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寿命365日の最弱ウミウシに転生した元プロゲーマー〜今度こそ世界一位をハメ殺す〜  作者: 神城ラグ
『第一章:プロの戦術論、群れのリーダーへの冷徹なる捕食(ざまぁ)』
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第九話 上層からのハイエナ

ハリセンウオを喰らい尽くした後。

 海底神殿には、不気味な静寂だけが残っていた。

 紫色の毒が漂う海。

 崩れた岩壁。


 そして。

 エリアボスを失ったことで生まれた、“空白”。

 ノアはゆっくりと海中を泳ぐ。

 脳内では、新しいスキル構成が整理されていた。

 ==========


《フレーム・アナライザー》

[戦術解析・行動予測]


《ハイドロ・ダッシュ》

[超加速移動]


《水流演算》

[水圧・空間把握]


《確定反撃・針地獄フレーム・リフレクト

[ジャストカウンター/衝撃蓄積/全方位毒針反射]


隠密毒素ヴィーナス・ヴェノム

[透明化/毒素生成/毒針射出]


 ==========

 そして。

 その下に並ぶ、空白。

 【空きスキル枠:5】

 ノアは思わず笑った。

「……マジで別ゲーだな」

 これまでとは違う。

 今までは常に容量不足だった。

 何かを積めば、何かを捨てる。

 最適化。

 圧縮。

 取捨選択。


 だが今は違う。

「ジャスガの弱点だった射程不足も消えた」

 軽く尾を揺らす。

「しかもまだ半分空いてるとか、完全に実験場じゃねぇか」


 スキル構築。

 シナジー。

 コンボ。

 理論上だけ考えていたハメ構成。

 全部試せる。

 ノアの口元が歪む。

 完全に、ゲーマーの顔だった。


 その時。

 ピクリ、と水流が揺れた。

《水流演算》反応。

 上層。

 約五十メートル上。

 複数高速接近反応。

 一直線。

 しかも迷いがない。

 ノアの目が細くなる。


「……来たか」

 海水が荒れる。

 次の瞬間。

 複数の影が、海中を切り裂きながら急降下してきた。

 群れ。

 ウミウシ系モンスター。

 その中心。

 一際巨大な個体を見た瞬間。

 ノアは静かに笑った。


「へぇ」

 紫色の外殻。

 無数の棘。

 肥大化した身体。

 そして、部下を従えた隊列。

 《ムカデミノ・キング(Lv25)》。


 かつて。

 レベル1だったノアを、一方的な数の暴力で殺しかけた群れのリーダー。


 だが。

 今のノアに、あの時の焦りはない。

 むしろ冷静だった。

「なるほど」

 《フレーム・アナライザー》起動。

 周囲の流れ。

 侵入ルート。

 移動速度。

 全部が脳内で繋がる。


「エリアボスのテリトリー判定が消えた瞬間に降りてきたか」

 ハリセンウオが消えたことで、この深層は空白地帯になった。

 そこへ上層の群れが雪崩れ込む。

 自然なハイエナ行動。


 そして。

 こいつらはボス討伐直後の“消耗した獲物”を狙っている。

 ノアは笑う。

「わざわざ五十メートル上から、自分で実験台になりに来るとはな」

 視線が鋭くなる。

「今日の俺、ドロップ運良すぎるだろ」


 その瞬間。

 キングがノアへ気づいた。

 一拍遅れて、目を見開く。

 驚愕。

 理解不能。

 当然だった。

 目の前にいるのは、以前なら群れ全体で蹂躙できたはずの雑魚。


 だが今のノアからは、明らかに異質な圧が漏れていた。

 キングが叫ぶ。

『囲めェ!!』

 部下たちが一斉に散開した。

 ノアの脳内に、即座に陣形情報が展開される。

「……ロール分担型か」


 前衛。

 大型の進化済み個体。

 肉厚の外殻。

 完全防御特化。

「盾役」


 左右後方。

 細長い進化個体。

 口腔内で高圧水流を圧縮。

「砲台役」


 そして。

 最後尾。

 安全圏で指示だけを飛ばすキング。

 ノアは呆れたように鼻で笑った。


「相変わらずだな」

 軽く首を傾ける。

「部下を盾と砲台にして、自分は一番後ろか」

 その声音には、完全な軽蔑が混じっていた。

「徹底したクソハメ戦術。嫌いじゃない」


 直後。

 左右の砲台役が口を開く。

 圧縮水流。

 高密度弾。

 連続射出。

 ズガガガガガガッ!!

 海中を裂きながら、弾幕がノアへ襲いかかる。


 かつて。

 レベル1のノアを絶望させた連携。

 避けた先に次弾。

 止まれば削り。

 近づけば盾で止める。

 初心者狩り専用みたいな陣形。


 だが。

 今のノアは動じない。

「遅い」

《隠密毒素》発動。

 ノアの姿が、一瞬で海水へ溶けた。

 ターゲットロスト。

 砲撃が空を切る。


 さらに。

《フレーム・アナライザー》が弾道を解析。

《ハイドロ・ダッシュ》起動。

 ノアの身体が、一瞬で加速した。

 弾幕の隙間。

 数フレームしか存在しない安全地帯。

 そこを縫う。


 そして。

 一瞬で前衛へ到達。

 盾役の懐。

 完全接近。

 進化済みウミウシがビクリと震えた。

 キングが叫ぶ。


『止めろォ!!』

 だが遅い。

 ノアは静かに笑っていた。

「お前らが進化させてまで用意してくれた特級パーツだ」

 盾役が慌てて防御姿勢を取る。

 ノアは牙を見せた。


「――まずはそこの『盾』から」


 海底に、冷たい殺気が満ちる。

「美味しく分捕らせてもらうぜ」

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