・・・・見つけた」



 けいすけが言っていたとおり、確かに新聞の束がある。何枚か新聞を掴み取り出して見出しだけパラパラめくると、探していた文字がそこに書かれていた。


  「連れ去り、誘拐・・・男児・・・・殺害・・・未だに行方不明・・・犯人捕まらず。いつの新聞だ・・・?」


  確認すると、そこには『2012年』と書かれている。

 

  「古くね?・・・6年前?」


 束の新聞を根こそぎ手に取ってみると、時系列で並べられていた。そして中身は全て同じ事件。

一番古いものは、2012年で、その年の記事が一番多い。

 年が経過するに連れて、比例するように新聞の分量も減っていっている。


  「待てよ・・・・これ・・・あのテレビの」


  同一なのか、ただ似ているだけなのか。

 けいすけと同い年のこの少年は未だに行方不明。犯人も捕まってなくて、家族が帰りを待っていることは新聞から読み取れる。

 

  「どうだったかな・・・」


 けいすけが生まれて母親と家に帰ってきた時のことは正直あまり思い出せない。

 でもけいすけが生まれてくる前のお母さんのお腹は確かに少し大きかった気がする。


 だけど弟を出産する数ヶ月前からお腹に何か問題があるとかで、東京の方にある病院に入院していたから、俺はお母さんのお腹が苦しそうになるほど大きくなったとこまで見ていない。

   

  「田舎だから、ちゃんとした病院がなくて・・・とかだったかな」

 

 母子手帳はあった気がする。

 何故か見してもらったけど、よく分からなかったから表紙だけ見てすぐに母親に抱かれたけいすけに目を移したような。


 曖昧な記憶は自分の願望も含まれてるから頼りにならない時のほうが多い。 


  「・・・・まさかな」


 子どもはよく分からずに誰にでも付いていくからお父さんは心配しているだけだとは思っていたけど、それならなんで全部同じ事件のことについて取り上げた記事しかないのか。


  「けいすけ、あのおじさんにスーパーで頭撫でられたって言ってたっけ・・・」


 『大きくなったなって。お前のパパは怖いから、ちゃんと言うこと聞かないと二度とママに会えなくなるぞって』


 けいすけが言っていたことを記憶をたどり思い出そうとして、彼の子ども特有の高めの声が頭に響いた。


 「大きくなった?」


 (・・・・ってことは)


 「けいすけはそのおじさんともっと昔に会ったことがあるのか?」


 持っていた新聞を閉じて、顎に右手を当てた。

 考えられることは思い付く限りで3つ。


 1つは、お母さんとそのおじさんが昔からの知り合いだということ。そして理由はどうであれ、けいすけと実際に会ったことがあるということだ。

 だが母親のその時の様子を聞いた限りでは、良好な関係だったとは言い難い。

 

 2つ目はお父さんの方と知り合いで、その関係からお母さんとも顔見知りということ。


  「・・・・いずれにせよ、問題はいつ、どこで会ったことがあるか・・・だな・・・ん?待てよ」


 もしお父さんとも知り合いだとすると、俺が会ったおじさんはお父さんからすると不審者じゃない。

 

  「まじか・・・え、そういうこと?」


 だから、そんな人はいないと言ったのだろうか。でも、お父さんは俺が言った不審者とは鉢合わせてないから、その人が実際に見知ってる人なのかは分からないはず。


 (佐藤のおっちゃんから何か聞いたのか?)


 「・・・・っていうか、父さんと母さんしか知らない事ってなんだ?」


  考えれば考えるほど次々に頭にわいて出てくる。止まらない思考にさっき頭をぶつけた壁に今度は背中をつけてもたれかかり、明かりが遠のいた手元の新聞を裏返して、別の日の記事について読もうとした。

  

  

  (・・・身代金・・・とかは、)


 あと1つは、前に考えていたことだけど、的中したら最悪だと思いながら目を走らせていたその時、どこからか叫ぶような声が聞こえてきて、一瞬体が固まった。



  『母さん!!こうすけは?どこにいるんだ』


  

  

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