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寿命365日の最弱ウミウシに転生した元プロゲーマー〜今度こそ世界一位をハメ殺す〜  作者: 神城ラグ
『第一章:プロの戦術論、群れのリーダーへの冷徹なる捕食(ざまぁ)』
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第五話 置き技

カクレウツボを処理し、水深150メートルを突破した道中。

 俺は目の前を泳いでいた、岩石のような外殻を持つ鈍重な貝を《ハイドロ・ダッシュ》からの確定反撃で一方的にハメ殺した。


【対象の捕食を確認。経験値を取得】

【新規スキル《凝縮硬化ぎゅしゅくこうか》を獲得しました】

「《遊泳補助》をデリート。空いた枠へ、今拾った《凝縮硬化》をセット」


 RTAにおいて、死にスキルを抱え続ける奴は三流だ。

 必要なものだけを残す。

 環境ごとにビルドを変える。

 それが最速攻略。


 水深200メートル。

 ついに、光が完全に消えた。

 上を見上げても、青はない。

 あるのは、どこまでも続く黒。


 深海入口――《トワイライトゾーン》。

【環境変化を確認】

【視界補正が大幅に低下しています】

【《感覚毛》《フレーム・アナライザー》による補助を推奨】


「……なるほど。ここからが本番か」

 ノアは静かに周囲を見渡した。

 視覚はほぼ死んでいる。

 だが、その代わり。

 ゼラチン質の身体から伸びた感覚毛が、水流の揺れを拾っていた。

 海水の震え。

 微細な流れ。

 遠くで何かが動く気配。

 以前なら完全な暗闇だった世界が、今は“輪郭だけ”見える。


「《水流演算》との相性も悪くないな」

 ウツボ戦で得た新スキル。

 海流の変化を演算し、動きを読む補助スキル。

 それを《フレーム・アナライザー》と並列処理する。

 脳内へ、立体的な水中マップが構築されていく。


「よし。索敵効率は悪くない」

 ノアは《ハイドロ・ダッシュ》でさらに潜行した。

 220メートル。

 230。

 250。


 その時。

 感覚毛が“異常な水圧”を検知した。

 ノアは即座に岩陰へ潜り込む。


 次の瞬間。

 ズガァァァァッッ!!

 凄まじい衝撃が海中を揺らした。

 岩肌に大量の穴が穿たれる。

 まるで散弾銃。

 いや、それ以上。

 ノアは静かに視線を向ける。


【種族:ハリセンウオ(ボス個体)】

【Lv30】

【脅威度:A】


 巨大だった。

 通常個体の数倍はある膨れ上がった身体。

 全身の棘が、まるで砲台のように逆立っている。


 そして。

 《フレーム・アナライザー》が、奴の攻撃パターンを解析する。


【行動解析開始】

【全身トゲ射出攻撃】

【発生:15フレーム】

【判定:全方位】

【推定ダメージ:致死級】

【回避難易度:極大】


「……なるほどな」

 ノアの口元が歪む。

「まともに近づけば100%相打ちか即死の無理ゲーってわけか」

 棘の射出速度。

 範囲。

 密度。

 どれも異常。

 しかも全方位。

 回避しても、別角度の棘が刺さる。

 単純な機動力だけでは突破できない。


「つまり必要なのは、“受け流し”だ」

 攻撃を避けるんじゃない。

 利用する。

 反転させる。

 当て身。

 カウンター。

 このボスは遠距離制圧型。


 なら必要なのは、

「“カウンターの強化パーツ”だな」

 ノアは即座に思考を切り替えた。

 ボス戦は後回し。

 まずは攻略パーツ集め。

 RTAで無理ボスへ突っ込むのは二流。

 必要な装備だけ回収し、最短で殺す。


「さて」

 ノアは周囲の索敵を開始する。

 欲しいのは、

 広範囲攻撃。

 設置型。

 継続判定。

 あるいは毒。


 “相手の攻撃を利用できるスキル”。

 その時だった。

 《感覚毛》が異様な静寂を捉える。

 水流が、不自然に止まっている。


 ノアはゆっくり視線を向けた。

 暗闇。

 何もいない。


 だが。

 《フレーム・アナライザー》だけが、その空間へ赤い警告を出していた。


【危険】

【透明対象を検知】

【種族:ヴィーナスノヒモ】

【Lv18】

【脅威度:B】


「クラゲ系か」

 次の瞬間。

 ぞわり、と周囲へ無数の触手が広がった。

 透明。

 細い。

 視認不可能。

 だが触れた岩が、一瞬で紫色に変色して崩れ落ちる。


【猛毒判定を確認】

【接触時、生存確率:3%未満】


「……即死毒かよ」

 普通なら近づいた時点で終わり。

 だが。

 ノアの視界には、その透明触手の“隙間”が見えていた。

 触手と触手の間。

 判定が切れるフレーム。

 安全地帯。

 格ゲーでいう“置き技”。

 相手の行動範囲を制圧する、設置型のクソ技。

 だが。

 ノアはその手の攻略を、前世で何千回もやってきた。


 むしろ。

 得意分野だ。

 口元が自然に吊り上がる。

「攻撃判定の置き去りか」


 《ハイドロ・ダッシュ》を起動。

 ゼラチン質の身体がゆっくり沈み込む。

「いい度胸じゃん」


 Lv4。

 相手はLv18。

 普通なら逃げるレベル差。


 だがノアの瞳には、もう“攻略ルート”しか映っていなかった。

「……よし」

 海流を蹴る。


「お前から、“カウンターの土台”を分捕る」

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