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祖父ルフォーツ・BJ・バルチャー組長から勘当されて、バルチャー連合会を飛び出したジェームズ・バルチャーはバルチャー組を立ち上げ、カジノ賭博に手を出していた。
それを知ったジェスロ組長はヴィクターを呼び、この事を解決しようとした。
しかし、ジェームズ・バルチャーには既にデカイバックが付いているとは知らなかったのだった。
ここはバルチャーのカジノ場、噂ではかなり客から搾り取っているらしい。
ヴィクターが挨拶に訪れると、組員が知らせたのかさっそくバルチャーが現れた。
「おぅ、ヴィクター、どうしたんじゃ?」
咥え煙草をふかしながら、以前と変わらぬ不遜な態度。
ヴィクターは腹立ちをこらえて、穏やかに話す。
「どうしたもこうしたも…ジェームズ、お前かなり大胆な事して、客から巻き上げてるらしいじゃないか? 悪いこと言わん。今すぐ手を引け。今ならまだ間に合うぞ」
「へへへ、とっつぁん、ちょっと顔出して行きなんや」
ニヤニヤ笑いながらバルチャーはヴィクターを事務所に案内する。そこにいたのは、ルーカス組組長ヘクター・ルーカス。彼は長老エンリケの弟、賭場を任されている。ジェスロ組長の兄貴分にあたり、表向きは良好な関係だ。だが実は勢力拡大を謀るジェスロ組長には煙たい存在だった。一瞬でヴィクターの顔がひきつる。
「ヴィクター、ジェームズはな正式に俺の跡目になったんだ」
「困ります! ジェスロの親父に知られたら、どうするんですか!」
この予想外の横やりに、ヴィクターは何とか丸く収めようとしたが
「何がジェスロや! 言っとくがな、博打ならわしの方が上や! そう言うとけ!」
バルチャーは収める気など全く無かった。煙草の煙を吹きかけると
「そうや、これからはルーカスファミリー、バルチャー組や! 以後よろしゅう頼みまっせ! アハハハハハ!」
ヴィクターを部下達の前で笑い者にした。
ヴィクターは恥をかかされたまま、黙って帰るしかなかった。
その夜、バルチャーは舎弟を連れてバーで飲んでいた。
今日ヴィクターをやり込めてやったのは、最高にスカッとした。
「アハハハハ! わしらこれから戦争するんやど!」
バルチャーのその言葉にホステスが不思議そうに尋ねる。
「? 戦争って…誰とやりあうの?」
「誰って、こことやりあうんや!」
舎弟がホステスの胸元に抱きつき、キャーと悲鳴があがる。皆がドッと大ウケする。
そこへ突然、ルーカスが血相を変えてやってきた。ホステスを外させると、懐から封書を取り出す。
「バ、バルチャー、大変や! これ、これ見てくれ、絶縁状や!」
それはジェスロ組長からの絶縁状だった。ジェスロだけでなく、長老エンリケの名前も署名されている。なんと手回しの早いことか…
「俺らこれから…どないしよう…」
思わぬしっぺ返しに、ルーカスは途方に暮れている。長老エンリケの影響力は大きいようだ。
そんなルーカスの弱腰に、バルチャーは不敵にニヤリと笑う。
「そんなもん! わしらの方から絶縁じゃ! ワハハハハ!」
豪快に笑うと、絶縁状を破り捨てた。
「ジェームズ…なんてことするんだ…」
ルーカスはただ驚くばかり。しかし、この時バルチャーの内心は怒りと復讐心でいっぱいだった。
|(ジェスロめ…汚いことするのう! 見とけよ、必ずぶち殺したる!)
固く復讐を誓い、抗争の準備にかかった。
夜更けのジェスロ組事務所、ジェスロや組員は寝ている中、リックはトイレ掃除をしていた。掃除に飽きて、ついウトウトしていたら、玄関のインターホンが鳴った。何度も鳴らされるのに、組員二人が起きて応対に行く。
「何や? こんな時間に」
ドア越しに聞くと、
「夜分にすいません、昼間の電気工事の続きに伺いましたが…」
「こんな夜更けに工事か?」
「今日中に終わらせろと言われまして…」
チッ! 誰が言うたんや! 今日中て真夜中じゃ!
「断るからドア開けろ」
ドアを開けると、バルチャーの部下が拳銃を構えていた。
「動くな」
「ヒィ-!」
声にならない悲鳴をあげた瞬間、ドキュッン! 弾が組員の身体を撃ち抜く。
その銃声を聞きつけて、寝ていた組員達が起きてくる。手には武器を持って。
「おい! 何だ!」
「誰だ!」
玄関の惨状を見るやいなや、逃げるバルチャーの部下を追いかける。
「よし! 今じゃ!」
その隙をついてバルチャーが部下達を連れて、事務所の中に入った。拳銃を持った部下は囮だ。バルチャーは復讐の鬼と化し、ところ構わず拳銃を発砲し、ナイフを振り回す。
「ジェスロ-! 勝負しろや!」
ジェスロ組長はいち早く騒ぎに気づくと、組員に守られながら逃走をはかる。駆けつけたリックは組長にクローゼットに隠れるように言うと、先に隠れていた組員を追い出して隠した。
血眼になって探すバルチャー達により、事務所は戦場となっていた。自分達を邪魔する奴は容赦なく撃ち殺す、切り殺す。人の気配のするところを片っ端から探しまくり、部下達も隠れそうな場所を徹底的に探す。バルチャー達の通ったあとには、怪我人の呻き声しか残らない有り様だった。
次から次に邪魔してくる組員達に、バルチャーのイライラが募っていく。
クローゼットに隠れていたジェスロ組長は、危険を感じて組員達と屋根裏に逃げようとする。
しかし、これをバルチャーが見逃さなかった。
「ジェスロ覚悟!」
ドキュッン! ドキュッン! ドキュッン!
奇跡的にバルチャーの銃弾を免れて、屋根裏に逃げのびた。だが、今度はバルチャーの部下達が窓を叩き壊してきた。たちまち銃撃戦になる中で、組員達は組長をここから逃がそうと必死で応戦する。
ジェスロ組長はなんとか一人一階へ逃げ出せた。リックも駆けつけて護衛する。
その頃、バルチャーは組員達に狙い撃ちされて、思うように動けないでいた。
|(ジェスロ! ジェスロ! ジェスロの首!)
ドキュン! バルチャーのすぐ側を銃弾が掠めた。
ハッと見ると、そこにはヴィクターが待ち構えていた。真っ直ぐにバルチャーに向けられた拳銃、睨み付ける眼には殺意がこめられている。
ヴィクターとバルチャー、それぞれの部下達の銃撃戦が激しくなる中、必死でジェスロ組長もリックと逃げていた。
ドキュン!
ヴィクターの銃弾が、バルチャーの手に当たった。
「うがぁっ!」
血まみれの手をおさえて、バルチャーはなおも拳銃を探し、部下の手から無理やり奪い取る。しかし、戦いは徐々にバルチャーが押されていた。
「若! 逃げましょう!」
「くそっ! ジェスロの首…ジェスロの首!」
部下に連れられて逃げながら、バルチャーは悔しさに叫び続けた。
ジェスロ組 対 バルチャー組 第一次抗争事件勃発 死者1名 重傷者多数




