EP 24
「ポポロ村観光地化計画 〜幸運の妖精(中身40代)の有料オプション〜」
ポポロ村の英雄伝説(大嘘)や、絶品グルメの噂が広まり、村には少しずつ観光客が訪れるようになっていた。
そこでニャングルが目をつけたのが、村の移動手段兼アトラクション、『ロックバイソン乗牛体験』である。
「はいはい〜! こちらが当村自慢のロックバイソン牛舎でっせ〜! 勇壮な角! 鋼の筋肉! 見てってや〜!」
ニャングルが拡声器片手に客引きをしている。
一人の観光客(人間族の青年)が、牛舎の横に立っている「奇妙なもの」に指を差した。
「……あの、この牛の横にいる、身長160cmくらいの妖精みたいなのは何ですか?」
それは、どう見ても手作り感満載の、薄汚れたピンク色の全身タイツに羽を生やした着ぐるみだった。
中の人の体型が微妙にリアルで、腹が出ている。
「あら〜お客様、お目が高い! 見えはりましたか!? 只者ではない!」
ニャングルは大げさに驚いてみせた。
「これは『幸運の妖精ラッキ君』ですわ。心の清らかな人にしか見えへんと言われてます」
「そ、そうなんですか!? いやー、俺ってそんなに凄いのか……?」
客がまんざらでもない顔をする。
ニャングルはすかさず畳み掛けた。
「このラッキ君が付いた牛舎のバイソンを借りたお客様は、幸運になりますわ。宝くじが当たる、彼女ができる、肩こりが治る……なんでもござれや!」
「やった! そんな事が起きるんっすか!」
「そうでんがな! 今、この設定を決めましたからな」
ニャングルがボソッと言った。
「……今!?」
客が素に戻る。
だがニャングルは強引に話を勧めた。
「あ、せっかくやしラッキ君との記念写真撮りましょうか!? インスタ映え間違いなしやで!」
「いらんわ!! なんか薄汚れてるし!」
客が拒否すると、ニャングルはニヤリと笑い、着ぐるみの背中を叩いた。
「ちなみに中身は40歳の男性、村人の権田さんです。ほら、挨拶」
妖精(ラッキ君)が、深々とお辞儀をした。
「……よろしく、お願いしますだぁ」
地の底から響くような、酒焼けした低いドスの効いた声だった。
「いや声!! 妖精の声じゃないだろ!?」
「本日はラッキ君、助手席(バイソンの背中)にお客様と同乗いたしますわ」
「なんで!? 一人で乗りたいんだけど!?」
ニャングルは真顔で算盤を弾いた。
「幸運の向きを微調整するためですわ。風水的なアレや」
「なにそのスピリチュアル機能! いらないって!」
「なお妖精同伴プランになりますので、オプション料金+3,000円でっすわ」
「金取るんかい!? 罰ゲームみたいなのに!?」
客が抗議する中、ラッキ君(権田さん)がバイソンの背中に無理やりよじ登ろうとして、よろけた。
「……うぅ。昨日の酒が残ってて……デコボコな道なんで、ちょっと酔いますぅ」
「弱いな!! 二日酔いの妖精とか最悪だろ!」
客は帰ろうとした。
だが、ニャングルが逃すはずがない。
彼は客の肩をガシッと掴み、目を見開いて低い声で囁いた。
「あ! やっぱりラッキ君と記念写真、お撮りしまひょか?」
「いらんて言うてるやろ!!」
「……ちなみに、ラッキ君を断ったお客様は、だいたい帰りの山道で事故りますんや……」
ニチャァ……。
ニャングルが妖怪のような笑みを浮かべた。
背後では、ラッキ君が無言で手招きをしている。
「……ヒッ」
客の顔が引きつった。
ここは魔境ポポロ村。何が起きても不思議ではない。
「と、撮ってください!! お願いします!!」
「へい毎度! シャッターチャンスや!」
パシャリ。
怯える客と、二日酔いの妖精のツーショットが撮影された。
妖精(権田)が、低い声でアドバイスを送る。
「……ピースの角度は45度が運気上がりますだぁ」
「うるせぇよ!!」
◇ ◇ ◇
遠くからその様子を見ていたリアンは、深い深いため息をついた。
「……あいつ、いつか刺されるぞ」
「でもリアン君、あれで結構売り上げてるのよ?」
キャルルが苦笑いする。
「ちなみに権田さんのバイト代、時給いくらだ?」
「えっと、芋酒一杯だって」
「ブラック企業も真っ青だな」
こうしてポポロ村は、今日も平和(?)に経済を回していくのだった。




