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仁義の死闘 ~Mafia War~  作者: レイ・R・チャールズ
ベトナム訓練兵 死闘編
21/44

 リックと居酒屋で会った日の夕方、ヴィトはアジトにジミーと舎弟を残すと、マイクを連れて出た。ルーカスの要望でバルチャーが潜伏している隠れ家に護送するためだ。ルーカスの思惑は全く分からないが、リックにバルチャーの隠れ家を知らせるには好都合。

 ところが、あともう少しの所で

「おいっ! 止めてくれ!」

 突然ルーカスが大声を出し、モーテルの近くで車を止めさせる。

「どうしたんですか?」

「ここのモーテルにな、女がいるんだ。俺はそこで着替えてから行くから、お前達は先に行ってくれ」

「待ってます」

 かくまわれている身でずいぶん暢気なことを。護衛を引き受けたヴィトとしては、バルチャーとか面倒な奴とは会わずに、おとなしくして欲しいものだと思う。

「いいから、いいから。先に行ってくれ」

 そう言うと、さっさと車から降りてしまった。

「……とばせ」

 ため息をつくと、仕方なしにマイクに車を出させた。

 

 バルチャーの隠れ家の外では、マイクが車の中で待機している。

 ヴィトは中で、ルーカスの到着をまだかまだかとイライラしているバルチャーと一緒に待っている。

 数十分が経ってヴィトが立ち上がると

「どこに行くんじゃ!」

 テーブルに腰かけているバルチャーが、テーブルを叩き怒鳴ってくる。

「トイレだ」

 そこへ、ヘンチマンがやって来た。

「サリバンさんはいるか? フランクさんから電話だ」

 ヴィトはヘンチマンに案内されて別室の電話に出る。ヴィトが部屋を出るや否や、バルチャーは二階にかけ上がった。二階にも電話があり、一階の電話が盗聴できる機械が設置されていたのだ。バルチャーは盗聴器に耳をあてる。

 ヴィトが受話器を手に取る。

「はい、ヴィトです」

「おい! ヴィト、この馬鹿! お前何考えとるんだ!」

 電話の相手はフランクだった。

「ルーカスから話は聞いた」

「ルーカスが何を言ったんですか?」

「何って、お前とリックが刑務所の頃からの付き合いで、お前がリックにルーカスを取らせようとしていることだ!」

 この言葉に盗聴していたバルチャーは驚いた。フランクは話し続ける。

「今、俺はジェスロの所に居る。ルーカスがジェスロと手打ちするように話をつけてるから、お前は隙をついてバルチャーの所から出ていけ」

「ルーカスが何故そんなこと言ったのか知りませんが、俺はニュージャージーの件はニュージャージーで解決できるように考えていたんです。おやっさん、そんな他に顔を売るような事をしたら、ご自分のマイアミに火の粉が飛びますよ!」

 そこで電話は切られてしまった。

 ヴィトは、さてどうしたものかと考える。いくら待ってもルーカスは来ない…。いや、はなから来る気がなかったのだ。自分は嵌められたのか…

 ふと気配がして振り向くと、戸口にバルチャー達が立っていた。

「おうっ! ベトナム帰りのマフィアは芸が細かいのう!」

 完全にキレている。話の通じない武闘派はまともに相手するべきじゃない。

 ヴィトはゆっくり近づくと、苦笑いを浮かべて声をかける。

「どうした? ジェームズ」

「じゃかましい! お前の考えは読めとるんじゃ!」

 バルチャーの横を通ろうとしたヴィトを怒鳴りつけ、突き飛ばした。

「この野郎…ヘンチマン! 銃よこせ!」

 バルチャーは左手にギプスを着けていたが、右手を出してヘンチマンに命令する。右手さえあれば撃つのは充分ということだ。ヘンチマンは笑いながら

「若、別にハジキで殺るほどの事でもないでしょう」軽く受け流した。

 ヴィトは一瞬の隙をついて、バルチャーに体当たりをして逃げ出そうとする。ヘンチマンに抑えられるが蹴り飛ばし、そのまま玄関に走り出た。マイクの車に乗り込むや

「車出せ!」

 突然の事に慌てたマイクは、間違えて後ろに急発進させてしまい、ヴィトに怒鳴られる。

「違う! バカ! 前だ! 前!」

 玄関からバルチャー達が出てきて、発砲してきた。バルチャーは片手で撃ってくる。

 マイクは必死で車を前に急発進させ、ひき殺す勢いで走らせて、隠れ家を後にした。

 

 しばらく車を飛ばし、バルチャー達が車で追ってこないのを確認すると、ようやくヴィトは路肩に止めさせた。

「ルーカスのクソ野郎……アイツだけはぶっ殺す!」

 バルチャー同様、ヴィトとて怒りで煮えたぎっているのだ。自分のケツを自分で拭けず、人に尻拭いをさせるとは…

「マイク、ボルトカッターあるな?」

「はい! あります!」

 車をルーカスの女のいるモーテルへ走らせる。管理人から部屋を聞き出し向かう。ベルを押すが、用心深く誰も出てこない。

「ルーカスさん! ルーカスさん! バルチャーの件は解決しました」

 ドア越しに声をかける。おそらく聞き耳をたてている、ルーカスに。

「封筒は返します」

 5千ドルの入った封筒を置き、静かにドアの横に移動すると、リボルバーのM19を握って待つ。マイクは鎖を切るボルトカッターを持って待ち構える。

 やがて、ドアが少し開く。鎖をつけたまま、隙間からヴィト達が居ないか確認しようと…その瞬間

 カシッ! 鎖が切られた。

 ヴィトがドアを蹴り開け、ドアの側にいたルーカスは衝撃で転がった。ルーカスの眉間を狙う。

 ドキュッン! ドキュッン!

 ルーカスは動かなくなった。

 マイクは叫ぼうとしたルーカスの女の口を押さえた。

「いいな、何も見てないって言えよ」

 女はこわばったままコクコクと頷いた。

 ヴィト達はモーテルを後にして、フランクとジェスロが飲んでいるマイアミの店まで車を走らせる。

 

 1979年 ヘクター・ルーカス 午後7時 死亡

 

 バビロンクラブはフランクが経営する店の一つで、最近ジェスロ・オックスがフランクと現れると噂になっている。

 ヴィト達が訪れると、店の奥の特等席でフランクがジェスロ、ヴィクターと楽しく飲んでいた。

「おうっ! ヴィトじゃねぇか、久しぶり!」

 声をかけてきたのは、ヴィクターだ。

「これは久しぶりです、ヴィクターの叔父貴」

 挨拶すると、フランクにも挨拶する。

「叔父さん、お久しぶりです」

 フランクは手招きすると、ヴィトをヴィクターの横に座らせる。

「お前、バルチャーの所からの脱出はよくやったな」

 ねぎらいの言葉をかけてきたが、内心は全く分からない。ヴィトは淡々と告げる。

「叔父さん……ルーカスは私が殺しました」

 一瞬で場が静まりかえり、奥で飲んでいたリックがサングラス越しでも分かるほど驚いている。ヴィクターがホステス達を下がらせ、ヴィト、ジェスロ、フランク、ヴィクターの4人で話せるようにはからった。

「叔父さん、俺の意志でやりました」

「バカ野郎! お前の意志で勝手なことして、もしバルチャーが怒ったらどうするんだ!」

 怒鳴るフランクを前に、ヴィトはジャケットの内ポケットから封筒を取り出し、テーブルに置いた。

「これはお返しします」

 あてつけだ。自分へのあてつけだと分かり、ますますフランクはどやしつける。

「金を返せば、仁義を返せると思ってるのか!」

「フランクさん」

 見かねたのか、ジェスロが割ってはいる。

「起こってしまったことは仕方ないです。ヴィト、よくやったな……後はこちらで何とかする」

 ヴィトはマイクを横に座らせると

「罪はこいつにかぶらせます」

 そう言うと、マイクにビールを注いでやる。

「飲んでおけ…」

 ヴィトにすすめられると、マイクはビールを一気に飲みほした。覚悟はとうに出来ていたのだ。

 

 ルーカス殺害はヴィトの舎弟マイクが被ったことで、事態は収まる。しかし、リックはヴィトに対して信頼できなくなり、フランクはニュージャージーでデカイ顔ができなくなってマイアミに戻った。

 

 ジェームズ・バルチャーはルーカスを失って、すっかり孤立してしまった。だが、祖父のルフォーツがオックス組と和解し、競馬場の利権の半分を跡目のスタンに渡す形で収まり、孫ジェームズへの警察の追求が最終的には[所払い5年]と決定。これを受けて、ニュージャージーから遠く離れたネバダ州ラスベガスに移ることになる。バルチャーはヘンチマン、舎弟3人を連れて、その野望は捨てる事なく部下達3人を残して旅立って行った。

 

 

 

 

 

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