5話でも死にゲー
読んでもらえる日がいつか来るのかな?
「ここはー、勇者コノハにとってはー元居た世界とは異なりまーす。」
瞬間移動のように転移した先で、セフラが急に話し始めた。
全裸のデブおじさんと光り輝く掌サイズの妖精。さながらピータ○パンか?いや、あれはオヤジじゃなくて子供だったか・・・。
「異世界ってこと?」
僕が訊くと、そう思って構いませーん。とセフラは答えた。
今回転移したところは、青白い月の光に照らされたぼろぼろに朽ちた船の甲板の上だった。
座礁したのだろうか。大きな岩が目の前にあり、舳先からぶつかったように船体の前面が圧し潰されている。
「この場所一帯はー、船の墓場と呼ばれていまーす」
確かに、もう何度も見てきたが周囲にはおびただしい量のぼろ船が大小問わずあちこちに漂っている。
「ここで、僕は何をしたらいいの?」
問うた僕に、セフラは一瞬だけ心底気持ちの悪そうな顔をして
「とりあえずー、服ぐらい着たらどーなんですかー?」
と冷たく言い放った。
いつからか服が無くなったことを伝えると、1回目は持参品。2回目は支給品。ていうか普通、転生者・転移者が死ぬとか論外ですからー。と言われ、次のレベルアップ時にでも望んでみたらどうですか?というようなことを切り捨てるような口調で言われた。辛い。
「・・・勇者コノハよー。防具もそーですが、武器になるものもー探さなくては話になりませーん」
武器?
「闘うの?」
「死に続けたいのならー構いませーん」
闘えということか・・・。
「あ、いちいち勇者コノハって言わなくていいよ」
僕が言うと
「わかりましたー。クソムシ・デッパドブオ「コノハとは呼んで頂けないのでしょうかね!?」・・・はー・・・、コノハ。私の事はー宇宙創造開闢以来の超絶美少女セフラ様ーと呼んでいただ「セフラね!?セフラって呼ぶからね!?」・・・ちっ」
舌打ちしたよねっ!?フェアリーって妖精なんだよね!?妖精が舌打ちってどうなの?
というところまで考えて思考を停止した。キッと妖精様の冷たい視線を感じたからだ。
ヨウセイサンニ殺サレチャウヨ・・・怖イヨ・・・。
ふと気づいた。
今迄は転移された瞬間から恐怖で体中がガタガタ震えて堪らなかったが、今は恐怖こそ感じるけど、震えで身動きが取れない程ではない。どういうことなのだろう?独りじゃないからだろうか?
「気持悪ーい。レベルアップしたからでしょー。もともとースケルトンの持つ魔力なんてー感じる方がおかしーのですからー」
何言ってるかよくわかんないけど、僅かに耐性が上がったらしい。
「因みにーコノハの今のステータスはー、乳幼児に近いくらいですー。尻餅でもついてお尻に何かが刺さったらー、死にまーす。気を付けてー」
なんていうか、相変わらず脆弱らしい。
辺りをキョロキョロ探ってみると「碇」が捨てられたように置かれているのが目に入った。
碇・・・か。武器になるかも知れないと思い、それを持ち上げようと屈んだ。物凄い重みだ。押しても引いてもビクともしない。
「ふん!ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
その時だった!バキィ!!と音がして、指が曲がっちゃいけない方に曲がって、爪が剥げてしまった。フッと意識が遠くなる。え?また死ぬの?こんなんで?
う・・・そ・・・だ・・・ろ?
碇を持ち上げようとした反動で体が後ろに引っ張られ、勢いよくドン!と何かにぶち当たったような感覚があったのを機に、僕の意識はなくなってしまったのだった。
へ?
と思った。
目の前に広がる光景が花畑じゃなかったからだ。
さっき持ち上げようと踏ん張って、微動だにしなかった碇が目の前にある。
予知夢でも見ていたのだろうか?それともゲームでよくあるリスポーンってやつか?
「正確にはリスポーンではありませんがー、そー思っていただいても結構でーす。」
透き通った声が、真横から聞こえた。セフラが宙に浮いていた。
気分的にはティ○カーベルである。チンカー○ルではない。ティン○ーベルである。
「私がこの座標にいましたのでー、サテフへの転移を省略しましたー。
そして更にーチャララララッチャッチャー!おめでとーございまーす。レベルアップしましたー。スキルに服装備(死んだ時に服が与えられる。レベル1)が付きましたー。全裸キモデブ不潔オヤジからー服着たキモデブ不潔オヤジになりましたー」
・・・その言い方どうなの?でも、ホントだ。布の服を着ている。ちょっと腹が出てるけど。でも・・・何故に・・・レベルアップ?
「如何しましたかー?あまりの私の魅力にー、声も出ないのですかー?気持ち悪い顔でーあまりこちらを見みないでくださいねー。ついでにー呼吸も止めて頂けませんかー?同じ空気を吸っているとゆーだけでー、世界で最も惨めな気分になりますー。鬱だ死のう。とゆー気持ちになりますー」
「そこまでかよ!?不条理極まりないな!ってそんなことよりレベルアップってどういうこと!?」
「・・・・・・はー、それについてはー、先程コノハがーキモいブタらしく後ろに転倒した際にー、丁度襲い掛かろーとしていたスケルトンにぶち当たりー、共に海に落ちてモズクとなった為ー、討伐カウントとして換算した結果ー、レベルが上がってしまいましたー。」
モズクって・・・藻屑だろ?
「っていうか!襲い掛かってくるの見てたんなら教えてくれてもよくないか!?」
「!!!それは盲点でしたー。後ろから襲われてー醜くのたうち回るブタの姿が見てみたーいとかいう理由ではありませーん」
そういう理由だよねっ!?ワザとだよねっ!?絶対わかってて言ってるよな?
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
セフラが黙った。
「?なぜ黙る!?」
僕が問いかけるとセフラは少し不思議そうな声色でこう答えた。
「あなたはー怒らないのですかー?」
「いや、怒ってるじゃないか!?聞いてないのか!?電波系か!?それとも言語が通じてないのか?」
おっと危ない。あと一言発したら、ヤラレル。
「・・・あなたはー、この世界に来てから何度も死にましたー。指を切って死んだ時やー、机の角に足の小指をぶつけて死んだ時はー・・・プクク・・・それは、それはー滑稽で笑いすぎてー腸がよじれるかと思いましたー。しかし、あなたはーその度に生き返らされてー、未だにこの様な目に遭っていますー。少しは憎いとかー恨めしーとか思わないのですかー?」
「憎む・・・?」
まぁ、恨みたいし憎みたいとは思って・・・るのかな?どうせ、かなわなくて死んじゃうのがオチなので諦めているだけなんですが・・・。
「・・・・・・まー、いーです。この話は終わりでーす。先へ進みましょー。
さてー、コノハが言うリスポーンは無限でーす。幾らでも死んでいただいて結構でーす。しかしー、この場所の何処かにー憐れな魂がさまよい歩き救いを求めていまーす。それを解放するまでーあなたが解放されることはありませーん。そしてー介抱は生涯されることはありませーん!それがあなたに課せられたー役割でーす」
「その順番で行くと、最後の生涯介抱されない絶望しか心に残らないからねっ!!」
でも、そうか・・・。よくわかんないけど、何とかしないといけないんだな。
・・・ていうか、そういう目的系は先に言えよ。
「いつも与えられる目標や人生に辟易していたのはーコノハ自身ではー?」
「なっ!」
そのセフラの一言に冷や水を浴びせられたような気がしてドキン!と胸が鳴った。
「それにー、その魔物はーあなたに似ていますよー。
自分自身の価値を見出そーと愛する者を棄ててでも手に入れたかった充実感ー。生きた証ー。存在の証明。その結果到達したー、憐れな男の成れの果てが今どーなっているのかー、ご自分の目で確かめてみてはー?」
似ている?僕に?僕は存在の証明とか、全てを棄ててでも充実感を得ようとか、そんな大それたこと考えたことなどない。何のことを言っているのだろうか?でも、僕の中の意識が、僕の思考を超えて「それを見てみたい」と言い出す。よくわからないが、それを見たら、なんとかできたら、何かが変わるかもしれない。と思う。ならば、やってやろうじゃないか。ワケのわからない事ばかりだけど、何か僕の心の琴線に触れる物がここにありそうな気がするから。
38歳キモデブ中年おじさんだけど。ここから何か僕にとって大切なものが得られるかもしれないから。
「・・・船の墓場・・・だったね?こ、ここで僕を何度も襲った骸骨は僕でも頑張れば倒せるんだよね?」
セフラは言った
「骸骨は脆い筈なのでー、コノハのステータスなら不意を突いてー思い切り殴り掛かればー13%の確率で倒せるよーですー。」
低っ!不意打ちしても13って低っ!!
「コノハは弱すぎるのでーす。頑張ってくださーい。経験値はリミットを超えていまーす。あとは魔物を始末するだけー。頑張って下さーい」
セフラは素知らぬいつもの無表情で船内へと続く扉の方へ飛んでいく。わからないことばかりだが、不思議とテンションだけは結構高めだ。
やってやる!まずは骸骨退治だ。
僕は武者震いと恐怖の入り混じった体の震えを押し殺して、セフラの後を追った。
読んでもらえる日が来てたら、お読みいただきまして誠にありがとうございました!!




