EP 16
カオスな撮影現場! 邪神も泣くドタバタアクション
ポポロ村の広場は、もはや映画の撮影現場というよりは、高度な魔法戦争の跡地と化していた。
「……おい、リアン。俺、もう無理だ。……死ぬ。マジで死ぬ」
全身の毛が焦げ、ススだらけになったフェンリルが、リアン監督(サンバイザー着用)の足元で白目を剥いて倒れていた。
「何言ってる、犬。まだ第2章の『狼男、ヒロインの愛に敗れて地形ごと粉砕される』のシーンだ。ルナ、次の特効の準備しろ」
「はいはーい☆ 次は隕石を降らせて、その衝撃波でフェンリルさんが吹き飛ぶシーンですねぇ!」
ルナが天然笑顔で世界樹の杖を掲げた瞬間。
上空の暗雲が渦を巻き、真っ赤に燃え盛る巨大な隕石が姿を現した。
「……メテオだとォォォ!? おい、エルフ! 衝撃波だけでいいって言ってんだろォォ!! 隕石そのものを降らせる奴があるかァァ!!」
「あはっ☆ 本物の隕石じゃないと、お母様が満足しませんよぉ♡」
フェンリルの絶叫も虚しく、隕石は無慈悲に広場へと急降下した。
ズッドォォォォォォォンッ!!!
ポポロ村を揺るがす特大の爆発音と共に、広場に巨大なクレーターが形成された。
爆風と土煙が晴れた後。クレーターの底で、フェンリルが煙を上げながらペシャンコに潰れていた。
「……カットだ。おい、フェンリル。吹き飛ぶ角度が違う。……やり直し(テイク3)だ」
「ぶっ殺すぞ……ッ!(※虫の息)」
この命がけの撮影(虐待)を、真珠の玉座から見物していたリヴァイアサンは、「まぁ! 素晴らしいわ!」と優雅に拍手を送った。
「あの狼男の、死を覚悟したような絶望の表情……! そして、隕石を用いた大胆な演出手法! これぞ、命の輝きを描いた芸術! 我が愛しのリーザの引き立て役にふさわしいわね!」
「あ、アハハハ……。で、でしょぉ、ママ……?(※顔を引きつらせて)」
隕石の爆風で髪がアフロのようになったリーザが、やせ我慢のアイドルスマイルで母に応えた。
◇ ◇ ◇
一方、その爆発の余波で、カチンコを持ったままゴミ捨て場まで吹き飛ばされた男がいた。
インテリヤクザ邪神・デュアダロスである。
「……おい、リアンのクソ野郎。……俺ぁただのカジノの借金として連れてこられたはずだぞ。……なんで俺が、隕石のシーンでカチンコ持って巻き添えを食わなきゃならねぇんだ……!」
デュアダロスはヨレヨレのアルマーニのスーツについたススを払い、涙目で絶叫した。
彼には、カジノの借金返済のために、この映画の「エキストラ(雑用)兼・カチンコ持ち」として強制参加させられるという、邪神のプライドを粉砕する屈辱が与えられていたのだ。
「おい、雑用。カチンコが遅ぇ。……次は、第3章、『狼男、ヒロインに超重力魔法をかけられて、カチンコ持ちの雑用と一緒にペシャンコになる』のシーンだ。……ルナ、準備しろ」
リアン監督の容赦ない指示が響く。
「おいおいおい!! なんで俺までペシャンコのシーンに入ってんだよォォォォ!!」
「あはっ☆ 邪神さんと狼男さんのコラボ爆破、美味しそうですねぇ♡ ……えいっ☆」
ルナが杖を振った瞬間。
デュアダロスとフェンリルの真上に、ブラックホール級の超重力魔法が顕現した。
「ギャァァァァァァァッ!!」
「カ、カジノの借金さえなけりゃァァァァッ!!」
二人の神話級の存在が、重力の暴力によって文字通りミチミチと押し潰され、カチンコと一緒に広場の地面と一体化していく。
「……いい出汁(絵)だ。……カット。……撤収。……次は、第4章、『ヒロイン、どん底の生活で鳩と餌を奪い合う』のシーンだ。……ルナ、公園のセット(ガチの鳩付き)を錬成しろ」
リアン監督の冷徹な声が響き渡る中。
地面と一体化したデュアダロスは、涙目でカチンコを握りしめ、自らの不幸な運命を呪うのであった。
そして、リーザは、次のシーン(鳩の餌を食う)の指示を聞き、アフロ頭のまま氷のように凍りつくのであった。




