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仁義の死闘 ~Mafia War~  作者: レイ・R・チャールズ
ベトナム訓練兵 死闘編
16/44

第1章の主人公ヴィト・サリバンは今回は脇役です

 

 1969年 アメリカ最悪の戦争、ベトナム戦争がおこった。若者が戦いに行き、英雄として帰ってくる者、骸となり帰ってくる者、しかし、ほとんどが後遺症を持ったまま帰ってくる者だった。

 1975年 ベトナム戦争が終わり、若者たちが国へ帰って来た。しかし、彼らを待ち受けていたのは社会という壁だった。

 

 

 1976年終戦後、ニュージャージーでは、ジェスロ・オックスを組長にするオックス組と、ルフォーツ・BJ・バルチャーのバルチャー組の抗争がおこっていた。

 

 ベトナム訓練兵リック・コーネルは、故郷のニュージャージーに帰って来たが定職につかず、ぶらぶらして賭博(とばく)場で博打(ばくち)を打っていた。

 ディーラーが山札からカードを出す、ダイヤの6。次々とチップが賭けられていく。

 ディーラーがさらに山札からカードを出す、スペードのキング。

 各プレーヤーが手札を見せ、嬉しそうに見せた男の手札は6のスリーカード。勝者だ。周囲がざわめく。

 リックも手札を見せる。手札はキングのスリーカード。

「おい! お前、何か袖に隠してるだろ!」

 組員に詰め寄られ、リックは驚いた様子。

「袖って…何も隠してないよ…」

「いいから! 調べさせてもらうよ」

 なおも組員がリックの袖をまさぐると、パラリと配ったカードが出てきた。イカサマだ。

「…てめぇ…なめやがって」

 怒りをあらわにした組員達がリックを取り囲む。おどおどしながらリックも言い返す。

「それが配られたものだって証拠はあるんか? 勝ったんだから、因縁つけずに俺の勝ちにしなよ!」

 隙を見て逃げようとしたが捕まってしまい、裏口へ連れていかれて顔を殴られ腹を蹴られボコボコにされた。

「カタギに免じてこれで許してやるが、今度ツラ見せやがったらただじゃおかねぇ…くそが!」

 持ち金を全部取られてしまった。動けないリックに「このクソガキが!」とさらに一発蹴りを入れて組員達は去って行った。

 しばらくしてようやく動けるようになり、ふと裏口の扉が少し開いているのに気づいた。覗くと誰もおらず、キッチンのようだ。痛む体を引きずって、流し台で血まみれの口をすすぐ。

「うう…くそっ…ううっ…」

 痛みと怒りと悔しさと……

 すると、流し台の横に包丁が置いてあった。

 リックは包丁を握りしめると、喧騒に包まれているポーカーのテーブルに向かう。さっきリックをボコボコにした組員達もいた。皆ゲームに気をとられて、リックには気づかないようだ。

「さぁ、座ってください」

 ディーラーが客達とゲームを始める。その瞬間

「どりゃあぁぁ!」

 リックは包丁を振りかざしてディーラーと組員達を切りつけた。店は阿鼻叫喚と化し、リックは組員と客の区別がつかないまま暴れた。すぐに警察に通報されて、逮捕。傷害罪で5年の懲役となった。

 

 刑務所でもリックの素行は悪く、事あるごとに囚人、看守と喧嘩になってしまっていた。

 丁度この頃、ヴィト・サリバン、ジョニー・ラッツォがフレッド・シナトラを中華街で殺害した罪で服役していた。

 ある時、リックは手枷をされたまま懲罰室に入れられてしまった。

「くそ…ぶっ殺す…ぶっ殺してやる……ぶっ殺してやる! うううっ…」

 ぶつぶつと恨み言を呟き続けるリック。そこへ看守の目を盗んで、ヴィトが皿を差し入れてきてくれた。

「おい、それでも食べて元気つけろ」

 皿には牛乳に浸したパンが乗せられていた。残飯だが何も食べられないよりずっとマシだ。

「すいません」

 皿に顔を突っ込むようにむさぼり食べた。

 1978年、リックは仮釈放された。

 

 リックは空腹に堪えきれず安食堂で食事をしていたが、実は無一文だった。食事が終わり女店主に声をかける。

「ねえさん」

 呼ばれた女店主は「はい?」と近寄ってきた。

「実は…金が無くて…ここで働かせてくれないかな」

 気まずさにボソボソとリックは頼みこんだ。しかし、忙しそうな女店主はリックの風体を見ると、小首をかしげた。

「うちは今人手が足りてるから、ほかの店に聞いてくださいな」

 さっさと去ろうとする女店主に、リックはあわててポケットから金の腕時計を出して渡した。

「ここで働いて返すから…金はもって無いけど、代わりにこれを預けるから」

 女店主は金の腕時計を即座にリックに返すと、

「何? こんなものにはお金をかけられるんですね。もういいから、出て行ってくださいな」

 話は終わりとテーブルを片付けだす女店主。リックはその腕をつかんで食い下がる。

「ちょっと! 俺は乞食じゃないよ」

「何? 無銭飲食しといて、因縁つけるの?」

 二人が言い争いになっているところに、チンピラ二人組がやってきた。

「なんや? かっちゃん、わしらに任しとき」

 チンピラに気づくと女店主はあわてて何でもないと手を振った。

「あんた達は出てこなくていいから!」

 チンピラの一人がリックに近寄ると睨みつける。

「このバカタレが! このねえさんはな、オックス組長の姪にあたる人じゃ!」

 そう言うと、見せしめとばかりに金の腕時計を外に投げて踏み壊してしまった。

「なにすんだ!」

 怒ったリックは飛びかかるが、角材で頭を殴られて倒れる。チンピラ二人組はリックを立たせると、廃材置き場に引きずって行く。そこにはいかにも武闘派の男が待っていた。男は出刃包丁で角材を切断すると、取り押さえられて逃げられないリックの顎に先端を突きつけた。

 黒のジャケット、赤いシャツ、カーキ色のズボンに黒ブーツ、サングラスに黒帽子の男。

「わしがバルチャー連合会のジェームズ・バルチャーや。文句あるんやったら、表出ぃ。相手しちゃる」

 ジェームズ・バルチャー。人呼んで[ニュージャージーの暴れ馬]と恐れられている男だった。学生の頃から日本の空手道を習っていて、これを使って暴れたこともある。

 リックは外に出され、角材でこれでもかと殴り飛ばされる。必死で逃げ回るうち、そこにあった角材を拾うとこれを振り回して応戦。しかし、後ろから部下に押さえつけられて、バルチャーの前に連れてこられた。

「このアホガキャ! おりゃっ! うおりゃ!」

 何度も何度も殴打する。リックは必死で振り落とされる角材から逃げ回り、ネズミのように車の下へ逃げこもうとする。だが足をつかまれ引きずり出され、またもや殴られ続ける。

「やめて! そのぐらいにして!」

 女店主が血相変えて走ってきた。

「やめてちょうだい! 相手はカタギの人なのよ、やめてちょうだい!」

 必死で止めるが、一度火がついたバルチャーは止まらない。

 リックは血まみれで女店主にかばわれながら、それでも毒づいた。

「殺せや! お前らの顔、忘れんからな。殺さんかったら、お前ら一人ずつぶっ殺してやるからな!」

「このクソガキャ!」

 バルチャーはブチギレ、女店主からリックを引き剥がすと、再び殴りつける。

「やめて! やめてー!」

 もう逃げる力もないリックは殴られるまま、蹴られるまま。

 このままでは本当に殺されてしまう。

「若! 止めや」

 ふいに部下がバルチャーを止めた。

「組長です」

「じっちゃん?」

 怒りの形相のままバルチャーが見ると、数人の男達を連れて老人がこちらへ走ってくる。

「ええい! くそじじい!」

 盛大に舌打ちすると「引き上げじゃ」と部下達を連れて逃げて行った。

 この老人は、バルチャーの祖父であるルフォーツ・BJ・バルチャーである。

「ジェームズ…馬鹿たれが…また不良達で愚連隊作りおって!」

 ボロボロになって倒れているリックに気づくと、部下に指示して女店主の家まで連れて行くことにした。この時、ルフォーツの横にいたのはバルチャーの腹心の部下のヘンチマン、後にバルチャー連合会2代目になるスタンだった。

 

 

 

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