29 引き抜き(前編)
29 引き抜き(前編)
悦子先生は、資金調達のあてができて、超ご機嫌だった。
「ふんふんふん♪」
いつものキーボード打ちも軽やかである。
メインバンクの予想も非常にいい数字が出ているし、資金力も実績も少ないサイオン研究所に対して、有名投資家と大手の医療家電会社が株式を担保にメインバンク経由で投資してくれることになったらしいのだ。
ちなみに、医療家電とは病院用の医療機器ではなく、家庭用の医療機器メーカーで、健康器具や生活補助機器類を製造販売している。
例えば、義手や義足も高度化しており、マラソンや登山用、海川での特殊目的など医療目的から外れるものが多くなり、特に健常者用の義手や義足が普及している。
健常者は当然だし、医療処置を終えた者が使用する場合も保険適用外であり、健康器具扱いになった。
特に使用中に使用データがネットや専用サーバー経由でアップされ、最適化、監視、ガイド、アップデートなどが為される技術は、元々の医療目的から外れて、別の目的に使用されしまって、登山などの趣味とか、スポーツ用品にカテゴライズされるものが多くなってしまった。
最近では時速30キロ以上出せる義足は、無動力でも道交法により自動二輪と同じ扱いにされ、免許も必要であり、病院ではなく教習所に通う必要がある。
他にも、例えばタイピング手袋は、元々は腱鞘炎の治療具だったが、最近ではタイピストの必須アイテムになっている。
ピアノ用手袋『いつでもショパン』などというのもある。
去年は腰痛用のパワーアシストベルトがヒットしたし、その前は血糖値調整リストバンドが大ヒットした。
今年は『ライフキャッチ』という商品名の個人用のデータレコーダーが売れている。
これは車載カメラの個人搭載用みたいなもので、日常の映像や音声を記録してくれるライフレコーダーである。
口約束でもキチンと記録を残せるし、事故や痴漢や暴力犯罪にも対応できる。
身体異常も記録されるから、毒殺などもバレる。
殺人事件は500m以上の遠距離狙撃以外は殆ど発覚するという。
(メーカー調べ)
逆に冤罪にも有効である。
データは個人サーバー以外に腹部の皮膚か皮下脂肪のDNAにも記録され、本人のDNAでデコードできる。
勿論、これを欺く殺人事件は何人かのミステリー作家が発表しているが、現実には起きていない。
当然のことだが、これは子供の安全やイジメにも効果がある。
もっとも、子供のイジメ対策には既に『根性腹巻き』が売れている。
これはイジメを受けやすい子供に巻かせると、イジメの時に腹に力が入り、根性が出しやすく、言いたいことを普段の3倍の大声で言えるという商品である。
勿論、叫び声も出せる。
大抵のイジメは大声で撃退できることが、次々と実証されている。
大声は類人猿では『威嚇』でもあるから、大声を出されると、いじめる側は怯むし、周囲の注意を引くのでやりづらい。
そもそも、いじめる側には根性などないのかもしれない。
ならば、VR世界はED治療機器にカテゴライズされるかもしれない。
いや、童貞治療機器かな?
射精補助器具とか?
(童貞って病気だろうか?)
それとも、究極のギャルゲーか?
やはり、射精補助器具か?
それこそ、縦割り行政じゃ規制できないぞ!
ちなみに射精は犯罪ではない。
犯罪のような気がするだけだ。
イケないこと、とか表現されるからだろうか?
いいこと、とも言うよなあ。
『お嬢さん、僕とイケないことしましょう』
『きゃあ、ナンパよ~!』
『お嬢さん、僕といいことしましょう』
『きゃあ、童貞よ~!』
本当に、男女の性行為の回数は同じなのだろうか?
俺のクズ頭での判断であるが、プライベートなVR空間で着衣のNPCと一緒にいても何も法律的な問題はないはずである。
相手が裸になっても、多分、問題はないだろう。
例えるなら、裸の犬や猫と一緒に過ごしても、法律上何も問題にならないから、問題はない、と思う。
疑似人格に人権を与えない限り、VR空間のNPCは、ペット以下の精々グラビア写真かビデオと同じ扱いである。
スイッチひとつで消してしまえるから、実体のあるロボットやアンドロイドの方が扱いは難しいだろう。
しかも、VR空間はプライベート空間になるから、公共性は全くない。
仮に性行為に及んでも、それは自慰行為に過ぎないのではないだろうか?
わいせつ図画頒布とかも、着衣のNPCには何も問題がない。
公共の場所に勝手に現れたりしないから、全裸でも別に大丈夫だろう。
客観的にはVR空間は見えないのだ。
条件を満たせば見える拡張空間《AR》とは異なるのである。
個人の端末から個人の仮想空間に意識が入らなければ何も認識できないのである。
むしろ問題なのは、例えVR空間であっても女の子が全裸になってくれるかどうかだろう。
意外かもしれないが、こればかりはどこの世界でも相手次第である。
(自分次第かも?)
そもそも、女の子が何のメリットもなく裸を見せてくれる世界など、どこにもないのではないだろうか?
あったら、是非、教えて欲しい。
下半身丸出しの世界でも、女の子は全裸になどなってはくれない。
女中たちだって見せてなんかくれないのだ。
ウメちゃんくらいだろうか?
彼女はちょっと特別な性格をしているから、お願いしづらいけど……
普通は、お金か、権力か、結婚(生活を共にする)か、それともその全部が必要である。
それに、好感度もだ。
イケメン度も必要かも?
ついでに、土下座も。
そう考えると、なんて女の子の裸とは遠くの存在なのだろうか、と思ってしまう。
せめて奥さんぐらいは見せてもらいたいと思うのだけど、これが意外と見せてもらえないものである。
見る、見えると、見せてもらうは次元が異なるのだ。
むしろ、ラブラブの恋人時代の方が、恥じらいながらも見せてもらえるチャンスである。
次のうちの幾つかは実現できるように努力したい。
①裸エプロンで一日。
②ノーブラノーパンセーラー服でのデート。
③海水浴に行き、沖合のゴムボートで下半身丸出し。
④無下着浴衣姿での夏祭り、及び神社の階段途中での開脚。
⑤教室で自分だけに見えるようにめくり上げてもらう。
特に屋外でのプレイは人目があって難易度が高い。
相手が処女なら、ビキニ姿くらいで我慢すべきだろうか?
それだって難しいけどね。
話が逸れた。
人目という意味では、VR空間は鍵のかけられたプライベート空間である。
社交的な公共的な空間に波及するのは、まだまだ大分先になるだろう。
その時にはルールができるかもしれないが、今はまだ心配はない。
ならば、VR空間の使用者本人がベッドで寝ながら射精しても、それは法律違反にはならないと思う。
学校の教室でとかなら別だけど……
(思うに、男って人前で女性とするよりも、人前で自慰行為をする方が恥ずかしい、ような気がする)
VR空間でNPCと会うことが、仮にR18指定にできたとしても、悦子先生の予想の範囲である。
テニスの相手とか、お話し相手とか、囲碁将棋の相手とかに設定すれば、規制を外すことができそうだろう?
その後、その世界で何が起こるかなど誰にも予想できない。
いや、本当は予想できる。
丸わかりである。
でも、規制はできない。
そこまで読み切って、亜人に設定したのだろうか?
人間とは異なると?
特に全身に毛が生えている獣人なら、裸でも問題がないとか?
もし、それがいけないことなら、女の子が枕元に『ぬいぐるみ』や人形を置いとくのもR18指定にしなければならない、だろう?
うーん、逆に考えれば、どうやって規制するのだろう?
警察官が個人のVRに入り込んで、出てきた亜人に向かって『裸になれ』とか『やらせたか』とか尋問するのだろうか?
それとも、ユーザー個人の住居に捜査に入り、寝ている容疑者が夢精するのを見守ってから、逮捕するとか?
「ただ今、容疑者の『射精』を確認しました」
「よし、現行犯逮捕だ。確保しろ」
「はい。第1班から第3班はVR世界に突入開始!」
「1班、突入します!」
「2班、突入します!」
「3班、挿入します!」
「おい!」
ともかく、VR警察を作って、憑依する亜人の警察官でも雇わないと無理だろう。
そんなことは絶対に無理だと俺でもわかる。
VR世界は現実とは繋がらない個人的な世界だからだ。
頭の中での妄想は、どんなことでも自由なのは憲法で保障されているからである。
端から見れば、VRは精々、妄想の補助である。
仮に、VRMMOができて、その中を公共の場と法的に設定できたとして、更にそこに警察官を配置できたとすれば……
いや、勇者たちに狩られてしまうだろう。
王国の騎士団が退治に来るかもしれない。
「き、きみたち! 我々は警察官だぞ」
「こちらは王国騎士団である」
「それがどうした! 公務の邪魔するなら逮捕するぞ!」
「おいおい、ここはゲーム内だぞ。リアルの身分は関係ないだろう?」
「団長! ひょっとしたら魔王側のスパイかもしれませんよ」
「そうかもしれんな。よし、ここは私、王国騎士団団長シャセルーカ・ドドーメ・ヌカズキードが責任を取る。拘束して王宮に連行し、シナサール陛下に裁いてもらおう。抵抗する者はあんなことをしても構わん!」
「あんなことですか?」
「ああ、デスペナくらいは覚悟の上だろうから、それ以上となるとあんなことぐらいしかなかろう」
「おっ、おおぅ!」
「ひぇ~!」
狩られた警察官は恥ずかしいだろうし、法的に傷害罪や殺人罪は適用できない。
(強姦罪も?)
ゲームのルールが適用されるからである。
そもそも、ゲーム自体は風俗営業ではないのだ。
規制するにはプログラム作成か、販売を禁止するしかないと思う。
そんなことは不可能だろう。
エロゲーが使用できるからと言う理由で、パソコンの販売を禁止するようなものだ。
エロ小説が書けるからと、文字を禁止するようなものだ。
ただ、今の時代、写真とか絵などのビジュアル情報ではエロが感じられても、文字情報でエロを感じられる人は減った気がする。
もっとも、現実の女の子よりも二次元の女の子に魅力があると思う人は増えた。
これは、創作というものは、現実の女の子よりも女の子らしくしないと意味がないからだが、一方で現実には現実の『しがらみ』があって、手が届かないとか、手続きが面倒過ぎるからである。
(モテないとか)
とは言え、現実の女の子は現実に気持ちいいものである。
どれくらい気持ちいいかと言えば……
ごほん!
脱線してしまった。
今は悦子先生の話が先である。
「それで、投資家のお孫さんに両脚麻痺の可哀想な男の子がいてね。医療家電会社の特別研究チームと組んで、VR空間を作って実験することにしたのよ。その子が65%とかの憑依率をマークしてくれれば、すぐにクローン治療施設のパッケージを量産してくれることになったわ。この辺の空き家を改造して、VR治療施設が作れるのよ」
65%に拘っているような気がしますが。
「簡単に引き受けて、大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。その男の子は13歳だから、きっとすぐにやりたがるわよ」
いや、13歳はもう少し純情だと思います。
誰もが恋愛至上主義とは言わないけれど、最初は『好きな人』とお互いに好きになってからしたいと思いますよ。
いつから恋愛よりも性行為の方が勝るのかは、その人の恋愛経験及び性体験によるのだと思う。
実年齢かも?
精神年齢かも?
いや、恋した相手の年齢も影響するかもしれない。
男は初恋の人が年を取ってもずっと好きなものである。
(酷い終わり方をしていなければだけど)
それから、例えば、初恋の相手が、
①ロリータ、15歳。
②アリス、7歳。
③ハイジ、8歳。
だとかだと、一生、その年齢の少女が好きである。
ロリータは初恋の相手ではなかったな。
ラ・ベル(美女と野獣)は15歳だったかな?
④ジュリエット、14歳。
⑤人魚姫、15歳。
⑥伊豆の踊子、14歳。
⑦八百屋お七、14歳。
しかし、現代の方が早熟だとかの話はウソである。
今でも女の子は14歳が主流である。(初恋がだよ)
⑧シンデレラ、17歳~18歳。
⑨宮田初江、不明(三島由紀夫先生!)
⑩お幸(三十ふり袖)、30歳前後。
さて、この中で『条例』に引っ掛かったのは誰でしょうか?
(海外の小説って、ヒロインが処女かどうかに拘らないような気がする。それとも、処女であることが当然なのだろうか? お幸は処女だって描写はあったかな?)
「クズ! 聞いてるの?」
「ああ、はいはい」
西園寺悦子(30歳)。
いや、SFとかファンタジーのヒロインの年齢は関係ないのだ。
165歳とか961歳でもいいのである。
むしろ、性格が『強突く張り』とかの方が問題であって……
「クズ~!」
「はい! つづけてくだしゃい」
「何しろVR世界でなら両脚麻痺はなくなるはずだから。ねえ、美加?」
「そうですね。脳神経異常でない限りは、脚は動かせます。あの子は両脚の末梢神経の異常でした」
「そう、神経のクローン研究が進まないと完全には治せないけど、そっちは神経の専門家を雇って任せることにしたわ。VRでならアバターの神経伝達で身体を動かせるから寝たきりでも退屈しないし、痛みも感じないわね。一応は、クズの神経叢ブロック実験の成果よね」
「はいはい、そうですか」
「目標は全身麻痺でも快適なVR生活よ!」
「はいはい」
「ついでに、快適な射精もね」
それは、態々言わなくてもいいですから。
「暫く、資金の心配もいらないし」
悦子先生は端末を嬉しそうに叩いている。
守銭奴ではないのだが、やはり社会的な成功とは、彼女にとっては名誉よりも実利のようだった。
如何に儲けたかが、成功のバロメーターなのである。
「それなら、暫く事業は安泰ですね。安心してメンテナンスを続けましょう」
美加先生が、悦子先生に気づかれないようにウインクすると、スカートの前をちょっぴりとめくった。
悦子先生はいつものポジションで端末を叩いてご機嫌だから、背中を見せる美加先生が何をしているのかはわからない。
わからないが、かなりスリリングな光景である。
俺の下半身は今はブロックされていて反応しなかったが、疑似感覚器官があるかのように(疑似下半身か?)、ズキリと感じた。
今日はレースが少なめの純白のパンツだったが、面積の半分ほどが透けていて、そりゃあ、素敵だった。
俺の生涯で2枚目のパンツである。
両方とも純白だが、俺にとってパンツとはこの2枚以外存在しない。
エステルの子供パンツはノーカンである。
きっと、後でしましょうね、と言う意味なんだろうが、本当にそんなことをしていいのだろうか?
俺はドキドキしながらも、全面的に美加先生の行動と言うか誘惑と言うか、扇情的な、肉感的な、官能的な態度を大歓迎していて、バカップル以上に興奮し、だらしがない顔をしていることだろう。
俺のメンテ中に、その、二人で過ごせる時間が少ないこともあってか、美加先生は少ない時間を積極的に活用し、目一杯楽しませてくれる。
男にとって、とてもいい女だと思わないか?
お陰で、悦子先生もご機嫌だし、美加先生も顔には出さないがご機嫌だし、俺も、うへへへ状態を続けていて、クズ頭が蕩けていた。
「それで、NPCなんだけど、折角の実験なんだから、ひとりだけクズの好感度MAXから引き抜くことにしたわ」
「へえ、そうなんですか? いいですよ」
俺は美加先生の太股に夢中で、いい加減に聞いていた。
「処女でMAXなのは、えーと5人かしら?」
悦子先生は端末を叩き始め、リストを閲覧しているようだった。
へえ、処女でMAXなんかいるんだっけ?
「まずは、リーメと妹たちだわ」
「だめですよ。リーメは金属学に必要だし、メアとミアは海上防衛の要ですから。艦長なんですよ。他の者にしてください」
「それじゃ、女中のモモね。13歳で1型だから、汎用性も高そうだし」
モモ? モモちゃん?
「だ、だめです! モモは、その、俺にとって癒やし系で、ゴニョゴニョなんですから……」
俺が少し慌てて言うと、相変わらず悦子先生に背中を向けて作業している振りをしている美加先生が、顔を近づけてきた。
まあ、今度はモモに手を出すの?
いいえ、違います。
そう、こっちの方がいいでしょう?(太股)
はい。最高です。
声を出さないでも、唇の動きと表情で会話が成り立った。
骨抜き状態というか、頭の中が桃色というのか、そのせいで、次の悦子先生の台詞にOKを出してしまった。
「残りはキショウブね。2型だけど仕方がないわ」
正確にはOKしたわけではないが、断る理由がないし、美加先生の太股が色っぽいので、そのままになってしまった。
2型とか、引き抜いた後にどうなるかを質問し忘れた。
そもそも、キショウブがMAXなどとは知らなかったし、考えたこともなかった。
後で、どれほど悔やむことになるか、その時の俺はピンクの脳内物質を出しまくっていて、何も気づかなかった。
「1年が30日では、愛を育むのには時間が足りないようね。別邸なんかに回るのにも支障を来すわ」
翌日のメンテナンスで、悦子先生がそんなことを言い出した。
悦子先生はクーリャに憑依できるからか、別邸を重視しているようだった。
それに、自分が開発したアバターに対しては、焼き餅すら起こさないようである。
流石はAIに人間の心を教えようと考えた人と呼ぶべきなのだろうか?
しかし、アバターやAIはともかく、人間の心の方は、そう簡単に割り切れないと思うのだけれど、やはり考え方が違うのだろうか?
「とは言え、世界史的なことを起こす、つまり世界征服には、今の12倍とは言わないけど、ある程度の余裕は必要だと思うわ」
やはり、そっちも諦めていないのね。
ゲームのクリア条件である。
あんまり意味ないのかもしれないが、クズがやる気を起こさないと困るようだった。
「今後は、クズの予想通り戦争が起きるわ。命がけよ。始めは王族貴族、それから領民を巻き込むわね」
「人を殺すのは嫌だなあ」
「そんなことでは、相手は屈しないわ。亜人を受け入れられない獣人は多くいるわよ。獣人同士ですら仲の悪い国はいくらでもあるのだし。それに相手を赦しても、相手国の亜人が救われないわね。クズが殺されて、亜人の女たちが復讐に目覚めるというのが最高のシナリオなんだけど、いっぺん死んでみる?」
「いいえ、勘弁してください」
軍隊は、くノ一部隊が世界最強である。
夜戦が専門だが、夜戦ができる軍隊などどこにもいないのである。
多分、凶国の騎馬民族相手でも、夜に相手が乗っていない馬を奔走させて、右往左往始める男たちをバチで殴りつけて終わってしまいそうである。
察知されずに接近するのが難しいだろうって?
それが一番得意なのだから困りものである。
男たちが陽動していれば更に効果があるだろう。
女たちが夜中に攻めてくるなんて、予想するやつは変なやつだろうと思う。
男たちは馬防柵の中で、戦争するふりをしていれば、大体終わってしまうのだ。
海軍は越国の装甲艦に敵う相手はいないだろう。
火矢が効かない時点で、どうしようもない。
海賊みたいに乗り移って戦う以外にないが、その前に装甲艦の体当たりで全部沈んでしまうだろう。
「そう言えば、クズは蒸気砲なんてものを開発してたわねえ」
「ええ、装甲艦につけました」
正確には蒸気滑空砲であり、普通の徹甲弾で試験したら弁財船が轟沈というか粉々になってしまったので、慌てて芥子玉に切り替えたのだった。
新型の鋼鉄艦には、カタパルト式の蒸気銛を三連装3門、設置する予定である。
相手の船を拿捕するのが目的である。
捕鯨と同じような感覚である。
ボイラーの維持管理が一番難しい。
「時間感覚を半分上げて、時流を半分下げるから、蒸気の威力は三分の一になると思っていて」
「ええっ、それってどういう意味でしょうか?」
悦子先生は端末から顔を上げて、こちらを見た。
大分、お祝いをしたのか、目が赤いぞ。
そう言えば、昨夜の美加先生は酔っ払って、凄く可愛かったな。
ごほん、それどころではないな。
「VR内での脳活動を1・5倍に上げるのよ。それで、VR内の時間を12倍から6倍に落とすの。合わせると1年は3ヶ月に延長するはずよ」
それから、暫くレクチャーされたが、1年が90日になること以外は、さっぱり理解できなかった。
管理AIも、世界が破綻しないか見て回るので、忙しくしているから現れないだろうと言われた。
クズ頭は、慣れるまで混乱するだろうとも言われた。
言われるまでもなく、最初から混乱していた。
その日は、美加先生は疲れた(満足した?)とかで、お休みだった。
夕方に、クーリャが現れて、俺はクーリャの寝室に連れて行かれた。
クーリャは長衣を床に落とすと、モルと同じようにビキニ姿であり、そりゃ驚いた。
下半身には真っ赤に燃え上がるクズの紋章が輝いていた。
「ど、どうなのよ?」
「素晴らしいと思います」
「なら、態度で証明して」
「だけど、さあ……」
何となくだが、インターバルが短いような気がした。
昨夜、クーリャと初めて愛し合ってから、今まで何をしていたのだろう?
大事なことがあったような気がするが、、思い出せなかった。
また、神様に何かを弄くられたような気がする。
しかし、クズの俺はよく考えずに、100%クーリャを堪能し尽くした。
100%? 何故だろう?
表だけでなく、裏返してビキニのお尻側もちゃんと堪能した。
足首の細い女は良いと言うのだが、あれは嘘だった。
もの凄く良いのだ!
終わってから、出したらバレるのだということを思い出して冷や汗をかいた。
誰にバレるの?
姑息ではあったが、暫く、2段突きは禁止にした。
2段突き?
「ちゃんと私の女中たちを可愛がるまで、よそに行ったら駄目よ」
「ええっ、クーリャは嫌じゃないの?」
「何が嫌なのよ。女中たちを気に入れば、あなたは長くここにいてくれるでしょう?」
うーん、焼き餅とかは焼かないのだろうか?
「勿論、毎晩、最初は私だからね」
「クーリャだけってのは?」
そこへ下働きの少女たちが来て、クーリャの指示に従い、ぬるま湯で絞った手拭いで身体を拭い始めた。
クーリャは背中は任せたが、大事な部分は自分で拭っている。
「駄目よ。そんなの他の女たちが可哀想でしょ。それに私だけだと、飽きられたら来てもらえなくなるじゃない」
「そ、そんなことはないよ」
クーリャは何でもないかのように会話を続けているが、俺は緊張した。
俺の方は3人もが取り付いて、身体を拭っているのだ。
特に股間を念入りに拭われてしまった。
みんな、始めて見ますという顔をしている。
サクラより幼いと思うのだ。
ピクピク動くと、ピクピク動いている。
俺は、何となく慣れてきたのが悲しかった。
嬉しいよりはマシなのだろうが。
クーリャは拭われた俺を、その、念入りに匂いを嗅いで、下働きたちに手を振った。
合格だか、もういいよだかの合図に見えた。
少女たちは下がっていき、次はお茶を持ってきた。
クーリャとお茶を飲みながら、そのまま会話が続いていく。
下働きの少女たちは、顔を赤くしながらも真剣に給仕係を続けた。
夕食が早いから、夜が長い。
クーリャが最初というのも理解できるくらい、夜がたっぷりとある。
なんか、王侯貴族って、俺みたいな小心者には向いていないのではないだろうか?
当たり前か?
「いいのよ、別邸様を選んだのは私だし、その方が気楽なの。ユキナみたいに政治向きの仕事はできないし、モルみたいに軍隊を指揮することもできない。サリみたいに後宮の管理もやりたくないのよ」
「それで、機織りなのか?」
「これが趣味なのよ。見て、新しい布なの」
渡されたのは『縮緬』だった。
絹織物なので、しわが寄っていても手触りがいい。
高級な和服を売ってるところでしか見たことがない。
呉服屋さんでいいのだろうか?
そして、越後の縮緬でいいのだろうか?
越縮だろうか。
フルシアンテか、ストラトモデルか?
ナイル・ロジャースもストラトだったような気がする。
ストラトって何?
ランチアか何か?
「凄いなこれ。高級な縮緬だよ」
「生地に伸縮性を持たせられないかと研究して、改良を重ねて出来上がったのよ。布の織り方よりも糸の撚り方に工夫が必要だったわ」
待てよ。
縮緬というのはクレープ織りのことだ。
ならば、工夫すればベルベットもできるのではないだろうか?
更には?
「クーリャ、君は天才だ。これを織れるのは、もう女中にもいるのか?」
「まあ、一通り教えたから、全員織れると思うわ」
「よし、明日は全員集めて研究会を開くぞ」
「どうしたのよ、急に」
「君はこれがどれだけ凄いことかわかってない。越は今後千年以上、技術大国だろう。クーリャのお陰なんだよ。ある意味、ユキナやモルより凄いことだよ」
「そ、そうかしら?」
「そうだ。凄い、凄いぞ」
「じゃあ、もう一度、キスしてくれる?」
「あぁ、クーリャ」
俺のキスより縮緬や別珍の方が遙かに価値があるというのに、そんなんでいいのだろうか?
俺はクーリャの甘い口を何度も吸い、もう一回したくなる前に止めた。
正確には、したくなってから止めた。
クーリャを包み込むように抱きしめて眠った。
別邸って、結構いいかも? などと、不埒なことを考えていた。
部屋には、夜勤の下働きの少女たちが俯いて並んでいたが、少しだけ慣れてしまった。
朝はクーリャのキスで起こされたが、トイレだけは下働きをお断りした。
苦労して、和式トイレで下向きにして済ますと、入り口から少女の手が手拭いを突き出していた。
み、見てたのね! えっち~!
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