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仁義の死闘 ~Mafia War~  作者: レイ・R・チャールズ
ベトナム訓練兵 死闘編
25/44

10

 沖合いに浮かぶ一艘の小型船。

 その船内でバルチャー達に捕らえられたダッチは、殴る蹴るの拷問を受けていた。所払い5年の刑でバルチャー達が留守にする間、ニュージャージーに残した舎弟3人をリックが殺害したからだ。

「オラァ! 言え!」

「リックはどこに隠れとんじゃ!」

 鉄パイプで腹を殴り、髪を鷲掴みにして仰向かせると

「おう! 警察の情報じゃ刑務所抜け出したと聞いたが、お前らでかくまっとるんじゃろ!」

 容赦のないバルチャーに、ダッチは必死で訴える。

「勘弁してください…本当に知らんのです…」

 涙で顔をぐしゃぐしゃにしている姿を見ても、バルチャーの怒りはおさまらない。

「クソが…リックの代わりに蒸し上げたろかい!」

 吐き捨てるように言うと、蹴りを入れた。

「オラァ!」

「しゃべらんかい!」

 やがて、両手を縛られたまま力無く床に転がったダッチが

「…み…水…水飲ませて…ください…」

 虫の息で懇願してきた。バルチャーは不敵に笑う。

「おう! よしよし、いくらでも飲ませてやる! …おい!」

 舎弟に命じると、ダッチを船尾に連れてこさせる。

「ほれ、飲んでこい!」

 怯えるダッチを海に突き落とした。

「あばばばば…ごぼ…ごぼぼぼぼ…!」

 溺れかけているダッチ。助けを求めて、必死で縛られたままの手で水をかいている。

「おう! 好きなだけ飲め! …わははは! 見てみぃ!」

 バルチャーは指差して笑っていた。舎弟達3人も笑っていたが、ヘンチマンだけは完全にドン引きしていた。

 

「うぅぅ…お母ぁ…」

 バルチャー達に小型船で離れ小島に連れてこられたダッチは、木に吊るされて泣いている。

「ええか、拳銃は撃ち方をしっかり覚えとかんと、いざという時に役にたたんぞ。よう見とけ」

 吊るされているダッチの太股めがけて、ドキュンッ!

「ぅがぁ!」

 叫び声を聞くと、満足そうにバルチャーはうなずいている。

「うん、よう当たる!」

「ベトナムでアメリカが負けたから拳銃が入手しやすいですわ」

 ベトナム戦争でのアメリカの大失態から、武器等が軍隊から入手しやすくなっていた。バルチャーは拳銃をM1911からリボルバーに変えると、ダッチめがけて2発撃つ。

「おう! お前らもやってみろ!」

 バルチャーに言われて、舎弟の一人が躊躇いながらダッチに向かって撃つ。もうダッチは叫ぶ力もなく、当たっても人形のようにぶら下がったままだった。もう一人の舎弟がUZIを撃つが、ドドドドドッ! と外してしまう。

「ハハハハハ!」

 バルチャーは笑い、舎弟達も笑っている。

「なにやっとるんや」

「おう! 下手クソが、貸してみろや!」

 ダッチを的にした射撃練習に、バルチャーも舎弟達も夢中になっている。

 しかし、ヘンチマンは怖くなって岩陰にしゃがみこんでいたのだった。

 

 数日後、ダッチは水死体で発見された。

 警察からの連絡を受けて、ジェスロ組長は組員数人を連れて身元確認に訪れる。明らかにリンチの傷痕だらけのダッチの遺体を引き取り、事務所に戻るためジェスロが車に乗ろうとした瞬間。

「ジェスロ! 死ね!」

 ドドドドドッ!

 バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!

 バルチャー達の車が走ってきて、マシンガンを連射。バルチャーも拳銃二丁を撃ちまくってきた。

 突然の攻撃に驚いて、何とか応戦するが、ジェスロの肩に銃弾が当たってしまう。

「親父さん!」

 ヴィクターがジェスロを車に乗せて、すぐさま走らせる。すぐにバルチャーの車が追いかけて発砲するが、運転するヘンチマンがハンドルを切り損ねてタクシーにぶつかってしまう。

「バカタレ! なにやっとるんじゃ!」

 怒鳴りとばすバルチャー。

「こっちも精一杯やっとるんじゃ!」

 ヘンチマンも声を荒げる。執念の猛追によりジェスロの車を見つけた。

「来た! 来た! 来たぁ!」

 目を輝かせてバルチャーはジェスロを狙うが、ヴィクター達も必死で応戦。激しいカーチェイスと銃撃戦は、一般人の女性に流れ弾が当たるという悲劇をおこした。

 

(白昼堂々の銃撃、一般人死亡。ニュージャージーでまた流血)

  NO MORE GUN   無能な警察に、市民の怒りの声

 

 この乱射事件は世論から抗議の声が寄せられ、大変な批判を浴びた。

 警察はついに取締本部を設けて、事件の解明に乗り出す。連日新聞で叩かれる中、命からがら逃げ還ったジェスロ組長は、バルチャーと全面戦争を始める準備にかかった。警察は即座にこの情報をつかみ、一斉検挙するのだった。

 

 バルチャーはスラムのカフェに隠れて新聞を読んでいた。

「へへへへ! 見てみぃ! ジェスロのクソ、手も足も出んやろ。勝負するなら今じゃ!」

 早速、舎弟達に攻撃の準備をさせようとするが、ヘンチマンは反対する。

「まだ動くのは早すぎる…」

「バカッタレ! パクられた奴が保釈されて出てきたら、わしら出遅れじゃ!」

 舎弟達を呼びつけると指示を出す。

「ええか、明日競馬場で役員会がある。ダイナマイト仕掛けて、殴り込みじゃ! 競馬場もジェスロも一緒くたにぶっ飛ばしやる!」

「おお! 派手にやったるぞ!」

 さらに、舎弟の一人タオを呼ぶと

「タオ、お前は武器全部集めてこい!」

「よっしゃ!」

 タオは舎弟二人を連れて飛び出して行った。

「ヘンチマン、行くぞ! 作戦じゃ! 作戦!」

 意気揚々と店を出て、ふと何か気配を感じた。後ろを振り向くが何もなく、気のせいかとヘンチマンを促して歩き出す。なにげに後ろを振り向くと、リックが両手で拳銃を構えていた。その目は真っ直ぐバルチャーを狙う。

 バンッ!

「ぅおお!」

 叫び声を上げて逃げるバルチャーの足に弾丸が命中。

「うわぁぁ! ハ、ハジキ! ハジキ!」

 足を引きずりながら必死で拳銃を探すバルチャー。とどめを指そうと走ってくるリック。手探りで掴んだ段ボールを盾にして、バルチャーはヘンチマンを呼んだ。

「ひいっ! ヘンチマン! ヘンチマン!」

 リックがバルチャーの側に立ち狙いを定める。その時、ヘンチマンが横から飛びかかり、弾は外れた。

「ぶっ殺せ! ヘンチマン、ぶっ殺せ!」

 リックはヘンチマンと揉み合いになったが、なんとか振りほどき再度バルチャーを狙う。しかし、バルチャーは駆けつけた舎弟達に助けられて逃げてしまっていた。パトカーのサイレンの音が近づいてきて、リックもこの場から逃げた。

 

 その夜、バルチャーはリックに撃たれた左足の痛みに苦しんでいた。

「…ヘンチマン…なんとか…しろ…」

 舎弟達は必死に傷の手当てをするが、素人ではたかが知れている。

「若、医師に診てもらわんといけません。ジェスロに話つけて和解したらどうですか?」

「やかましぃ!」

 心配するヘンチマンの助言は、バルチャーには全く届かないようだ。

「ヴィクターは親友ですから、若の顔がたつように俺が話してきます」

「ふざけんな!」

 バルチャーを助けるために、ヘンチマンは決意する。

「おいっ、お前ら若のこと、頼んだぞ!」

 ヘンチマンが隠れ家を出た直後、舎弟二人が別の目的地に車をとばした。彼らの目的はジェスロをぶっ潰すことで、それはヘンチマンとは真逆のことだ。車が到着したのは、最近出来たジェスロの経営する店だった。

「よぉし! 景気づけに一発暴れちゃろか!」

「おおよ! 派手にいくぞ!」

 マシンガンとショットガンを手に店に殴り込む。

「おらっ! 死ねや! クソが!」

 店に入るやいなや銃を撃ちまくる。組員達は突然の奇襲に驚いて逃げ出す者、応戦しようとする者。組員か一般人か見境なしに撃たれて、店内は一瞬で地獄絵図と化した。これにより、一般人5人が亡くなる。

 

 そんな事件のことも知らずに、ヘンチマンはジェスロの組事務所に詫びを入れるために訪れていた。しかし、当然ジェスロは店を襲撃されて会うはずがない。ヴィクターはヘンチマンが襲撃とは無関係だと思ったが、この詫びは時すでに遅しとも思った。

「いやぁ、すまんな。親父さん、急用ができて会えんようになってな…」

 その言葉にヘンチマンは目に見えて肩を落とす。

「そうか…いやぁ…わしは今回の喧嘩はとことん疲れてしもた。だから、いつでも終わらせられるぞ…」

「いやいや気にするな、俺とお前の仲じゃないか。今日と明日はホテルで休め」

 ヴィクターはヘンチマンの肩をねぎらうように撫でてやる。しかし、本当の目的は

「それで、ジェームズはどこにいるんだ?」

 バルチャーの居場所を聞き出すのだった。

 ジェスロ組事務所を後にして、用意された車に乗り込むヘンチマン。突然、反対側のドアが開き男が乗り込む。

「うわぁ! なんじゃ!」

 ズシッ、ナイフを刺されて殺されてしまう。

 

 1980年 ヘンチマン 死亡

 

 翌朝、警察がバルチャーの隠れ家に来る。

「バルチャー! お前達は包囲された。両手を上げて大人しく出てこい!」

 機動隊で取り囲み拡声器で呼びかけると、いきなり銃を発砲してきた。

 突撃命令。催涙弾を隠れ家に撃ち込むと、間もなく煙が出てきてあっという間に建物は煙に包まれる。咳と涙で苦しむ舎弟が二人捕まった。しかし、バルチャーと舎弟一人は逃げてしまっていた。ひそかに逃げた舎弟は、現場の一部始終をバルチャーに連絡する。

「そうか…わかった。俺のほうもなんとか逃げるから…お前もうまく逃げろよ」

 このあと、バルチャーは16年間逃亡し続けることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、最終回です

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