表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第2話「訪れた最悪と奇跡のような救命」

 結局、内心は苛立ちで溢れていた。こればかりは解消する術がない。母さんが他と関係を作っている事実は許せなかったんだ。


 とにかく珠美と並んで登校する。珠美は機嫌が悪そうな俺を見て慰めてくれた。


「本当にごめん。うちのお父さんが悪いのよ。だから、許してくれないかしら? ほら、代わりに手でも繋ぐからね?」

「はっ⁉︎」


 いきなり珠美は手を握って来た。珠美がしっかりと握りしめて離そうとしない。


「た、珠美っ⁉︎ 急すぎるだろ⁉︎」

「良いじゃないのよ。私は貴方が良いんだからね!」

「お前……?」


 珠美から笑顔を向けられ少し元気が出たんだ。何より純粋すぎて澄み切っていた笑顔に釘付けだった。これは敵わないと思わされてしまう。


 校門の前まで手を繋いでいた。ここまで繋ぎ続けるとは思ってもみない事態である。もはや、顔が熱くなってしまうほどだった。


「それじゃあ今は別れるわね! お昼休みで合流しましょう!」

「あ、あぁ……」

「うーん? 元気ないんだけど……。最後ぐらい良いかしら?」


 すると、珠美が隙だらけだった俺に頬キスして来た。軽く頬に唇が触れ、遅れて認識する。


「な、なぁぁぁあああ⁉︎」


 珠美と顔を合わせる。どこか満足げな表情で返して来ていた。喜んでいたことは分かりきっているみたいだ。またもや、珠美に出し抜かれてしまった。でも、気分は悪くない。


「またね! 授業は頑張りなさい!」

「あっ……」


 それだけ言ってから珠美は立ち去っていく。それを見送っている間も呆然と圧倒されてしまっていた。


 これでは珠美の思い通りだ。こんなペースだと気が可笑しくなりそうだった。


 けど、俺は心から喜んでいたのである。珠美からしてくれた励ましの行為はグッと来ていた。それぐらい勇敢だと、心なしか思えてしまう。


「……はっ! 早く行かないと!」


 ハッとした時には、時間が迫っている。だから、取り敢えず教室に向かった。


 そして気つけば放課後を迎えた時間帯。実は珠美が急に依頼を抱えてしまって二人で帰宅は難しかった。


 珠美としては当然の事態である。それぐらい異術師は忙しい生き物なんだ。それを弁えているからこそ、俺は容易く許せてしまう。


 それに無力が口を出して良いほど、我がままを利かせるつもりはなかった。人命を救う仕事を担う上で、最優先するべきことは踏まえておかないとダメなんだ。


 それを俺は理解していた。けど、本当はどこか寂しかったかも知れない。いつまでも一緒に過ごしたい気持ちは少なからずあったからだ。


(何で俺だけが無力なんだろう? 全くくだらない話だよ)


 実際は内心で留めていた感情が爆発しそうだった。暴れ倒して楽になりたいとすら思ってしまう時がある。けど、関係ない人を傷つけて得られるものに何の価値もなかった。それは痛みよりも理解している。


 たった一人、帰路を歩み辿っていた。この時間帯はいつに増して異様さを感じる。


 きっと、珠美と帰れなかった故に生じた感情なんだろうと思い込んでいた。


 実際に遭遇する最悪を予期査定なかったんだ。


「––––ん?」


 目の前に赤い服を来た少女が現れた。少女が着ている服はボロ臭くて貧相である。さらに、前髪で顔が隠れてしまっていた。、


(って、完全に怨霊じゃねぇか⁉︎)


 危機を感じ取った。全身が絶命を予感している。


 すぐ振り返って逃げようとした。次の瞬間、辺り一帯の景色が一変する。


「こ、これは『怪奇領域』じゃねぇか⁉︎ この怨霊は上級クラス⁉︎」


 それだけじゃない。もはや、ギョロリと複数の目玉が空間に現れていた。これは俺が回避できる許容範囲を遥か上回っている。


「くそぉぉぉおおお⁉︎」


 俺は再び振り返った。さっきの少女がニヤけているみたいだ。


『ねぇ、遊ぼう?』


 突如、少女の背後から忍び出て来た怪奇。つまり、こいつは怪奇そのものだった。


(や、ヤベェ⁉︎ 逃げられない⁉︎)


 すると、背後に感じ取れる異様な気配。どうやら挟み込まれてしまったみたいだ。


(万事休すか……!)


 目前の少女が背後で蠢く怪奇と会話しているような気がした。多分、少女と怪奇はコミュニケーションが取れてしまうんだろう。


(ぐぅっ⁉︎ もう、殺すなら早くしろよ!)


 あまりにも理不尽すぎる展開。脳内がバチバチと弾けているみたいな感覚が襲った。


「い、痛い⁉︎ 頭がぁ……⁉︎」


 頭を抱え込んで蹲る。殺されてしまう運命なら早く終わらせて欲しかった。それでも少女は未だにトドメを刺そうとしない。


 そんな絶望的瞬間に事態は急変を遂げた。


 脳内に浮かび上がる情景。そこに立ち尽くす一人の少女が呼びかけて来た。


『やっと会えたね? もう、大丈夫だから安心して?』


 確かな言葉だった。その一言が異様に謎めいていたんだ。


 そして少女は姿を変える。


 怨霊のような姿から神々しい光を解き放つ天霊を催した存在感に変わった。


 輝かしい少女が手を伸ばす。そっと差し伸べてくれた手が安らぎを与えた。


『ほら、掴み取ってみな? 貴方なら使いこなせるはず。これは大切な人が与えてくれたチャンスなんだよ?』


 意味が分からなかった。けど、頭に最悪が浮かんで来る。


「た、珠美ぃ⁉︎」


 大切と言えば、すぐ身近に存在していた。密かに愛してしまっていた幼馴染みの存在が消えゆくような予感がする。


「ま、待ってくれぇ!」


 少女は自ら俺の手を取った。その瞬間、全身に力が流れ込んで来る。


「う、嘘だろぉぉぉおおお⁉︎」


 景色が以前に戻った。しかし、実際に戻っていたのは『怪奇領域』の中である。


「は、はぁ⁉︎ 結局じゃんか⁉︎」


 すると、少女と一緒にいた怪奇が大鎌を取り出す。


 巨大な刃を誇る大鎌が振り上げれた。それを俺に振り下ろして来る。


「––––えっ⁉︎」


 振り下ろされた大鎌は俺を襲った。しかし、斬られる寸前で大鎌が弾かれる。


 もの凄い音が響いた。バチンッと大鎌を弾いた時に気づく。


「もしかして使えるかも知れない!」


 すぐさま、力を駆使しようと試みる。掌に集中したエネルギーが光る塊を生み出し始めた。


「いける! これなら倒せる!」


 聖なる光が塊として収束する。それを一気に解き放った。


「これでも食らえ!」


 解き放たれた光弾は少女に迫っていく。だが、見込みは甘かった。


『ふふふっ!』


 ほんの一瞬だった。解き放った光弾は容易く弾かれてしまう。


 少女は不気味に微笑んでいた。そこから再び大鎌が振るわれる。


 今度は弾いてくれそうにもなかった。


「な、何なんだよぉぉぉおおお⁉︎」


 刃が頭上に振り下ろされる。けど、二度目の奇跡が救ってくれた。


『そうはさせない!』


 急に現れた同じ年頃の女性。彼女は振り下ろされた大鎌を強く弾き飛ばした。


 大鎌は凄まじい威力で弾かれて粉々になる。さらに、彼女から凄いエネルギーが漲って来るのが分かった。


「貴方は死なせないわ!」


 よく見たら妖狐にも似た人物。彼女が聖なる光を収束して槍を生成した。


「これで終わりよ!」


 光から生成された槍が投げられる。槍は一直線に飛んでいった。それは少女を容赦なく貫通する。


『ギャァァァアアア⁉︎』


 見事に怨霊は消えてなくなった。これで命は救われたらしい。


「ねぇ、大丈夫?」

「お、お前は……⁉︎」

「ふふっ。驚いたでしょ? これが本当の私よ」


 光で満ち溢れた半狐。彼女は微笑みながら告げて来た。


「貴方も導かれたみたいね? きっと、今後は同じ土俵に立てるわ」


 謎めいた一言を告げた女性から真っ直ぐメッセージが伝わって来る。


 これが俺を一変させる事態だったんだ。この瞬間から大きく人生が変わる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ