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第5話

もし今後も登場人物が現実に出てくるならたまらない。




 その時、僕は心に決めた。




 これからはちゃんと幸せな終わり方だけを書こう。




 中途半端な終わり方はやめよう。




 下手をすると、最後にお化けになって出てくるかもしれない。




 そんな馬鹿げたことを本気で考えていた。




 気が付くと瞼が重くなっていた。




 ベッドを見る。




 スザンヌもマリアも、すでに眠っていた。




 規則正しい寝息だけが静かな部屋に響いている。




 僕は小さくため息をついた。




「明日……どうしよう」




 誰に聞かせるでもなく呟く。




 答える者はいなかった。




 熱海の夜は静かに更けていった。




うとうととしていると、不意に声が聞こえた。




「明日は大阪よ」




 その言葉に僕は目を開いた。




「あっ」




 僕は勢いよく起き上がった。




 そうだ。




 夢の中では確か次は大阪だった。




 僕は急いでノートパソコンを取り出した。




 暗い部屋の中で画面を開き、『でたらめな本の正しい読み方』のデータを呼び出す。




 スザンヌたちが登場する章を読み返した。




 やっぱりだ。




 大阪。




 京都。




 そして温泉。




 横浜。




 東京。




 その順番になっている。




 だが、夢の中では違った。




 温泉が先だった。




 その後に大阪。




 京都。




 横浜。




 東京。




 確かそんな流れだったはずだ。




 僕は画面を見つめた。




 なぜ順番を変えたんだっけ。




 しばらく考えて思い出した。




「そうか……」




 夢の中では温泉が出てきた。




 だが、どこの温泉なのかまでは分からなかった。




 温泉の後に大阪と京都へ行くなら、温泉は関西の方にあるはずだ。




 でも僕は関西の温泉なんて知らない。






 だから小説にするとき順番を変えたのだ。




 先に大阪と京都へ行かせる。




 その後で温泉へ行かせる。




 そうすれば東へ戻る流れになる。




 すると自然と熱海や箱根が候補に入る。




 そして僕は――。




「あっ」




 思わず声が漏れた。




 画面にははっきりと書かれている。




 熱海温泉。




 やっぱりだ。




 僕は熱海にしていた。




 別に深い理由なんてない。




 名前を知っていた。




 ただそれだけだった。




「まじか……」




 僕は椅子にもたれかかった。




 夢では場所なんて出てこなかった。




 熱海は僕が勝手に決めた場所だ。




 なのに僕は今、その熱海にいる。




 そしてスザンヌとマリアに出会った。




 つまり現実になったのは夢だけじゃない。




 僕が小説を書くときに付け足した部分まで現実になっている。




「はぁー……」




 大きなため息が漏れた。




 訳が分からない。




 だが、目の前で夢の登場人物が寝ている以上、否定のしようもなかった。




 僕はさらに続きを読んだ。




 温泉の後は横浜。




 そして東京に行く予定だ。




 そこまではちゃんと書いてある。




 だが、その先がない。




 温泉旅行をプレゼントして。




 楽しんで。




 良かったね。




 そんな感じで終わらせていた。




 小説としてはそれで十分だった。




 むしろ綺麗な終わり方だと思っていた。




 だが現実になった今は違う。

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