EP 4
作戦名『絶対無敵ポポロフェス』! 新戦力集結
ポポロ村の地下深くに存在する秘密の空間、通称『キュルリン・ラボ』。
そこでは、ルナミス帝国の経済封鎖を打ち破るための、前代未聞の作戦会議が開かれていた。
「フフン♪ ルナミスのオルウェルめ、アタシを舐めるんじゃないのじゃ! ヤツらの敷いた情報統制ネットなんぞ、地下帝国ドンガンを経由した『裏の魔導回線』を使えば、一瞬でスリ抜けられるのじゃ!」
ゴスロリ衣装に安全帯と工具袋をぶら下げたドワーフの天才発明家、キュルリン(100歳・見た目は幼女)が、巨大な魔導サーバーの配線を繋ぎ替えながら誇らしげに胸を張った。
「おおきに、キュルリンはん! 回線さえ確保できればこっちのもんや」
ニャングルが黒板を叩く。そこには『作戦名:絶対無敵ポポロフェス』とデカデカと書かれていた。
「ええか皆の衆! 今回の敵は一億人の『悪意(炎上)』や! これをひっくり返すには、圧倒的なクオリティのエンタメで視聴者を黙らせるしかない! ステージの設営、演出、機材の搬入……ポポロ村の全戦力を投入するで!」
「任せてください! 正義のステージ設営、この『紅蓮の戦乙女』が請け負いました!」
ズガガガガガッ!! バチバチバチッ!!
地上にある村の広場では、とんでもない光景が繰り広げられていた。
カギタ公爵令嬢にして極貧の賞金稼ぎ・ダイヤが、ユニークスキル【ウェポンズマスター】をフル稼働させていたのだ。
本来はあらゆる武器を使いこなすためのチートスキルだが、今は「溶接機」「建設重機」「魔導アンプ(スピーカー)」の最適解を弾き出し、たった一人で軍隊並みのスピードで巨大なライブステージを組み上げている。
「ふふっ……これで弾薬費と、テントの修繕費が稼げる……っ!」
目を血走らせながら鉄骨を組むダイヤの口に、リアンがスッと『肉椎茸のおにぎり』を突っ込んだ。
「前払いのまかないだ。食いながらやれ」
「もがっ!? ……美味しいぃぃ! 肉汁と旨味が五臓六腑に染み渡りますぅ! よーし、最高のスピーカー防音壁も作っちゃいますよー!」
原価数十円のまかないで、S級クラスの重火器令嬢が完全に買収されていた。
「おい、ニャングル! なんで竜人族族長の息子の俺様が、こんな裏方の仕事をやらなきゃならねぇんだ!」
ステージの脇では、イグニスが両手斧を放り出して不満げに鼻息を荒くしていた。
「アホかイグニス! 今回の主役を輝かせるには、お前の力が必要不可欠なんや! お前の『大火炎』のブレスで、ステージの照明と特効(花火)をド派手に演出するんや! これが成功すれば、T-TUBEの画面越しに一億人がお前の勇姿を見て、『さすがイグニス様!』って純金の像が建つで!」
「……な、なんだと? 一億人が俺様を……? フッ、仕方ねぇな! 極上のスポットライトを当ててやるぜ!」
見栄っ張りの竜戦士は、チョロすぎるほど簡単に丸め込まれた。
「闇夜を切り裂く一陣の風……! 拙者、タロ・イーツでござる!」
そこへ、地下の隠し通路を通って、中二病の大学生・良樹が到着した。
その後ろには、大量の「秘密の魔導放送機材」を背負わされた巨大なジオ・リザード(始祖竜クロノ)が、ウンザリした顔で続いている。
「おお! 良樹はん、ロードはん! ルナミスの検問をよくスリ抜けてくれたな!」
「フッ……我が竜撃砲のロマンの前に、不可能という文字はないでござるよ(※検問の兵士が寝ている隙に裏道を通っただけ)」
「……早く荷物を下ろせ。首が凝る。我は始祖竜だぞ……」
ぶつくさ文句を言いながらも、ロード(クロノ)は器用に機材をステージへと降ろしていった。
村中の人間、エルフ、ドワーフ、獣人、竜人が一丸となって、一つの「ステージ」を作り上げていく。
その熱気を、ポポロ屋の窓から見つめている少女がいた。
「……すごい。みんな、私のためにあんなに頑張ってくれてる……」
芋ジャージを着たリーザが、震える手を胸に当てる。
プレッシャーで押し潰されそうになる彼女の肩を、キュララがポンッと優しく叩いた。
「大丈夫だよ、リーザちゃん! 私が培ってきた『バズるカメラ目線』の技術、全部教えてあげる! アンチのコメントなんか気にしないで、リーザちゃんの『本当の歌』を世界中に響かせるの!」
「……はいっ! 私、歌います。パンの耳で鍛えたこの喉で、絶対にみんなを笑顔にしてみせますっ☆」
「……よし。ステージは完成した。機材の接続もオールグリーンだ」
リアンがエプロンの汚れを払い、全員に向けて声を張り上げた。
「これより、ルナミスのクソッタレな情報統制をぶっ壊す! 『絶対無敵ポポロフェス』、配信スタートだ!!」
ルナミス帝国中のT-TUBEの画面に。
そして、内務省の巨大モニターのど真ん中に。
『ポポロ村・公式真実配信チャンネル』という、ゲリラ放送のサムネイルが、突如として表示されたのである。




