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ふたご銀河の物語(改訂版)  作者: 日向 沙理阿
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ヘイダール伯爵の帰還 27

 リドス連邦王国の王城はプレセル大陸の山脈から転移させてきた竜で溢れ却っていた。

 それなのにどこからも文句は来ないのがヘイダール伯爵には不思議だった。

 彼の知っているリドス連邦王国の王女達はかなりうるさ型だった。

 しかし、その理由はすぐにわかった。

 王城に住んでいる王族達はみなどこかへ出かけていたからだ。

 彼女たちはいつも忙しくしている。





 最初に王城に戻って来たのはリドス連邦王国の女王だった。

 議会の休憩時間に戻って来たのだ。

 議会のある首都まで、王城の異変のことが伝わっていたようだ。

 それでも、惑星ガンダルフでのことなのでリドス連邦王国の宇宙艦隊が出動することはなかった。

 リドス連邦王国が宇宙艦隊を持っている事は国家機密なのだ。



 ふと気が付くと、王城の竜たちのいる場所の上空に、忽然と女王は現れた。

 女王には侍女も護衛の騎士も付いて来てはいなかった。

 議会に出る装束として、一応立派なドレスを着て女王のティアラを付けていたのでそれと分かったにすぎない。

 彼女は竜たちのいる真上に現れた。

 女王は惑星ガンダルフの五大魔法使いの一人ではないが、かなりの魔力を持っていることは公になっている。



「一体これは何事ですか?」



 さすがに女王も驚いたようだった。



「それに、レギオンとヘイダール伯爵がいるなんて珍しいこともあるものね」



 二人とも名を呼ばれるとリドスの女王の前に現れて、軽く会釈をした。

 竜たちを全部王城に転送したので、二人は山脈から戻って来ていた。

 二人はリドスの女王の臣下ではなく、古くからの友人だった。



「申し訳ありません。女王陛下……」

と、三人の傍に現れて呼びかけたのは最近リドスの女王の養子となった第十一王女アルネだった。



「あら、あなたまで……。まあいいわ。あの竜たちの話をしましょう。一体何が起きたと言うのかしら?」



 ヘイダール伯爵たちは一瞬で竜たちが良く見える王城の尖塔の一室に移動していた。

 四人がゆったりと座れるテーブルとイスがあり、もちろんテーブルにはお茶と菓子が置かれている。

 そして、部屋の中に窮屈そうに竜が一体いた。

 竜たちのリーダーだと名乗った竜である。

 さすがにその部屋は竜を寛がせるほどの余裕はなかった。



「二人とも久しぶりだから本当はゆっくり話がしたいところだけれど、どうもそんな時間はなさそうね」

「女王陛下、彼ら、つまり竜たちを移住させる場所をどこか知りませんか?」

「竜たちの居場所をガンダルフの人間に知られてしまったということかしら?」

「そうなのです」



 竜たちの住処はソラン公国だけではなく、おそらくプレセル大陸の連盟国家にも知られただろう。

 移住するにしても、他の者たちに知られない場所でなければなるまいとヘイダール伯爵でもわかる。

 そのような場所はアルネ・ユウキには思いつかないようだった。



「確か、ダルシア帝国のハガロンの大使だったコアが今ダルシアの母星に戻っているはずだわ」

「コア大使がダルシアに?向こうで何が起きているのですか?」

「向こうも今、中々難しいこと位なっているようだわ。コア大使は霊体になっているの」

「それは、コア大使が亡くなったと言うことですか?」

「そう。肉体を脱ぎ捨てて霊体になり、しばらくヘイダール要塞にいたのだけれど、今はダルシアの本星に戻っているのよ」



 コア大使が霊体になったと言うことがどういうことなのか、アルネ・ユウキはわかった。

 要するにダルシア人がいなくなったと言うことである。

 生きて肉体を持ったダルシア人はいなくなってしまったのだ。

 もっとも、霊体のダルシア人はまだダルシアの本星に他にたくさんいるはずだった。



「ガンダルフの竜たちをダルシア本国に戻すことはできるでしょうか?」

と、アルネ・ユウキは言った。


「それは彼らに聞いて見なければわからないわね。ちょうどそこにいるから聞いてみましょう」



 竜たちのリーダーはリドスの女王たちの話を興味深く聞いていた。



(ダルシア本国というのは、あの言い伝えにある我ら竜の祖先の星のことか?)

と、竜たちのリーダーはリドスの女王に聞いた。


(そうよ。但し、あなた方の祖先だった種族は滅んでしまったけれども……)

(滅んでも、彼らの霊はまだ多く住んでいるはずだ)

(だから、彼らにもあなた方が戻ることを許可するかどうか聞かなければならないし、あなた方の方もダルシア人の本国に住めるかどうか試さなければならないわ。ダルシアの本星はこのガンダルフとは大気の成分や重力が少々異なるから……)








 竜たちがダルシア本星から出てこのガンダルフに住むようになったのは何千万年も前になる。

 なかには億年前に本星を出た者たちもいるのだ。

 それほど昔からダルシア人は宇宙に出ていたとヘイダール伯爵は聞いている。

 ヘイダール自身の種族よりもかなり古くからだ。


 ふたご銀河ではダルシア人しか宇宙航行技術を持っていない時代が長かったこともある。

 従って、彼らが現在住んでいる惑星の環境に馴染んでしまって、ダルシアの本星に住めなくなっていることも充分考えられるのだった。



(むう。もうこのガンダルフには我々は住めないと言うことか……)

(竜がいることを人間たちが知れば、おそらくあなた方を捕獲して調査しようとするでしょう。それに竜がリドス連邦王国にいると分ると、竜を渡せと言ってくるに違いないわ)

(我々は人間よりも知恵も力もある。人間など、恐れはしない)

(それなら、今回も私たちに援助を請うためにやってきたりはしなかったのではないかしら?)

(それは……)



 確かに竜は知恵も力も人間よりもあるかもしれない。

 しかし、力に限ってはこれまでより人間の方が強くなってきているとヘイダール伯爵は感じた。

 その力は魔法ではなく、科学技術から作られたものだった。

 だからこそ、竜がリドスに援助を請うはめになったのだ。


 かつてのダルシア人ならば、魔法だけでなく科学技術においても人間種族よりも優れていた。

 けれども、今の彼らはかつてのダルシア人の知恵と力を失ってしまっている。

 それに今は繁殖期であるから、どうしても力を最大に発揮することができない。



(今すぐと言う訳にはいかないでしょうけれど、あなた自身がダルシアの本星に行って、どんなところか確かめてもいいのではないかしら。それまでは我々リドス連邦王国があなた方を守りましょう)

と、リドス連邦王国の女王は言った。



 少なくともこの惑星ガンダルフにおいては、魔法や科学技術の両方においてリドス連邦王国は抜きんでているとリドス連邦王国は自負していることをヘイダール伯爵は知っている。

 だから竜たちを守ることは難しくはない。

 但し、他の諸国はそのことをまだ知らなかった。


 他の諸国、特にプレセル大陸諸国にとってリドス連邦王国は多少の科学技術はあるが古い魔法を残している小国なのだった。

 宇宙技術が未発達なプレセル大陸諸国やソラン公国では魔法と機械や宇宙エネルギーを使った宇宙技術との区別はつかない。

 それでこれまでは宇宙技術であっても魔法だと言って概ね誤魔化すことができたのだ。



 もうそうしたことはできない時代に来つつあるのかもしれないと、リドスの女王は気が付いた。

 それがヘイダール伯爵にもわかった。




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