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 3ヶ月後、マイアミのビーチ。

 砂浜で子供達が走り回り、若者達がビーチバレーをしている中、トミーとマーティはバーで席に座ってミルクシェイクを飲んでいた。服装も以前とは変わり、トミーは薄茶色のシャツに白のジーンズ、マーティはブルーのシャツにモカ色のジーンズ。

「天国だな」

 そう言うトミーはマイアミの海を満喫していた。

「パラダイスだ。この町は遊び放題のやり放題、最高だ」

 隣でマーティはミルクシェイクをかき混ぜながら笑っている。

「10年前に来てたら大金持ちになってる。今よりも成功していた。自家用ヨット、高級車、ゴルフコース、何でも自家用で手に入れられる」

「俺は名前入りのジーンズを売り出す。女のケツに俺の名前、どうだ?」

 マーティの話にトミーは呆れて海の方を見る。

「…おめでたい奴だよ…」

 しばらくして、不意にマーティがトミーを呼ぶ。

「おい、見ろ」

 マーティの視線の先には、ピンクの水着に日焼けした美女が歩いている。でもトミーが見た時には、どこかへ行ってしまっていた。

「また見損なったぜ、もったいない」

 口説くチャンスだったのに、とマーティはとても残念そうだ。

「へいっ!」

 オレンジの水着美女が通りかかり、トミーが呼びかけた。彼女が振り返る。

「アイスクリーム、どうだ?」

 ミルクシェイクを指差す。

「…とっとと消えてよ」

 真顔で言い捨てると去ってしまった。

「…アイスクリームで女を誘うのか?」

 マーティにまでバカにされてしまう。

「そんなのでモノにできる訳ないだろ。この国は、これだよ」

 そう言うと舌を見せて上下にヒョコヒョコ動かす。見せられたトミーは無反応。

「…それで女を? 胸くそ悪い」

 また舌を見せるマーティに

「まるでハエを飲み込んでいるトカゲだな」

 顔にパンチをする。素早くよけてマーティが言う。

「今に分かる。この国の女はこれにヨワイ、これでたちまち乱れる。お前も練習するといい」

 そこにブルーの水着美女が通りかかる。

「見ろよ、ひっかけてみな」

 早速マーティがトミーにけしかけてくる。

「お前はできんのか?」

 どうもそんな気分になれないトミーは、逆にあおってやる。

「見てるのか?」

「あぁ、見てるからやってみなよ」

「よし、見てなよ」

 自信満々でマーティは席を立ち、プールサイドに向かう美女のあとをついて行く。

「今のテクニックでいけよ、ロミオ」

「やかましい」

 小声でマーティをからかうと、トミーも荷物を持ちあとについて行く。マーティは腰でリズムをつけながら、デッキチェアーに座ったさっきの美女に近づいていく。トミーはさりげなく横のデッキチェアーで遊んでいる子供達に近寄り、聞き耳をたてる。

「綺麗だね、あそこで見とれてたぜ」

 マーティが口説いていた。トミーはしゃがんで子供達に話しかける。

「今からおもしろいものが見れるよ。あのお兄ちゃんだよ。見てな」

 話しかけつつ、徐々に美女との距離を縮めていく。

「あのお姉ちゃんの前でベロ出すよ」

 そんな実況中継されてるとは知らず、マーティが舌を見せてヒョコヒョコ動かす。すると、次の瞬間

 バチンッ!

 美女にビンタされてしまった。子供達は大笑いしている。

 トミーは呆けているマーティのもとに行き、仕事に戻るぞと声をかけた。歩きながら

「レズビアンだ」

 マーティが美女を口説くのに失敗したのは、自分のせいじゃないと言い張る。

「…わかったか? この国では、まず金だ。金がものをいうんだ。力があれば女を抱ける」

 マーティにトミーが言う。

「俺はやるぜ」

 この国では、金が無くては何も出来ないとわかったのだ。

 

 後日、トミーとマーティは黄色のボディに白い虎柄シートのキャデラックを買った。エルヴィアをフランクのもとに車で送る仕事を任されたからだ。服装もスタイリッシュに変え、トミーはグレーのスーツに黒いシャツ、サングラス。マーティはマスタードイエローのシャツにグレーのズボンだ。

「イカす車だろ?」

 マーティがトミーに自慢げに言う。すると、そこに真っ白のスーツにサングラス、白い帽子姿のエルヴィアがやってくる。気づいたトミーがドアを開け、行き先を告げる。

「フランクはゴルフだ。俺が迎えに来た、競馬場でおちあう」

 ところが、エルヴィアは車を見ると立ち止まった。

「冗談でしょ?」

 トミーもマーティも意味がわからない。

「何が? キャデラックだ」

 トミーがたずねても、ため息が返ってくるだけ。

「…死んでも乗らないわよ」

「そう言うなよ。ちょいと型は古いが、いい車だ」

 トミーは両手を広げてキャデラックの車体をアピールして見せる。型が古くても苦労して買った高級車だ。キャデラックだ、誰にだって自慢したい。だが、エルヴィアの態度は変わらない。

「…悪夢に出る車だわ」

 トミーはマーティと顔を見合わせ、車を見て思案するのだった。

 エルヴィアに車を変えるように言われて、トミー達は彼女を連れて車販売店に向かった。

「これは?」

 トミーはポルシェ928を選び、彼女の意見をうかがう。

「…インドのトラみたい」

 いいのか悪いのかよくわからないが、その表情は気に入ったようだった。

「彼と動物園にトラを見に行ってきたんだな…トラを買う気だ」

 マーティは彼女の好みに首をかしげて、トミーに話しかける。

「おい、友達がますます少なくなるぜ」

 言われたトミーを気にする風もなく答えた。

「かわいいトラだ」

「? トラを乗せるの?」

 不思議そうに聞いてくるエルヴィアに、トミーが答える。

「そう、メスのトラを」

 エルヴィアはその言葉に呆れていた。トミーは乗り心地を確かめて店員を呼ぶ。

「いくらだ?」

「4万3000ドルです」

 運転席を降りてドアを閉めると、店員がジョークを言ってきた。

「機関銃は装備しますか?」

「ジョークがうまいな!」

 書類を取りに店員がいなくなると、トミーはマーティをそっと呼び寄せた。

「防弾板を、ここと、ここ」

 後ろと横につけるように指示する。

「あと窓も…」

 防弾ガラスに変更。マーティがうなずく。

「それと、盗聴防止付きの電話。スキャナー付きラジオ…UFO用だ」

 最後のセリフはジョーク。調子に乗っているトミーに、エルヴィアが嫌みを言う。

「フォグランプも」

「そう! 沼地を通る時、役に立つ」

 ビビビッ! ビビビッ! クラクションを鳴らす。

「おい! どきな! ジャマだぜ」

 新車で遊んでいるトミーに、付き合いきれないとエルヴィアがため息をつく。

「フランクの方の時間はいいの?」

「まだ、一時間ある。飯は?」

「…退屈だわ」

 そう言って、帰ろうとする。あわててトミーはマーティに声をかける。

「あとはお前に任せる。競馬場でおちあおう」

 ちょうどやってきた先ほどの店員に握手をすると、彼女のあとを追う。

「君のために買った」

 隣に並んで、そう言うトミー。エルヴィアの返事は

「女の子を引っかけるんでしょ」

「君だよ」

 何を言っても、全然相手にされないようだった。販売店の外に駐車していたキャデラックの助手席にエルヴィアを乗せる。さっきから口説くような軽口が多いトミーに、エルヴィアが釘をさす。

「フランクが怒るわよ」

 しかし、まったく気にならない様子で返した。

「彼はいい男だ。だが、君はもっといい」

 運転席に乗り込むトミーの隣で、エルヴィアは鼻から麻薬を吸い込んでいた。フランクとの生活にストレスがあるのか、慣れた手つきは常習者のようだ。何となく興味がわいて、トミーは声をかけてみる。

「俺にも…」

 サッと麻薬ののった皿が渡された。トミーは辺りをキョロキョロと見て、彼女の手順を真似て吸い込んでみる。不思議な感覚につつまれ、皿を返すのに彼女を見た瞬間、素早くキスをしていた。エルヴィアは驚いて振りほどく。

「覚えておいて。私は使用人とは寝ない主義よ」

「いいとも。勝手に言ってな」

 トミーは彼女の白い帽子をかぶってみせると、エンジンをかけた。彼女を見ると

「キスするかい?」

 そうからかう。

「No、さっさと出しなさいよ」

 エルヴィアの返事は素っ気なかったが、女物の帽子をかぶるトミーの姿に笑い出した。彼女もまんざらじゃない様子だった。

 

 

 

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