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ふたご銀河の物語(改訂版)  作者: 日向 沙理阿
15/72

ダルシア帝国の継承者 15

 リドス連邦王国のベルンハルト・バルザス提督は、昔惑星連盟が創設されてしばらくした頃、惑星ガンダルフの四大魔法使いがダルシア帝国の首都星、恒星アーローンの第五惑星を訪れた時の事を思い出していた。


 彼らはジル星団で長引くダルシア帝国やナンヴァル連邦とゼノン帝国との戦いを収めようと考えていた。戦いが続くと、いずれはガンダルフまでその影響が及ぶことが分かって居るからである。

 そこで、ガンダルフの魔法使いレギオンはダルシア帝国の皇帝ライアガルプスと会い、ゼノン帝国へ行って皇帝ディボルドヌ・ログヌⅨ世を連れて来た。



 ゼノン帝国は連れ去られた皇帝ディボルドヌ・ログヌⅨ世を取り戻すために、ダルシア帝国へ偵察艦を急行させた。



(陛下、ゼノン帝国の偵察艦がジャンプ・ゲートを使って国内に入ろうとしております)

と、マグナルカスが首を挙げて告げた。



 ダルシア帝国の国境を警備する艦隊からマグナルカスへTPで知らせてきたのだ。

 ジャンプ・ゲートを使うことは事前にジャンプ・ゲートを開く装置に通知する必要があるので、ダルシア側にはすぐにわかるのだった。

 ゼノン帝国がジャンプ・ゲートを使うことは初めてのことだった。

 偵察艦が来るという事はその後にゼノン帝国の艦隊がやって来るに違いなかった。



(ほう、中々速いではないか。しかもジャンプ・ゲートを使って来たのか……)

(どういたしましょうか)

(断りもせずに我が国土に入ろうとするならば、まずその艦隊を迎え撃たねばなるまい)

(しかし、その……)

と言いつつ、マグナルカスはガンダルフの魔法使いレギオンが連れて来たゼノン帝国皇帝ディボルドヌ・ログヌⅨ世を見た。


(あれは、ガンダルフの魔法使いが勝手に連れてきたのだ。我々に責任を問われても仕方あるまい。それよりも、こちらに断りもせずに我が領土を侵犯するのであれば、それを迎え撃つのは当然であろう)

(は。わかりました)



 マグナルカスは国境警備の艦隊にライアガルプスの命を伝えた。



(ふん。余の艦隊を攻撃するというのか?これまで艦隊戦で余の艦隊に勝ったことがあるのか?しかも我が国がジャンプ・ゲートを使えることがこれでわかっただろう)

と、ゼノンの皇帝ディボルドヌ・ログヌⅨ世は強気で言った。


(確かにジャンプ・ゲートを使えるとは思わなかった。それに艦の数ではお前たちにいつも負けている。だが、ここは我がダルシアだ。艦の数でも武装でも我が方に利があろう)

(な、何!)



 ライアガルプスはゼノン帝国がジャンプ・ゲートを使ったことをそれほど驚かなかった。

 いずれ彼らがジャンプ・ゲートを使えるようになることは推測できたからだ。


 塔の外では魔法使い達を取り巻いていた警備隊が一人を残して離れ、駐機している艦の方へ他の多くのダルシア人と共に急行していた。

 警報が鳴ったわけでもないのに、近くの塔の上からだけでなく遠くの塔からも、空を暗くするほどのドラゴンの大群がいつの間にか首都星の軍港に集まって来ていた。



(すごい数だ。こんな多くのドラゴン、いやダルシア人を見るなど初めてだ……)

と、魔法使いの一人が言った。


(何を言っているのだ。お前たちの所為で、ゼノン帝国艦隊がこの首都星に迫ってきているのだぞ!)

(でも、来たのはまだゼノンの偵察艦だけでしょう。それにダルシアの艦隊がゼノンの艦隊に負けるなんてあり得ないでしょう?)

(そ、そうだとも。だが、油断は禁物だ)

(確かに。それに近頃はゼノン帝国の艦の武装が強化されたと聞いている。その所為でダルシアとナンヴァルの艦隊が苦戦しているとも……)

(そうなのだ)

(でも、大丈夫です。我々がダルシアに合力しますから……)

と言うと、三人のガンダルフの魔法使いはその場から離れて首都星の衛星軌道上へと移動した。



 その際、警備のダルシア人も一緒に連れて行った。

 首都星の衛星軌道上にやってくると、まだゼノン帝国艦隊は姿を見せてはいなかった。



(これは一体……。どうして私はこんなところにいることができるのか?)

と、連れて来たダルシア人が言った。



 連れてこられた速度だけでなく、彼女の知識では大気のないこのような場所で宇宙服もなしに存在していることが不思議なのだった。



(魔法で結界を張ってあるので、大丈夫)

(こんな魔法があるのか……)



 そのダルシア人は驚きつつも興味がありそうだった。

 ガンダルフの魔法使い達が呪文を唱えるような事をしなかったことに彼女は更に興味を持ったのだ。



(おそらく、ダルシアの国境付近にゼノン艦隊の偵察艦がきているのでしょうね)

(では、ダルシアの艦隊の離陸を待って、彼らと共に移動しよう)

(レギオンにそのように伝えましょう)

と、惑星ガンダルフの魔法使い達は話をしていた。



 ダルシア帝国艦隊の動きは早く、魔法使い達が話をしている間にも離陸して首都星の衛星軌道上に一隻また一隻と上がって来ていた。

 首都星の軍港にあった艦が皆離陸すると、艦隊としての形を整えた。



(これより、ゼノン艦隊が来た国境へ移動せよ……)



 TPで全艦隊に命令が行き渡ると、艦隊はジャンプ・ゲートを使って国境へと移動した。

 ガンダルフの魔法使い達も同じく姿を消した。



 ダルシア帝国の艦隊とガンダルフの魔法使いはゼノン帝国偵察艦のいる国境付近の宇宙空間に現れた。

 そこには首都星から来た艦隊だけではなく、ダルシアの他の惑星からも応援の艦隊が同じように現れた。その数、三千隻にも達しようとしていた。

 突然現れたダルシアの艦隊にゼノン帝国の偵察艦は慌てふためいて、攻撃を仕掛けて来た。



(ゼノン艦を破壊せよ!)

と、ダルシア帝国艦隊の司令官の指令が発せられた。



 ゼノン帝国の偵察艦はダルシア帝国の艦の攻撃で瞬く間に沈黙した。

 それと時を同じくするように、ゼノンの偵察艦のいた後方にゼノン帝国艦隊が出現した。



(とうとうジャンプ・ゲートを使って来たようだね)

と、ガンダルフの魔法使いの一人が言った。



 これほど早く現れるということは、ゼノン帝国がダルシア帝国の設置したジャンプ・ゲートを使用してきた以外に考えられないからだ。


 後の時代になるとジル星団でジャンプ・ゲートは宇宙文明に至った者たちに常に開示される技術であったが、この時代にはまだそのようなことは行われていなかった。

 ジャンプ・ゲートの技術を使えるだけで、ゼノンに対するダルシアの技術的な優位は大きかったのだ。

 これまでゼノン帝国はダルシア帝国の使うジャンプ・ゲートを使用することはできなかった。彼らが普段使っているワープ航法よりも画期的に移動速度の速いとされるジャンプ・ゲートの技術と使用方法を知るために、あちこちに工作員を放っていることはダルシアでも周知の事実だった。



(とうとう奴らもジャンプ・ゲートを扱えるようになったのか……)

と、ガンダルフの魔法使いと一緒に来たダルシア人が言った。



 ダルシア人は最初偵察艦が来た時にそう言われていたのだが、自分の目で見るまでは信じられなかったのだ。


 ダルシア帝国本国にゼノン帝国の大艦隊が押し寄せて来る事を想像して魔法使いと一緒のダルシア人は沈黙した。

 ダルシアの更なる科学技術の開発は焦眉の急であると彼女は考えていた。だが、間に合うだろうかと不安を感じたのだ。



(そうだね。ダルシア帝国の全体の科学技術を考えればゼノン帝国はまだまだ追いついてはいないと思うよ。彼らはジャンプ・ゲートの技術を手にしたわけではない。彼らはジャンプ・ゲートを使う方法を手にしただけなんだ)

(だが、ジャンプ・ゲートを使えるということは我が国に来ることが容易くなるということだ)

(それなら、ジャンプ・ゲートを彼らには使えなくしてしまえばいいのではないかしら……)

(使えなくするだと?)

(ええ。せっかく設置したジャンプ・ゲートを破壊したり、除去したりするのはもったいないわ。だから、彼ら、つまりゼノン帝国だけは使えなくするのよ)

(しかし、そのような事が可能なのか?)

(もちろん。しかもそれがダルシア人のような強力なパワーを持つ念でしかできないとしたら、ゼノン帝国がそこまで追いつくのにはかなりの時間、つまり年数が必要になるのではないかしら……)

(要するに、お前たちにはそれが出来るというのだな)

(当然だわ。さてと、そこまで話が出来たのだから、これ以上のゼノン艦隊を入れないように、ダルシアに来るジャンプ・ゲートでゼノンが使っているものを彼らには使えなくしてしまいましょう)

と、ガンダルフの魔法使いはそれが簡単にできる事のように言った。



 ダルシア帝国が設置したジャンプ・ゲートは高次元の空間に、高速移動するワームホールを作る装置を移動させて固定化したものである。そのため、三次元宇宙空間ではその存在は見えないし触れない。

 従って特殊な探知装置を使って設置された場所を見つけ、高次元にある装置を発動させる必要があった。

 ゼノン帝国ではダルシア人が使う装置の存在とその使用方法を知ったのだった。そのため、もしダルシア人がその使用方法を変えれば使えなくなる。



(だが、しかし……)



 ダルシア人はジャンプ・ゲートをゼノン人だけには使えなくするという事を考えた事は無かった。

 そんなことをしたら、下手をすれば自分達も使えなくなるのではないかと不安に思ったのだ。



(あなた達ダルシア人がその方法を知らないとしても、可能なことだから心配しなくても大丈夫よ。あなた達には難しいことではないから。さあ、私たちのすることをよく見ていて……)

と言うと、ガンダルフの魔法使いは三人とも手を組んでゼノン帝国艦隊の前に立ちはだかった。


(何をするつもりなのだ……)



 すると、見たこともないほど大きな魔法陣が宇宙空間に広がった。



(これは、何をしたのだ?)

(ここの空間だけの時間を止めたの。それで、これから移動するわよ)



 次の瞬間三人の魔法使いとダルシア人の姿が消えた。

 彼らはジャンプ・ゲートを設置した場所へ移動したのだった。

 そこは三次元宇宙空間ではなく、それ以上の高次元の空間だった。



(ここにはあまり長くいることはできないから、急がないと……)

と言う、魔法使いの声がダルシア人には聞こえた。



 辺りは明るく眩しい光に満たされていた。

 それだけではなく、先ほどとは違って、遠くに見えるはずの恒星や銀河の放つ光などはどこにもなかった。

 ダルシア人は自分たちの周りに先ほどとは違う魔法陣が取り巻いているのに気づいた。



(この魔法陣は私たちを守っている結界の一つなの。ただし、悪い者から守っているのではないわ。ここは聖なる空間だから……)

(聖なる空間とはどんなところなのだ?こんなところにジャンプ・ゲートの装置が行っているのか)

(つまり、神、創造主に近い空間だということ。まだここは神の居られる空間ではないけれど、近いということ……)

(神に近い空間は暗くないのか、なぜこれほど明るいのか?どこに光源があるのだ?他に恒星や銀河などは見えないが……)

(この光はたぶん神、創造主の居られる次元から来ているのだと言われているけれど、私はまだそこまでは行ったことがないからわからないわ……)

(結界から出ないように、注意してくれ。本来ならまだ我々が来られる次元空間ではないのだから……)

(結界を出たらどうなるのだ?)

(さあ、わからないけれど、多分眩しくて身動きできないと思うわ。もしかしたら、消えてしまうかもしれないわ。そんなことより、ジャンプ・ゲートを作る装置を探して!)



 眩しい光の中目を凝らして探すと、遠くに丸い物体のようなものが見えた。

 それほど大きくはないのだが、この物体がジャンプ・ゲートの両端の高次元空間に設置されているのだ。そして、使用する時には一定の通信波長を送り、三次元空間から高次元空間にワーム・ホールを築くのである。



(あそこにあるのがそうだ)

(よし、急ごう!)



 彼らは装置に近づくと、装置を結界の中に取り込んだ。



(これはダルシア人が作ったものだから、あなたがやってくれないかしら……)

(しかし、この装置を制御するようなものは何もない。それなのにここでやるのか。それとも装置を止めればいいのか?)

(止めるのではなく、調整するのよ。あなた方ダルシア人だけは使えるようにね)


 ダルシア人が作ったジャンプ・ゲートを開いてワーム・ホールを築く装置は特定の波長の電磁波でコントロールするものだった。それは超空間通信で使われる波長だった。それもかなり高エネルギーかつ精妙な波長帯である。

 ゼノン帝国がジャンプ・ゲートの装置を使えなかったのは、その波長を作り出すことができなかったからでもある。



(これだけ精密でエネルギーの高い波長になると、私では出すことが難しい。そもそもそれは我々の艦にある装置で出すものだ。いくらダルシア人でも思いだけでこの装置を調整するようなことをした事例を私は知らない)

(そんなことはないわ。これだけ高い波長の電磁波は、電磁波と言うよりも思念波なのよ。それも非常に高い次元の思念波の波長になるの)

(それは、私でも出せるものなのか?)

(もちろん、あなたなら充分できるはずよ)

(何しろ、この次元は非常に高い次元だ。ここではこのような装置を思念で作り出す事も可能な空間なのだ)

(何を言っているのだ。この装置は我々が作った物質だ。思念で作り出したものではない)

(だが、この高次元宇宙ではここの条件に左右される。この次元に存在するということがここの条件に合うようにすでに調整されてしまっていることになるんだ)

(誰がそんなことをするのだ)

(この空間を作った存在だよ。もしかしたら神か、それとも神近いものかわからないけれどね)

(しかし、どうすればいいのかわからない)

(そうね、じゃ、こうしたらどうかしら。この装置はダルシア帝国に入るジャンプ・ゲートを開けて繋ぐものだから、ダルシア人以外の者がジャンプ・ゲートを開けられないように設定するの)

(いや、だから、それをどうやってやるのだ?)

(そうね、あなたは私たちと違って魔法使いではないから、あなたがそう思えばいいと思うわ)

(思えばいいだって?そんなことでいいのか)

(ここはそういう次元なの。思えば実現すると言う次元の空間なの……)

(……)



 ダルシア人は二の句が継げなかった。そんなことが可能なはずがないではないかと思ったのだ。

 普段ダルシア人がジャンプ・ゲートを操作する時には艦にある装置を通じて行うものだ。それなのに思念を向けて同じことをしろと言うのだ。

 それはもう魔法を使うようなものではないかと彼女は思った。


 ダルシア人は他の種族の魔法使いのように魔法の呪文は使わない。いや、呪文を知らないから使わないのだ。

 ただ、魔法の発動については多少の知識は持って居た。


 そもそも魔法と言うものは、億年の昔、惑星ガンダルフの『去って行った人々』がいた時代に彼らから伝えられたものなのだ。ダルシアの歴史にはそう記されている。

 それから長い年月が過ぎたが、ダルシア帝国では魔法と言うものはあまり使われなかった。すでに宇宙文明に至っていたダルシアではあまりその必要性を感じなかったこともある。


 しかし、他の種族ではその魔法が重宝されて、発達していることをダルシア人は良く知っていた。

 中でもゼノン帝国ではその発達は著しく、宇宙文明の技術と同様に重要視されていた。

 けれどもゼノン帝国の魔法や魔術は残念ながらダルシア人にはあまり通用しなかった。それだけダルシア人自身が頑強で他の追随を許さないほどなのだ。

 そのためゼノン帝国ではアルフ族が持ってきたと言われる闇の魔法である魔術が盛んになったとも言われている。


 魔法と言うのは、思い、すなわち強い『念』を発して現象化させることであるとダルシア人は学んでいる。

 ダルシア人は他の種族に比べてその『念』が強いと言われていた。

 その強い『念』を使って例えば艦の装甲を強力なダルシアン鋼に変えるようなことがダルシア人にはできた。つまり、『念』を使って原子や元素の中にある極小の素粒子である電子やクォークの配置を変えたりすることで物質を変化させるのだ。

 もちろん、すべてのダルシア人に可能なことではないが、物質を変化させたりする専門の技術者はいた。もっとも、ダルシア人は彼らを魔法使いとは呼ばないが。


 とは言え、今ガンダルフの魔法使いと一緒にいるダルシア人はそうしたことに堪能とは言えないことを知っていた。



(あなたが信じられないとしても、ともかく思って見て。思うだけなら難しくはないでしょう)



 バカバカしいと思いながら、ダルシア人は言われた通りやってみることにした。確かに思うだけならそれほど難しくはない。



(我々ダルシア人が使うときだけ開くようにする、か……)

と、ダルシア人はそんなことで本当にうまく行くのだろうかと不安を感じながら強く念じてみた。



 けれども装置は特に変化したようには見えなかった。



(これでいいのか、何も変わっていないのではないか?)

(すぐにわかると思う。ゼノン帝国が先ほどの艦隊だけではなく、もっと多くの艦隊を送るつもりのようだから……)

(なるほど、あれ以上艦隊が来なかったら成功したということか。だが、この装置が使えなくなったとしたら、それがゼノンにわかるまでジャンプ・ゲートに入った艦隊はどうなるのだ?)

(さあ、それはわからない)

(それよりも、早く戻りましょう。私たちの結界ももう限界に来ているわ)



 魔法使い達の周囲の結界がところどころ色彩が変化していた。

 おそらく、結界が弱まっている場所に色彩の変化が起きているのだと思われた。


 辺りが急に暗くなり、遠くに星が明滅しているのが見えた。

 三人の魔法使いとダルシア人は三次元空間に戻って来たのだった。






 恒星アーローンの第五惑星、ダルシア帝国の首都星にいたダルシアの皇帝ライアガルプスは首を擡げた。



(魔法使い達が戻って来たようだ)

(彼らは一体どこへ行って来たのでしょうか)

と、マグナルカスは言った。



 マグナルカスは外の三人のガンダルフの魔法使いの動向には注意をしていたのだ。

 彼らは敵ではないとしても、味方とも思えなかったからである。

 彼らが首都星の衛星軌道上に行ったところまでは追いかけて行けたが、そこから先は彼女の探索範囲を超えていたのでわからなかった。



(あの連中はジャンプ・ゲートの装置を調整しに行ったのだ)

と、レギオンが言った。


(ジャンプ・ゲートの装置を調整するだと、それはどういうことだ)

(我々にはゼノン帝国がジャンプ・ゲートの装置を使えるようになったと言う情報があったのだ)

(まさか、そんなことが……)

(実際、ゼノンはジャンプ・ゲートを使って艦隊を送って来たではないか)

(そうすると、これからゼノンの大艦隊が来るというのか?)

(だから、ジャンプ・ゲートの装置を調整しに行ったのだ。これで、ゼノン帝国がダルシアに艦隊を送ってくることはできないだろう)

(しかし、……)



 マグナルカスはガンダルフの魔法使いたちがジャンプ・ゲートの装置について知っていることを驚いていた。

 ガンダルフは魔法使いの星であり、科学技術の発達はほんの幼稚な段階でしかないのだ。事実宇宙船どころか、惑星ガンダルフの海では帆船しか使われていない。

 そんな彼らになぜジャンプ・ゲートやそれを使用する為の装置のことがわかるのだろうか。



(科学技術によって装置を作ってジャンプ・ゲートを生じさせる知識は我らにはない。だが、我々が宇宙を渡る方法はそのジャンプ・ゲートを使う方法と似たようなものなのだ。装置を作れなくても、それを使う理論は知っているということだ)

(そのようなことは初めて聞く)

(ふん。お前たちは我々のことなど見下しているからな。だが、その科学技術とやらが全てではないのだ)

と、レギオンは言った。





 ダルシア帝国の辺境に侵入したゼノン帝国の艦隊は、ダルシア帝国の艦隊によって壊滅していた。

 なぜなら、最初に侵入した以上の艦艇がやってこなかったからである。



(どうやら、あの装置の調整はうまく行ったようだな……)

(なるほど、私はお前たちの事を大分見くびっていたようだ)

(私たちの事を見直してくれたなら、重畳だわ)



 魔法使い達とダルシア人はダルシア帝国の首都星まで戻って来た。



(それではこれで、私たちは帰る事にするわね)

(待て、待ってくれ。せめて、お前たちの名前くらいは教えて欲しいものだ)

(あら、ダルシア人にしては珍しいわね。人間族に名を聞くなんて……)

(私は別に人間族を見下しているわけではない。ダルシア人も色々いるのだ)

(ふうん。まあいいわ。私は『緑の魔女』と呼ばれているの。これは通称だけれど、生まれ変わると名前は変わってしまうから通称の方がいいと思うから……)

と言って、『緑の魔女』と名乗った魔法使いは被っている灰色のローブを取って言った。



 『緑の魔女』は人間族にしてはかなり年齢を重ねている女性に見えた。皺だらけの顔を見せたが、目だけは生き生きとしていた。



(そうだな。私は『銀の月』と呼ばれている)

と言うと、二人目の魔法使いが同じく灰色のローブを頭から払って言った。



 『銀の月』も『緑の魔女』と同じくかなり年取っていたが、その容貌は若い頃の美貌を想像させるものだった。

 そう思ったのは、そのダルシア人が他の者と違って「美」と言うものに多少興味を持って居たからだった。

 彼女は人間族に興味を持って居て、そうした違いに詳しかったのだ。少なくともダルシア人同士では美貌などと言う評価や判定はしない。



(私は、『塔の長』と呼ばれている)

と、最後の一人も灰色のローブを頭から取って言った。



 『塔の長』と名乗った魔法使いは長い白い髭を携えて居た。



(それで、あなたは何と言うの?)

(私はサラムアルダスと言う……)

(次のダルシア皇帝になるサラムアルダスね)

(どうしてそれを知っている)

と、彼女は驚いた。



 そんなことは同盟国のナンヴァル連邦ですら知らない情報だ。まさかガンダルフの魔法使いがそんなことまで知っているとは思わなかったのだ。



(ダルシアのことなら大抵の事を知っているわ。それじゃ……)

(待て、まだ話がある)

(どんな話があるの?)

(私はもっとお前たちの事を知りたいのだ)

(でも、それは多分、あなたが皇帝になる前に今のライアガルプス陛下に教えてもらえると思うわ)

(だが、それでも現在のガンダルフのことではあるまい。古代の、大昔のガンダルフのことだろう)

(それは魔法と言うものに興味を持ったということかな)

(そうだ。魔法であのようなことができるとは思わなかった。私はゼノン帝国の魔術師の魔法しか知らないのだ)

(ゼノン帝国の魔術師の魔法は外道に落ちているというべきだ。あそこには正当な魔法使いはほとんどいなくなってしまった……)

(それはどういうことなのだ?)

と、ダルシア人のサラムアルダスは聞いた。


(魔法と言っても、正邪があると言うこと。その違いがゼノン帝国は分かって居ないのよ。もちろんあなた方もね。ああ、でもダルシアの皇帝陛下は知っているかもしれないわ…)

(魔法に正邪がある?どういうことなのだ)

(今ここでその話はできないわ。長くなるから。だから、一度ライアガルプス陛下に聞いてみることをお勧めするわ。何か知っているかもしれないから……)

と、『緑の魔女』は言った。



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