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EP 17

クライマックス! やっぱり鳩の餌を食うヒロイン

「ルナ、公園のセット(ガチの鳩付き)の錬成は完了したか?」

クレーターだらけの広場の中心に、ルナのチート魔法によって、ルナミス帝国の中央公園の風景が一部だけ完璧に再現されていた。

そしてその中央には、昨日リーザと死闘を繰り広げた『首の太いボス鳩』が、怒りに満ちた目でクルックーと喉を鳴らして鎮座している。

「完璧ですぅ☆ さぁ、リーザちゃん! ヒロインがどん底の生活の中で、鳩とパン屑を奪い合う『あの名シーン』の再現ですよぉ!」

「…………」

リーザは完全に無表情になっていた。

アフロ頭はキャルルによって直されたものの、その顔には生気がない。

彼女の視線の先には、真珠の神輿の上で「ハンカチ(特大のシルク)」を握りしめ、娘の『熱演』を今か今かと待ちわびる女王リヴァイアサンがいる。

「……おい、リーザ。聞いてるか」

メガホンを持ったリアン監督が、絶対零度の声で告げた。

「あのバカでかい海鮮(お母様)は、本物の親バカだが、目は誤魔化せねぇ。少しでも『演技(嘘)』だとバレたら、あの津波で村は一瞬で海の底だ」

「ヒィッ……」

「だから、本気でやれ。本気で鳩と戦い、本気でその『鳩の餌(豆とパン屑)』を美味そうに食え。NGは許さねぇぞ」

元・暗殺者の放つ殺気と、母からのプレッシャー。

逃げ場を完全に失った極貧アイドルは、ついに覚悟(諦め)を決めた。

「……カメラ、回ってるわね? いくわよ……!」

リーザは泥だらけのエプロンを翻し、猛然とボス鳩に向かってダッシュした。

「よぉーい……アクション!!」

リアンの声が響く。

「とったどぉぉぉぉ!! そのパン屑は私のモノよぉぉ!!」

「ドゥルルルルッ!!(※またお前か!)」

ボス鳩が羽を膨らませ、リーザの顔面に向かって容赦ない急降下爆撃ついばみを仕掛ける。

「痛っ! やめて! これは私が先に見つけた……ッ! オーガニック食材なんだからぁぁ!!」

リーザは鳩の猛攻に涙目になりながらも、地面に落ちているハト麦とパン屑を両手で鷲掴みにした。

(あぁ……私、なんでお母様の前で、また鳩の餌を奪い合ってるんだろう……)

一瞬、冷静な自分が脳裏をよぎるが、見つめる母の熱い視線がそれを許さない。

「う、うぅ……っ!! 美味しい……! こんなにパサパサのパン屑なのに……! 夢を諦めない限り、これは最高のディナーなのよぉぉ!!」

リーザは涙と鼻水を流しながら、パン屑と豆を口に放り込み、ボリボリと咀嚼し始めた。

嘘から出たマコト。映画の役作りという大義名分のもと、彼女は今、**『鳩の餌を食うどん底のヒロイン』**を完璧に(素で)演じ切っていた。

「……おおぉぉ……ッ!!」

その瞬間、真珠の玉座から、滝のような涙が溢れ出した。

女王リヴァイアサンが、嗚咽を漏らしながら立ち上がったのだ。

「なんという……なんという魂の演技……!!」

リヴァイアサンの声が、感動で震えていた。

「どん底の貧困に喘ぎながらも、決して夢の灯火を消さず、泥水(鳩の餌)をすすってでも生き抜こうとするヒロインの力強さ……! それが、リーザの流すあの本物の涙から痛いほど伝わってきますわ!!」

(ママ……! それ、演技じゃなくて、鳩に突かれた痛みの涙だからぁぁ……!)

リーザの心のツッコミは、ボリボリという豆を噛み砕く音にかき消されていく。

「見事よ、リーザ! お前はシーランの誇る、いや、世界最高の『大女優』です!!」

「ウオォォォォ!! リーザ様、最高だァァァ!!」

「感動したぞぉぉ!!」

魚人兵士たちも大号泣し、槍を掲げてスタンディングオベーションを送る。

広場は、割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。

「……はい、カット。オッケーだ。……クランクアップ(撮影終了)!」

リアン監督がメガホンを下ろし、満足げに頷いた。

「うっ……ひぐっ……!」

口の周りをパン屑だらけにしたリーザは、地面にへたり込みながら、アイドルとしての尊厳と引き換えに『村の平和』を勝ち取った達成感(と絶望)で、ただただ天を仰ぐのであった。

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