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これ何て死にゲー?  作者: このは
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セフラの独白

被災地からこんにちは

私はセフラ。ありとあらゆる秘密のカギを握る女。

なんて気取った挨拶をしようと思うくらい、最近面白い事がない。暇なの。暇なの。暇なのよ。え?勇者召喚?暇で忙しい私には関係のない話ね。え?私が担当?嫌よ!!


・・・・・・頭のたんこぶ?何のことかしら?目尻の涙?く、くしゃみしたのよさっき!

ホンット、今回の勇者の召喚も私にとってはどうでも良いことだった。

よりにもよって自分が担当することになったのは「このは あららぎ」という典型的なキモデブオタク系の中年おっさんだった。顔見ただけで吐きそうだわ。

そのおっさんを異世界に招いて、強力なエネルギーを解放する。その担当が私に廻って来たという災難に見舞われた。。

でも、このおっさんのダメっぷりと来たら、控えめに言って絶望的だった。ていうか「ステータスオール1」とか初めて見た。小指を机の角にぶつけて死んだおっさんを見た時、それはそれは腹を抱えて笑ってしまったわ。


おっさんの魂を捉えて肉体を復元することは、私にとっては息をするくらい簡単なことだった。だから事情の分からないこの世界で、何度も何度も死に苦しむおっさんに悪戯をしては楽しみ、楽しんでは命を落とす様を眺めるのは、最早趣味といえるくらいのものになっていた。

でも、500回を越えたあたりだったかしら?1000回越えた時だったかも知れない。正直1000回だろうが2000回だろうが、ほいほいほいほい復帰させては死んでいたから数えることさえ忘れちゃっていたけど、率直にいって飽きてきたのだ。徐々に面白くなくなってきた。つまんなーい。

人間と違って無限に近い時間を生きる私にとって、暇つぶしはとても重要で大事なもの。そろそろ次の玩具(おもちゃ)が欲しいと思い始めていた時だった。


戯れに船をひっくり返してスケルトン諸共おっさんをペシャンコにした時に気づいたんだ。いや、正確には「思い出した」という表現の方が正しいのかな?

おっさんもレベルアップするんだと。で、そこでやっぱり笑ってしまった。ステータスオール2もウケたけど、スキルのダイエットってなにw?

スキルは本人の意識や欲望が大きく影響する。なのに死んで死んで死にまくった先に獲得したスキルが「ダイエット」ってこいつ終わってるって思った。

だって、「異世界拒否」とか「案内人(つまり私の事ね)殺し」とかのスキルが出て当然のことをしている自覚はあったのに、それが、まさかの「ダイエット」なんて、どんだけおかしい頭してるんだろう?って、ちょっとだけこのおっさんの人生に興味を持ったのは多分この時だったんだと思う。



彼の人生を浅く理解したところで、皮肉だなーと思ったことがあった。いや、運命なのかも知れない。

彼が開放すべき海域を彷徨う魔物は、彼が持つ欲求とほぼ同じだった。

彼は、恨んだり憎んだりするよりも、生きる意味を追いかけたい人間なんだと知った。

この異世界でのシステムは敵を倒さなくてはレベルアップしないシステム。死ぬという経験から経験値はカンストしている彼だったけど、不慮の事故でも起きなければ敵を倒すことはできない。何故だろう。興味が湧いた。ということなのかな?

手伝ってやりたくなった。あくまでも彼の協力者としてではなく傍観者として、ではあるけれど。


異世界から召喚された人間は基本的に人間離れした能力を持って異世界を訪れる。

まあ、死んで獲得するスキルがダイエットとか、死んで服を所望するとか、人間離れしているといえば言えなくもないけどさ、そもそもそんなに簡単に死ぬ勇者なんて聞いたことないもん。それに復活させるくらいなら召喚をやり直すのがお決まりのパターンだった。

それをしなかったのは、ただ私が面倒くさかっただけの事だ。おそらく彼程よく死んだ勇者はこれまでいなかったんじゃないかな。


要するに私にとっては、なんだかんだで暇さえ潰せればよかったのだ。

ところが、私は気づいてしまった。彼の勇者の資質に。いや、この世界の革新者としての資質に。

本人はきっと気づかない。自分のステータスの上がり幅がどのような仕組みになっているかなんて。

彼は、レベルが上がるごとに倍強くなっていた。レベルが低い時こそ気づかない。1が2、2が4、4が8、まだこれくらいなら気づきようがない。でも、これが桁が変わってくると異常な成長速度を持つようになってしまう。ある銀行員が「倍返しだ」という決め台詞を吐いていたが、リアル倍返し、レベルが2も違えば4倍返しになっていく計算だ。これって・・・ヤバ面白くない?。


スケルトン一体も倒せなかったコノハが、あっさりそれを排除して見せた時、最高の暇つぶしにありつけたことに歓喜で身が震えた。

仔猫にとり憑いた男の末路が憐れだったのかどうだったのかは私にはわからない。

私という存在が引き裂かれ消滅したことで、コノハは一つレベルが上がった。コノハには関係ないんだ。敵とか味方とか。認識できた生命体の消失によってレベルが上がる、それがコノハの特色でもあるのに、本人だけがそれに気づかない。それってウケる。多少押されているくらいの戦力差であれば、次の瞬間には凌駕する。それが勇者コノハの強みだけどコノハがそれを実感することはないのだろう。小刀一振りで獣はこの世から存在を消した。きっとあの獣は刃そのものを認識することもなく消滅したのだと思う。


え?なんで消えた筈のセフラが話しているのかって?

はぁ~。言ったでしょ。息するより簡単に復元できるって。ていうか、もとより私の本体はコノハの前に姿を現してはいないのだから。


さて、丁度良い依代を見つけたわ。

あの猫ちゃんの魔力容量はかなり大きいみたいだし・・・。どうせ死んでしまうくらいなら大事に使ってあげた方がありがたいでしょう。

そうして、私は、紫がかった銀猫に近づいていった。


被災地からさよーなら

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