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これ何て死にゲー?  作者: このは
8/12

7話でも死にゲー

おなか痛い。トイレ行こう。

「はーい、リスポーン」


セフラの「はい、缶コーヒー。」くらいの軽い感じの台詞と共に僕は生き返った。目の前にはバラバラになった骸骨が散らばっていた。ピクリとも動かない。活動を停止しているようだ


「か、勝った・・・のか?」


「まー、正確には相討ちかー、目的を達成出来ていないので敗北ですがー、敵を1体倒したことには変わりないのでーレベルアップでーす。チャララララチャッチャッチャー。」


呑気にレベルアップのファンファーレを奏でるセフラをよそに、僕自身の身体は恐怖なのか、安堵なのか、緊張なのかはわからないが、震えが止まらないでいる。何度も深呼吸をしながらステータス画面・ステータス画面と念じると例のヴンという音と共に目の前にステータス画面が現れた。


レベル4

コノハ 38歳 男(元キモデブ不潔野郎)

体力  :8

精神力 :8

力   :8

防御力 :8

すばやさ:8

賢さ  :8

魔力  :8

スキル:ダイエット(死ぬごとに1ミリグラムずつ体重が落ちる)

服LV1(生き返るとき服を着た状態になる)

肉体適正(肉体的に最も活性化した状態になる)


ステータス オール8?まぁ、上がってはいるが貧弱なことに変わりはなさそうだ。

あれ??元キモデブ不潔野郎??「元」?その意味がわからずにいると


「コノハは、キモデブ前の顔はそんなに悪くないのですね。残念です。残念です」


とセフラが残念をわざわざ二回言った。大事なことなのそれ?

ふと自分の身体を見ると、服から腹が出ていない。手足もなんだか動かしやすい気がする。体が軽く感じる。スーパー○イヤ人にでもなったのだろうか?


ステータス画面が切り替わる。

自分の顔が映っていた。

学生の時の顔だ。高校生くらいか?まあ、元々童顔だったせいもあって幾らでも若く見られていた時代の時の顔だ。・・・・・・ということは若返ったってこと?


「任務を果たしやすい様に変化させたという方が正しいでしょー。潜在意識でもっと若かったら・・・とか、力があったらとか思ったのではないですか?」


よくわからないが、そういうことなのかも知れない。碇を持ち上げられなくて死んじゃうなんて、それこそ無駄死にだと思ったし・・・。


「しかし、コノハ。オール8のステータスでは幼稚園児にも勝てないくらいの力です。まだまだ楽しめそーですね?」


楽しむって!?なにを!?

セフラは嬉しそうだ。それに、少し口調が変わっている気がする。気のせいだろうか?


とにかく、その後も、さまよい歩くものを探して、骸骨退治に精を出した。

頭突きをかまして自分の頭蓋骨の方が粉砕し死んでしまったり、腐った床板を踏み抜いて船底のトラップに串刺しにされて死んでしまったり、海に落ちて魚たちの栄養として貢献したり、所詮脆弱さはそのままだったが、少しずつ戦うということにも慣れてきつつあった。



そう思って油断したわけじゃない。警戒も怠らなかったつもりだ。だけど、事態は唐突に変化した。

半壊した部屋だったから月明かりで敵がいればすぐわかる筈だった。

なのにそいつは、物陰から一瞬で跳びかかってきて、僕の左腕ごとごっそり持って行ってしまった。

レベルがもう少し低かったら多分この一撃で僕は死んでいたのだろう。そう確信できるほどの激しい一撃だった。

最後に確認した自分のレベルは7だった。多分、今で10位の筈だ。スキルはこれといって獲得していない。「靴装備」位のもので、今は便所スリッパを履いている。


「フシャアアアアアアアア!!!」


陰から弾丸のように飛び出てきた何かが、猫の威嚇の様な声をあげる。

いや、「猫の様な」ではない、視認できた限り「猫」だ。月明かりのせいだろうか、毛並みは綺麗な銀色で、仄かに紫がかったように見える。両手ですっぽり抱えられるくらいの大きさの仔猫が威嚇するように身を震わせていた。僕の血液を顔いっぱいに浴び、口元には貧相な僕の腕がぶら下がっている。正直こんな小さな猫に腕をもぎ取る力などあるのだろうか?奪われた腕を確認しても疑ってしまうくらいだ。

肩口からの出血が酷い。みるみるうちに力の源が流れ出ていってしまう。急なことで痛覚が追いついてきていないが、だんだん激痛に変わっていくのは目に見えている。


僕は、何人目かの骸骨から拝借したナイフを取り出し右手で構えると、威嚇する猫に向かって精一杯叫んだ。


「にゃあああああああ!!」


「キシャアアアア!!」


「猫語ですかー?理解に苦しみます。」

セフラが冷たく言い放つ。

僕だってちょっと間抜けな事したなって思ったけど、猫相手に何て言ったらいいかなんてわかりようもないし、知ってるやつがいるんなら是非ともご教授頂きたいくらいだ。勿論、今じゃなくて、暇な時に珈琲でも飲みながらね。


再び小さな銀色の弾が襲い掛かってくる。が、初速から目で追い切れず速さじゃない。気が付けばバランスが崩れて転倒してしまった。一瞬にして左足首から先が無くなっていたのだ。


「くううううううう!!!」


腕のない肩から床にへばりついた僕に痛みのプレゼントが襲ってくる。

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!


それでも、敵の位置に目を凝らすとガシャン!と音がして猫の傍にあった樽が崩れ倒れた。ぬぅっと壊れた樽の陰から骸骨が這い出て立ち上がる。

ここに来て増援とは恐れ入る。1対1でも絶望的なのに2対1なんてどん詰まりも良い所ではないか。半ば諦観に達していたが、その時妙なことが起こった。


「キシャア!!」


と叫びながら猫が飛びかかった先は、僕ではなく骸骨だったのだ。

縄張り意識だろうか?猫にとっては視界に入る全てのものが敵なのか、それとも骸骨がお気に召さなかったのか、それすらも聞く術がない。

銀の一閃の様に見えた猫の攻撃は骸骨の頭部を撃ち抜き、骸骨の首から下が崩れるように床に伏した。

続けて着地と同時に僕に向けて仔猫アタックが迫る。


「??」


不思議に思った。

猫の動きが少しだが遅いのだ。これくらいなら突っ伏した体を寝返りのように回せば避けられる。痛みはあるが背に腹は変えられない。右腕で踏ん張り突き出す形で左側に寝返り回避した。

仰向けになった僕の頭のすぐ横をヒュン!と風切り音がして風圧が通り過ぎる。

死にかけた時に周りがスローモーションに見えるとかいうなんだっけ?タキサイキア現象とかいったか、あれだろうか?意識もしっかりあるし、別にスローモーションて程でもないってことはそうじゃないのだろうか?左肩と足首が痛んで、気付けになっているのだろうか?正直言って失血は酷いのに意識がはっきりするなんて拷問もいいところだ。

では、猫ちゃんの方がバテ始めているのだろうか?それとも、別の狙いがあるのか?どちらにせよ敵の減速の原因はわからなかった。


そして、次の攻撃も反応できる程度の速度だった。

宙に飛び上がった猫が重力に任せて僕の頭に落下しようとしてくる。普通の仔猫ボディプレスなら何ということはないのだろうが、生憎そこまで楽観視してはいない。

再度、左寝返り回転でプレスを避ける。


ドン!!


と音がして、すぐ横に猫大の穴があいた。

やはりあんなの食らったらとんでもない事になるところだったようだ。


「キシャアアアアアアアアアアアア!!!!」


穴の向こうから威嚇の声が聞こえる。


続いて、ドン!と音がしたのは僕の真下。衝撃で体が宙に浮く。止まずに僕の体めがけて猫弾丸が縦横無尽に飛び回る。空中で態勢を変えられるほど器用でもなくそんな運動神経もない僕は、何度も何度も猫弾丸を浴びて八つ裂きにされ頭部に着弾すると共に意識を失った。


あーすっきりした。

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