表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/95

EP 4

誤魔化しの撮影再開! 査察官、エキストラになる

ポポロ屋で「特製・生姜焼き定食(白米大盛りおかわり)」という神の料理の前に完全敗北を喫した、帝国特別査察官ユリウス・フォン・クラウゼン。

彼は、膨れた腹をさすり、生姜の余韻に浸りながら暖簾をくぐった。

(……フゥ。認めよう。あの料理人の腕は、帝国の宮廷シェフを遥かに凌駕している。……だが! 私の胃袋は支配できても、査察官としての『正義の目』は誤魔化せんぞ!)

ユリウスはメガネをピカピカに磨き直し、査察官モードへと切り替えた。

彼には、どうしても追求しなければならない『村の異常性』があった。

「キャルル村長! 説明してもらおうか、村の広場にある、あの巨大なクレーターは一体なんだ!!?」

ユリウスは、村長宅シェアハウスのリビングで人参柄の抱き枕に抱きついて恋愛小説を読んでいたキャルルを、バシッと指差した。

その視線の先には、前回ルナが特効魔法メテオで形成した、直径数十メートルの焦げ付いた巨大な穴が開いていた。

「えっ? あ、アレは……その、アレですぅ」

キャルルがウサギ耳をパタパタとさせて動揺する。

まさか「世界樹のヤンデレ娘が、メソッド演技のために隕石を降らせました」とは言えない。

(くっ……! 言葉に詰まったな! やはり、三国間での違法な兵器実験か、魔物の大暴走の跡地……ん?)

「あらあら、査察官さん☆ あのクレーターに気づくなんて、お目が高いですねぇ♡」

そこへ、コタツからジャージ姿の創造神ルチアナが、ピアニッシモ・メンソールの煙を吐き出しながら現れた。

彼女は、隣にいた泥だらけのリーザの肩をガシッと抱き寄せた。

「アレはねぇ……実は、リーザちゃん主演の大作映画『どん底からのシンデレラ』の撮影のために作られた、**『超豪華な撮影セット』**なんですよぉ〜☆」

「……は?」

ユリウスが、間の抜けた声を漏らした。

「そ、そうよママ……じゃなかった、査察官さん! 映画のクライマックスシーンで、ヒロインが爆発の中を駆け抜けるっていう演出のために、リアン監督が徹夜で作ってくれたのよぉ☆」

リーザが、滝のような冷や汗を流しながら話を合わせる。

「せ……セット!? あの焦げ跡も、破壊の痕跡も、全て映画の演出だと!? 馬鹿にするな、そんな馬鹿げた……」

「あら、疑うなら……ちょうどこれから、『どん底からのシンデレラ2〜査察官襲来編〜』の撮影を再開するところだから、見学していきなさいよぉ☆」

ルチアナが不敵な笑みを浮かべ、ユリウスの手首を掴んだ。

「ちょうど、『村人A』のエキストラが足りなくて困ってたのよねぇ! リーザ王女殿下の映画デビューの引き立て役、光栄でしょう?」

「なっ……! 私が……エキストラだと!?」

ユリウスが反発しようとした、その瞬間。

(……待て。映画の撮影……? フン、そんな見え透いた嘘、私が暴いてやる! 撮影現場に潜入エキストラすれば、内部から村の不正の証拠が掴めるはずだ。それに……リーザ殿下を救い出すための良い機会になる!)

ユリウスの歪んだ正義感が、再び彼を突き動かした。

「……フン。ならば、リーザ殿下の頼みとあらば、協力してやらんこともない。帝国特別査察官の私が、完璧な演技(潜入調査)を見せてやろう!」

◇ ◇ ◇

数分後。

ポポロ村の広場(クレーター前)には、史上最も物騒な映画撮影クルーが再び結集していた。

「……おい、メガネ。そこ。村人Aだ。……狼男フェンリルに襲われて、泣き叫びながら逃げ惑うシーンだ。NG出したら、そのメガネを叩き割る」

監督サンバイザーを被ったリアンが、殺気立った声で指示を出す。

その横では、フェンリルが悪役(狼男)として牙を剥き出しにし、ルナが特効担当として「えいのえいのえいっ☆」と杖を振って小さな爆発魔法エクスプロージョンを足元でボッボッとさせている。

「……フン。狼男に襲われる演技など、容易いこと。さぁ、カメラを回すがいい!」

ユリウスは、査察官のプライドを胸に、広場の中央に立った。

「……アクション!!」

リアンの投げやりな合図。

「ガァァァー! 食ってやるぜ、査察官ァァ!!(※ノリノリ)」

フェンリルがユリウスに向かって、凄まじいプレッシャーで飛びかかった。

「……フッ、その程度のプレッシャー……って、おい待て! 本気ガチの殺気じゃねぇかァァ!!」

ユリウスの査察官としての冷静さが、一瞬にして恐怖に塗り替えられた。

フェンリルの牙が、メガネの数センチ先を掠めていく。

「ひぃぃぃっ! お、おい! ストップ! 死ぬ! マジで死ぬわァァァッ!!」

ユリウスは、エリートのプライドをかなぐり捨て、銀縁メガネをガタガタと震わせながら、泣き叫んで広場を逃げ惑った。

「あらあら、迫力が足りませんねぇ☆ もっと臨場感を上げますぅ♡」

特効担当のルナが、天然笑顔で杖を掲げた。

ドガァァァァァンッ!!!

ズッドォォォォォンッ!!!

ルナが放った「特効魔法(ガチの爆発魔法)」が、ユリウスの足元の地面を次々と木っ端微塵に粉砕していく。

「ギャァァァァァァァァァッ!!? 爆発が……爆発が本物だァァァ!! 隕石よりデカい爆発じゃねぇかァァッ!!」

「アハハハハ☆ いいリアクションですよぉ、査察官さん♡」

隕石のクレーターが、ルナの魔法によってさらに巨大化していく。

泥と土煙にまみれ、爆風に吹き飛ばされながら、涙と鼻水を流して本気で命乞いをする帝国特別査察官。

「……いい出汁(絵)が撮れてるじゃねぇか」

リアン監督は、もはや映画を撮っているのか、海鮮をいたぶっているのか分からない表情で、不敵な笑みを浮かべるのであった。

「こ、これ……本当に映画なんですか……?」

地面にへたり込んだユリウスは、白目を剥きながら、ルナの「あはっ☆」という笑顔に恐怖するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ