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EP 6

二日酔いの戦乙女と、劇薬『豚神屋』の産声

翌朝。ポポロ屋の店内には、この世の終わりを告げるような悲痛なうめき声が響いていた。

「うぅぅぅ……あたまが……頭が割れるように痛いですぅ……」

カウンターに突っ伏し、美しい白銀の髪を振り乱して涙を流しているのは、天界の風紀委員長・ヴァルキュリアである。

昨晩、ルチアナとキャルルたちの凶悪コンビによって度数50パーセント超えの芋酒を致死量飲まされた結果、彼女の神聖なる肉体は『人生初の超・二日酔い』というデバフに完全に侵されていた。

「ル、ルチアナ様……ヒッ……気持ち悪ぃ……浄化魔法が……アルコールに弾かれて効かない……」

「アハハハ! ヴァルキュリアウケる~! 完全に出来上がったオッサンじゃん!」

横で迎えビールを飲んでいるルチアナが、ゲラゲラと笑って指を差す。

「……うるせぇ。お前が無理やり飲ませたんだろうが」

厨房から、深い深いため息をつきながらリアンが出てきた。

彼はどん底の顔色をしているヴァルキュリアを見下ろすと、腕を組んだ。

「神聖魔法じゃ、物理的なアルコールの分解と日頃の『過労によるストレス』は治らねぇぞ。……お前、天界で真面目に働きすぎて、胃も心もすり減ってるな?」

「うっ……リアンさん……。そうです、毎日毎日、サボる神の尻拭いばかりで……もう限界で……」

弱り切った戦乙女が、涙目でリアンを見上げる。

「わかった。二日酔いとストレス、両方にガツンと効く『劇薬』を作ってやる。胃袋を物理的に殴って目を覚まさせてやるよ」

リアンはそう宣言すると、厨房の奥に保管してあった『特別な食材』をドンッ!と調理台に並べた。

それは、ポポロ村の極上小麦を限界まで硬く練り上げた『ワシワシの極太麺』。

そして、醤油ダレに一晩漬け込んだ、レンガのように分厚い『シープピッグの巨大な豚肉チャーシュー』。

さらに、バケツ一杯に用意された『純白の背脂』と、強烈な刺激を放つ『大量の刻みニンニク』だった。

「リ、リアン君……? なんか、凄く体に悪そうな匂いがするんだけど……」

キャルルがウサギ耳をペタンと寝かせて後ずさる。

「今日のお昼は、ただの定食屋じゃねぇ。……これより、ポポロ屋ののれんを一時的に架け替える」

リアンはニヤリと、裏社会の殺し屋時代よりも凶悪な笑みを浮かべた。

「これより、二郎系ラーメン『豚神屋ぶたかみや』をプレオープンする!」

グラグラと煮えたぎる大鍋に、極太麺が放り込まれる。

別の鍋で茹で上げられた山盛りのキャベツとモヤシ。

リアンは麺を平打ちの巨大などんぶりに叩き込むと、その上に野菜の山を築き上げ、レンガのような豚肉をドカン!ドカン!と二枚乗せた。

「仕上げだ」

お玉ですくった特大の背脂アブラと、レンゲ一杯の刻みニンニクを、その頂へと無慈悲に投下する。

上から濃厚な豚骨醤油スープを回しかければ、暴力的なカロリーとニンニクの香りが爆発的に店内に広がった。

ドンッ!!

ヴァルキュリアの目の前に、その『凶悪なラーメン』が置かれた。

「ひっ……!? な、なんですかこの食べ物は!? 山!? ニンニク臭っ!!」

「食え。食えば全てがどうでもよくなる」

ヴァルキュリアがその圧倒的なビジュアルと匂いに圧倒されていると、店の奥から「待った」の声がかかった。

「……ぬぅ。リアンよ」

腕を組み、険しい顔で歩み出てきたのは、豚骨ラーメンを愛し、自らも屋台を引く竜王デュークだった。

「ラーメンとは、スープと麺の繊細な調和を楽しむ至高の料理。……なんだ、その下品な脂とモヤシの山は! 繊細さの欠片もない。そんなものはラーメンではない、ただのエサだ!」

豚骨ガチ勢のデュークから見れば、二郎系の暴力的なビジュアルは「邪道」そのものであった。

しかし、リアンは余裕の笑みを崩さない。

「御託はいい。……デューク、お前も食ってから文句を言え」

リアンはデュークの目の前にも、全く同じ『豚神屋の特大ラーメン』をドンッ!と突き出した。

立ち昇る、濃密な醤油と背脂、そして強烈なニンニクの香り。

デュークの喉が、無意識に「ゴクリ」と鳴った。

「ふん……! 我が『エサ』だと証明してやろう……! ヴァルキュリア、我に続け!」

「い、いただきますぅ……!!」

かくして、天界の風紀委員長と、豚骨至上主義の竜王による、未知なる『二郎系ラーメン』への実食(絶望と堕落の始まり)が幕を開けたのである。

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