EP 15
リアン監督誕生!ポポロ屋・即席映画制作委員会
「……おい、リーザ。もう一度言ってみろ。俺が、なんだって?」
ポポロ屋の厨房。手にはマグロ解体用の包丁、頭には「監督」と書かれた安っぽい紙のサンバイザーを被らされたリアンが、死んだ魚のような目でリーザを睨みつけた。
「だ、だってぇ! ママが『撮影現場を見せなさい』って聞かないんだもん! リアンさん、お願い! 今日だけ映画監督のフリをして! じゃないと……村が、村がまた沈められちゃうわぁぁ!!」
リーザはリアンの足元にすがりつき、必死の形相で懇願した。
店の外では、女王リヴァイアサンが巨大な真珠の椅子にふんぞり返り、数万の魚人兵士たちが「新作映画のロケ弁(本物の人間)」を期待してヨダレを垂らしながら待機している。
「……チッ。しゃあねぇな。村が沈んじまったら仕込みができねぇ。……おい、野郎ども! 仕事だ!!」
リアンが渋々メガホン(ただの丸めたメニュー表)を手に取った。
こうして、史上最も物騒な映画スタッフが結集したのである。
監督:リアン(元暗殺者。NGを出すと包丁が飛んでくる)
脚本:ルチアナ(創造神。設定がコロコロ変わる上に、途中でギャンブルに逃げる)
特効・照明:ルナ(エルフ。演出が全て本物のガチ魔法)
悪役・スタント:フェンリル(ダメ神。出演料として酒を要求)
主演:リーザ(極貧人魚。命がけのメソッド演技中)
「さぁ、ママ! これから映画のクライマックス、『悪い狼男に襲われるヒロイン』のシーンを撮るわよ!」
リーザが広場の中央に立つ。
リヴァイアサンは「まぁ、楽しみだわぁ♡」と優雅に真珠のジュースを飲んでいる。
「よし……。第1カット、スタートだ。……おい、犬っころ。行け」
リアンの投げやりな合図で、悪役をしたフェンリルが、牙を剥き出しにしてリーザに飛びかかった。
「ガァァァー! 食ってやるぜ、貧乏人魚ォォ!!」
「いやぁぁぁ! 助けてぇぇぇ!!(※本気で怖い)」
「いいわ、リーザ! 怯える表情が最高にリアルよ!!」
リヴァイアサンが拍手を送る。……が、ここで「特効担当」のルナが動いた。
「えいっ☆ 迫力を出すために、ちょっとだけ『爆発』させますねぇ!」
ルナが杖を振った瞬間。
ドガァァァァァンッ!!!
映画の演出用スモーク……ではなく、本物のガチ火炎魔法がフェンリルの尻を直撃した。
「アチィィィィッ!!? おいエルフ! 今のは殺しにきてんだろォォ!!」
「あはっ☆ ハリウッド級の臨場感ですぅ♡」
さらに、照明担当のルナが太陽光を一点に集中させたせいで、現場は映画撮影というよりは「焦土と化した戦場」の様相を呈し始めた。
「……カットだ。おい、犬。逃げ回るな、フレームアウトしてるぞ。……もう一度、今の爆破シーンから撮り直し(テイク2)だ」
「死ぬわ! 俺が死んじまうわ!!」
「脚本変更よー!」
そこで酔っ払ったルチアナが乱入してきた。
「やっぱりこのシーン、ヒロインが実は『ギャンブラーの才能に目覚めて、狼男と丁半博打で勝負する』っていう展開にしましょう! その方が面白いわ!」
「設定が崩壊してるじゃないのよぉぉぉ!!」
キャルルのツッコミが響き渡る中、現場は混沌を極めていく。
逃げ惑うフェンリル。
追いかける本気の火炎魔法。
そして、その横で「これが地上の最先端の映画……!」と目を輝かせて感動しているチョロすぎる女王。
「……ふん。まぁ、いい出汁(絵)が撮れてるじゃねぇか」
リアン監督は、もはや映画を撮っているのか、海鮮をいたぶっているのか分からない表情で、不敵な笑みを浮かべるのであった。




