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仁義の死闘 ~Mafia War~  作者: レイ・R・チャールズ
ベトナム訓練兵 死闘編
20/44

第1章の主人公ヴィト・サリバンが登場します

 ニューヨークを離れ、故郷のニュージャージーに戻ったヴィト・サリバンは、そこでささやかな組をつくっていた。仕事は漁師からのシノギやスクラップ作業等キツイものばかりだが、それでも引き受けていた。服装は黒のスーツ・白いワイシャツから、グレーのスーツに白いワイシャツに変わった。

 ある日、いつものように仕事に取りかかろうとしていると、客がやって来た。フランク・サンダの妻だ。

「ヴィトちゃん、久しぶりね」優しく挨拶してくる。

「…あぁ、どうも…」

 ヴィトはフランク・サンダ組に一時期世話になっていた。しかし、表向きはそうでも、裏では随分な目にあわされたのだ。フランク組長から指示されたロシアンマフィア幹部暗殺の時は、フランクはこの幹部と内通してヴィトを殺そうと謀った。暗殺完遂後、ヴィトは服役した。サンダ組の幹部アントニオはヴィトと懇意にしていた為に、警察に密告され逮捕、服役中。逮捕時に重傷を負った。そしてフランク組長から指示されたスペイン系麻薬カルテルのボス、ソーサ暗殺の時も、やはり内通してヴィトを殺そうと謀った。ソーサの気まぐれで殺されなかったが、代償として弟分ジョニーと恋人アイリスを殺されてしまった。うちひしがれるヴィトをフランクは嘲笑(あざわら)ったのだ。

「実はおりいって頼みたい事があるんだけど…」

「頼み…?」

 いぶかしげに尋ねると、

「今ニュージャージーで起こってる抗争、知ってるでしょ? 実は、ルーカスさんをあなたに預けたいのよ」

 フランクの妻が来た方向をよく見ると、黒い車が一台止まっている。中にはヘクター・ルーカス、一番の黒幕フランク・サンダが葉巻をふかしてヴィトを見ている。どうやらマイアミで成功したらしい。

 ルーカスをかくまえばどうなるか、容易に想像できる。

「すいませんが、この話は断らせてもらいます」

 きっぱりとヴィトは返答する。

 しかし、これに妻は食い下がってきた。

「そんなこと言って、あなたのとこ今景気悪いんでしょ? これ、少ないけど取っときなさいな」

 そう言って5千ドルの大金が入った封筒を渡してきた。

「あなたが辞めたって言っても、フランクは辞めさせてませんよ。今でもあなたのこと一番評価してるわ」

「姐さん、俺はフランクさんとの縁は切ったつもりです。この金は要りません。…では、仕事がありますので、これで失礼します」

 軽くお辞儀をすると、さっさと立ち去ってしまった。

「あぁ…ヴィトちゃん…もうっ!」

 フランクの妻は残念がり、その様子を見ていたフランク達もどうしたものかと思案した。

 

 その日の夕方、仕事を終えたヴィト達が三々五々帰路につく。

「兄貴、俺、肉屋で肉買ってきます!」

 ジミーに声をかけられた。

「金は持ってるのか?」

 ヴィトは幾らか金を渡して、ジミーともう一人の弟分を行かせた。

 舎弟のマイクと歩いていると、そこいらでやけに野良犬が(うな)る。

「おい、ここらの犬は機嫌が悪いな。俺達の事を犬殺しと勘違いしてないか?」

 そんなジョークをヴィトが言ってしまうほど、やたら威嚇される。

「へへへへ」マイクは頭をさすって笑っていた。

 

 夕食はジミーがステーキを焼き、ヴィトの皿に盛り付ける。

「さ、兄貴、どうぞ」

 ヴィトはステーキにフォークを刺し、ナイフで切って食べる。

「…うん、美味い」

 味わいながら食べていると、ふとジミー達舎弟は全くステーキを食べていないことに気づいた。不思議に思い

「どうした? お前らもじゃんじゃん食べろ」

 しっかり食べるように声をかけた。

「いえ…兄貴の為に買った肉…ですから…」

 ジミーがそう言って、舎弟達も顔を見合せている。

「なに言ってるんだ。変な遠慮しないで食べろ」

 ヴィトは自分だけ食べるのは居心地が悪いと、さらに声をかける。

 うぅーわう! わう! わう! 外から野良犬の吠える声が聞こえる。

「…なんだ犬が欲しがってるのか」

 何の気なしに、ポイっと肉を一切れ野良犬に投げてやった。ところが、肉には全く寄り付かず、やはりこちらに向かって吠えてくる。

「…おかしいな…」

 首をかしげつつ、ジミー達を見ると、皆顔をうつむけて何も見ていませんという雰囲気だ。これは妙だ。

「お前ら、どこの肉買ってきたんだ?!」

 ヴィトが怒鳴ると、ジミーが土下座せんばかりに頭を下げる。

「すいません! 俺…責任取ります!」

「バカ野郎!」

 ジミーの頭を叩くと、酒で一気に肉を飲み込む。ジミー達はこんなに無理をして、自分に付いてきてくれている。自分ももっと頑張らねばと強く思う。そのためには…

「明日、フランクに会ってくる」

 

 翌朝、ヴィトは嫌々ながらもフランクに会い、ルーカスの身柄を預かることにした。本当なら復讐したいが、今はぐっと堪える。フランクはルーカスと5千ドルの入った封筒をヴィトに渡し、去っていった。

 さて、この男をどうしたものか。

 

 ヴィトはルーカスを自分の事務所に泊まらせることにした。事務所といっても、港の倉庫の上に建てた建物で、バラック小屋のようなところ。ソファーに座り、ビールを注いでもらいながらルーカスは不満げだ。

「客には客の待遇というものがあるのに、豚小屋みたいなところに住まわせやがって…」

 かくまってもらってる身で、ずいぶんな態度だ。ヴィトは顔色も変えず

「俺達はこれから港で仕事がありますから、文句があるなら他所に行ってください」

 そう言い、ルーカスは少し驚いていた。そこにジミーがやってきた。

「兄貴ちょっと…」

 ヴィトはルーカスに会釈すると、外に出ていく。

「どうした?」

「実は、コーネルって方が兄貴に会いたい、と」

「コーネル……?」

「刑務所で助けてもらった、って言ってましたよ」

 そこでようやく思い出した。

 コーネル。リック・コーネル。懲罰室に再三入れられていたアイツか。

 すると、ルーカスがドアを開けて下にいるヴィト達に声をかけてきた。

「おいっ! 客か?」

「俺達の言うとおりにしてください!」

 ヴィトはしっかり聞こえるように返事をして、ジミーにも指示する。

「おい、ルーカスのこと頼んだぞ」

 ルーカスに聞かれないように小声だった。そして、リックのいる居酒屋に向かった。

 

 居酒屋に入ると、ホワイトグレーのスーツに赤白の入ったシャツ、サングラス姿のリックが座っている。ヴィトと比べてずいぶんいい服装になっていた。ヴィトに気づくと笑いかけてくる。

「ヴィトさん、お久しぶりです」

 リックはヴィトを席に座らせ、ビールを注ぐ。あの素行の悪かったリックの変わりように驚いていた。

「オックス組のところで、ずいぶん頑張ってるみたいじゃないか」

 ヴィトが用件にふれるように話しかける。

「……ルーカスをかくまってるようですね」

 リックも直球で返してきた。やはり昔話をしにきた訳ではなかった。

「…だったらどうする?」

「黙って引き渡してください。ヴィトさんやフランクさんの悪いようにはしませんから」

 ヴィトはビールの入ったコップを見つめて考える。

「黙って出て行くことは出来ないのか?」

 ドン! リックが握り拳をテーブルに打ち付ける。

「俺もカッコつけんといきませんから、邪魔せんでください」

 その眼には、邪魔する奴は殺すという気迫が感じられた。

「…わかった。俺も以前ジェスロさんには世話になったから、俺に任せてくれないか」

 そう言って、リックの肩をポンと軽くたたく。リックはヴィトをじっと見て

「よろしくお願いします」頭を下げた。

 話はまとまった。先に席をたったヴィトが振り返って

「いい娘さんをもらったそうだな。大事にしろよ」

 リックに言葉をかけて、店を後にした。

 

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