EP 5
神界の風紀委員長降臨と、恐怖のアルコール羽交い締め
「ふぅ……食った食った。極上カレーのおかげで、完全に極楽行きだわぁ……」
ポポロ屋のカウンターで、創造神ルチアナが膨れ上がったお腹をさすりながら、爪楊枝をくわえてオヤジのようにくつろいでいた。
フレアもデュークも、スパイスの余韻に浸って完全に油断しきっている。
その時だった。
カッ……!!
突然、ポポロ屋の天井を突き破るように、目も眩むような『神聖な光の柱』が降り注いだ。
「な、なんだ!?」
リアンが目を細める中、光の中から一人の人物が舞い降りた。
白銀の鎧を纏い、背中には純白の六枚羽。手には神々しい裁きの槍を持った、絵に描いたような美しき高位天使。
神界の風紀委員長にして、天界最強の戦乙女――ヴァルキュリアである。
「見つけましたよ……ルチアナ様!!」
ヴァルキュリアの美しい顔は、怒りで般若のように歪んでいた。
「げぇっ……! ヴァルキュリアじゃん! なんでこんな下界の田舎に……」
「とぼけないでください!!」
ヴァルキュリアは槍の石突きをドンッ!と床に叩きつけた。
「一体いつまでこのポポロ村に滞在しているおつもりですか!? 貴女が仕事をサボって下界の文化を持ち込むせいで、天使族がルナミス帝国に旅行しに行ったきり、誰も帰って来ないんですよ!?」
「えぇ~? あいつら、まだ帝国で遊んでんの?」
ルチアナが鼻をほじりながら答えると、ヴァルキュリアは血の涙を流して叫んだ。
「遊んでるどころじゃありません! 神聖なる天使たちが、帝国の『メイド喫茶』と『パチンコ』に完全にハマって、全財産を溶かしているんです! 『萌ええぇぇ!』とか『確変キタァァ!』とか叫んで、天界の威厳はボロボロです!!」
あまりにも俗物的すぎる天使族の堕落(原因:ルチアナ)。
洗い場で皿を洗っていたフェンリルが、「パチンコ……わかるぜ、その気持ち」と小さく頷いている。
「そうだろうねぇ~。だって神界って、なんか陰気臭いし、規則ばっかりで堅苦しいし。メイド喫茶のオムライスの方が絶対美味しいもん」
「なっ……!! トップである創造神が、なんてふざけた事を!!」
ヴァルキュリアの額に、青筋がブチッと浮かび上がった。
「いい加減に、仕事しろやああああ!!!」
風紀委員長がブチギレて裁きの槍を振り上げた、まさにその瞬間。
「まぁまぁ、怒んないの~☆」
「……え?」
背後から、一切の気配(殺気)を消して忍び寄っていたキャルル(※基礎身体能力がバケモノのウサギ)と、ルナ(※サイコパスエルフ)が、ヴァルキュリアの両腕をガッチリと掴み、恐るべき膂力で『完璧な羽交い締め(フルネルソン)』に極めた。
「なっ!? な、なんですかこの力は!? 私、天界最強の戦乙女ですよ!? ただのウサギとエルフに、身動きが……ッ!?」
もがくヴァルキュリアだが、音速を超える脚力を持つキャルルのホールドは、万力のようにビクともしない。
「ナイス、キャルル! ルナ!」
ルチアナがニヤリと極悪な笑みを浮かべ、カウンターの下からドス黒い液体が入った『特製・芋酒の一升瓶』を取り出した。
「怒りっぽい風紀委員長には、アルコール消毒が必要ね! さぁ、口を開けなさぁい!」
「あ、あ、ダメです! 私は神聖な身で、下界の酒など……ッ! んぐっ!?」
ルチアナは一切の躊躇なく、一升瓶の口をヴァルキュリアの美しい唇にねじ込んだ。
トクトクトクッ!!
度数50パーセントを超える強烈な芋酒が、天使の喉の奥へと強制的に流し込まれていく。
「じゃ! カンパーイ☆」
ルチアナが満面の笑みでジョッキを掲げる。
「な、なるかボケェェェェ!! ゴボボボボボッ!?」
ヴァルキュリアの悲痛なツッコミは、一升瓶の酒と共に胃袋へと消えていった。
「あーあ。またポンコツが一人増えたな」
リアンは、白目を剥いて泡を吹き、完全に出来上がって(堕落して)キャルルたちに介抱されている風紀委員長を見下ろしながら、深い深いため息をつくのであった。




