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EP 7

神聖なる堕落と、呪文詠唱「ニンニクマシマシアブラカラメ」

「ふん。我がこの舌で、これがただのエサであると証明してやろう」

豚骨ラーメンを極めし竜王デュークは、腕を組み、目の前にそびえ立つ『モヤシと背脂の山』を忌々しそうに見下ろした。

隣では、二日酔いで顔を青白くした戦乙女ヴァルキュリアが、強烈なニンニクの匂いにウッ……と口元を押さえている。

「まずはスープからだ。……邪道め」

デュークはレンゲを手に取り、表面に分厚い油の層が浮いたドス黒い豚骨醤油スープをすくい、口に含んだ。

「…………ッ!!?」

ガツゥゥゥゥン!!!

デュークの脳天に、雷が落ちた。

繊細さ? 調和? そんなチャチなものは、このスープの前では無意味だった。

シープピッグの骨と肉から極限まで抽出された『暴力的なまでの豚の旨味』。それに負けない『キレッキレの濃口醤油』。さらに、それらを暴力でまとめ上げる『背脂の甘み』と『刻みニンニクの圧倒的パンチ力』。

「な、なんだこれは……! 下品だ! 圧倒的に下品で野蛮だ! ……だ、だが……!」

デュークは震える手で箸を割り、山盛りの野菜の下から、ワシワシとした茶色い『極太麺』を引きずり出した。

ズズズズッ!!

「ぬぅぅぅぅぅ!! 麺が……麺が口の中で暴れよる! 強烈なスープと脂を完全に纏い、噛み砕くたびに小麦の香りが爆発するではないか! ……美味い! 否、これはもはや『快楽』だ!!」

竜王の理性が、背脂の前に完全決壊した。

上品な豚骨を愛していたデュークは、汗だくになりながら、獣のように極太麺を貪り食い始めた。

「デ、デューク様……!? 竜王たる者が、そんなはしたない……」

ヴァルキュリアはドン引きしながらも、恐る恐る箸を伸ばし、クタクタに茹でられたキャベツとモヤシ、そして『レンガのような豚肉チャーシュー』を口に運んだ。

「…………え?」

パァァァァァ……!

ヴァルキュリアの青白かった顔に、一瞬にして赤みが差した。

ホロホロに崩れる豚肉の圧倒的カロリーと、生ニンニクの強烈なアリシン。それが、二日酔いで荒れた胃粘膜と、ルチアナへのストレスで擦り切れた神経を、力技で『修復(上書き)』していく。

「あ……あああ……!!」

戦乙女の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。

「神聖魔法でも治らなかった頭痛が……吹き飛んだ!? 体の中から、凄まじい活力が湧いてきます! な、なんて恐ろしい食べ物……ッ! でも、箸が……箸が止まらないぃぃ!!」

ズズズズッ! ワシワシワシッ!

天界最強の戦乙女が、純白の六枚羽を脂とスープで汚すことも厭わず、一心不乱に二郎系ラーメンをすすり上げる。

その姿に、天界の威厳など微塵も残っていなかった。

「……ふっ」

厨房で腕を組んでいたリアンが、悪魔のような笑みを浮かべた。

数分後。

二人の前にある巨大などんぶりは、一滴のスープも残さず完全に空になっていた。

「ハァ……ハァ……!」

「くそっ……こんな、こんな劇薬のような麻薬食……!!」

どんぶりの前で、肩で息をする竜王と戦乙女。

二人の瞳は、完全に「ヤミツキ」になった者のギラギラとした光を放っていた。

「どうした? もう食えねぇか?」

リアンが挑発するように言うと、二人は弾かれたように顔を上げた。

「「おかわり!!!」」

見事なハモリだった。

リアンはニヤリと笑い、再び極太麺を大鍋に放り込んだ。

「いいだろう。……だが、豚神屋ウチのおかわりには『ルール』がある」

「ル、ルールだと?」

「あぁ。上に乗せる無料トッピング……お前らの『欲望の量』を、俺の前に立って、大きな声で宣言しろ。呪文のようにな」

リアンは茹で上がった麺をどんぶりに叩き込み、二人を見据えた。

天界の風紀委員長であるヴァルキュリアが、スッ……と立ち上がった。

彼女の目は、すでに神聖な光を失い、完全に『豚とニンニク』に支配されている。

彼女は、厨房のリアンに向かって、純白の羽を大きく広げて叫んだ。

「ニンニクマシマシ、アブラ、カラメェェェェ!!!」

「……我は、ヤサイマシマシ、ニンニク、アブラブラブラ(背脂限界突破)だァァァ!!!」

デュークも負けじと、竜王の咆哮で呪文を詠唱した。

「よぉし、通ったぜ。……喰らいな!!」

ドンッ!! ドンッ!!

最初よりもさらに凶悪にそびえ立つ、背脂とニンニクのチョモランマが二人の前に置かれた。

「うおおおおお!!」

「いただきますぅぅぅぅ!!」

かくして、天界の風紀委員長と竜王は、ポポロ村の片隅で完全に「ジロリアン」へと堕落した。

ポポロ屋の店内は、神気と邪気ではなく、ただひたすらに『強烈なニンニクの匂い』によって支配されるのであった。

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