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第6話

僕は画面を見つめながら考えた。




「そうか……」




 思わず呟く。




 彼女たちは温泉には来た。




 でも帰っていない。




 帰るところを書いていないからだ。




 その瞬間、頭の中で何かが繋がった。




「そうか!」




 僕は思わず立ち上がった。




 横浜へ行かせる。




 東京へ行かせる。




 そして飛行機に乗せる。




 イワン民主主義国へ帰らせる。




 そこまで書けばいいんだ。




 夢の中で彼女たちが住んでいた国。




 現実には存在しない。




 だが、そんなことはもうどうでもいい。




 熱海だって現実になった。




 だったら帰国だって同じはずだ。




 僕が書けば、その通りになる。




「やった……」




 思わず拳を握った。




「やったぞ!」




 これで彼女たちを帰らせられる。




 ようやく解決方法が見つかった。




 僕は急いでキーボードに向かった。




 静かな部屋にはスザンヌとマリアの寝息だけが響いている。




 その音を聞きながら、僕は彼女たちの物語の続きを書き始めた。


待て。




 待て待て待て待て。




 僕はキーボードの上で手を止めた。




 せっかく帰らせる方法を思い付いたというのに、別の考えが頭をよぎったのだ。




 このまま横浜へ行って、東京へ行って、そのままイワン民主主義国へ帰らせる。




 確かにそれで問題は解決する。




 スザンヌもマリアも元の世界へ帰る。




 僕の日常も戻ってくる。




 万事解決だ。




 だが――。




「勿体なくないか?」




 思わず声に出していた。




 さっきまで早く帰らせたいと思っていたはずなのに、僕の心は別の方向へ走り始めていた。




 せっかくあんなボーイッシュな金髪美女二人をこのまま帰してしまうのは、あまりにも惜しい。




 僕は腕を組んだ。




 横浜。




 僕の実家。




 親父。




 お袋。




 弟。




 妹。




 その顔が頭に浮かぶ。




 そして、その家の玄関にスザンヌとマリアが立っている光景を想像した。




 親父は絶対に固まる。




 お袋は言葉を失う。




 弟は僕を見て何かの冗談だと思うだろう。




 妹にいたっては失神するかもしれない。




 想像しただけで笑いが込み上げてきた。




「はははっ……」




 面白い。




 実に面白い。




 普通の人間ならここで思うはずだ。




 絶対に面倒なことになる。




 絶対に説明できない。




 絶対に騒ぎになる。




 だが、僕には最大の武器がある。




 それは――。




 僕の小説の通りになるということだ。




 熱海がそうだった。




 夢にはなかった熱海という設定を僕が書いた。




 そして現実になった。




 だったら、この先も同じだ。




 僕が書けばいい。




 僕の思い通りに。




 僕は再びキーボードに向かった。

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