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寿命365日の最弱ウミウシに転生した元プロゲーマー〜今度こそ世界一位をハメ殺す〜  作者: 神城ラグ
『第一章:プロの戦術論、群れのリーダーへの冷徹なる捕食(ざまぁ)』
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第四話 最速ビルド

モンハナシャコを捕食し、レベル20に達した俺の前に、3つの進化ルートが提示されていた。


1.【ミノウミウシ(浅瀬用・攻撃特化型)】

2.【イボウミウシ(中層用・防御特化型)】

3.【オオクラゲウミウシ(深海用・適正特化型)】


 普通の生物なら、1か2を選ぶだろう。


 ミノウミウシは攻撃補正が高い。

 イボウミウシは耐久値が優秀。

 どちらも、この浅瀬で生きるなら正解だ。


 だが。

 俺の視線は最初から3番目に固定されていた。


【オオクラゲウミウシ特性】

・水圧耐性(中)

・浮力調整

・感覚毛(微弱振動感知)


「見た目なんてどうでもいい」

 半透明のゼラチン質。

 ぶよぶよした不気味な肉体。

 お世辞にも強そうには見えない。


 だが、そんなことは関係ない。

「深海(ステージ2)へ行くための適正ステータスはこれ一択だ」

 俺は迷わず選択する。


【条件達成】

【個体名『ノア』の第2進化を開始します】

【『トゲウミウシ』から『オオクラゲウミウシ』へ移行しました】


 ぐにゃり、と肉体が歪む。

 トゲだらけだった皮膚が溶けるように崩れ、半透明のゼラチン質へ変貌していく。

 身体の内部へ大量の海水が循環する感覚。

 浮力。

 水流。

 圧力。


 その全てへの“適応”。

 そして次の瞬間。

 今まで身体を押し潰していた水深82メートルの圧力が、嘘みたいに消えた。


「……へえ」

 痛みがない。

 苦しさもない。

 ただ、海と一体化したような感覚だけがあった。


「よし。環境適正はクリア」

 俺は新しい身体を試すように動かしてみる。

 ペタペタと海底を這っていた頃とは違う。

 ぶよぶよした肉体を収縮させ、水流を押し出す。


 その瞬間。


【スキル《浮力調整》の応用を検知】

【移動スキル《ハイドロ・ダッシュ》が生成されました】

【スキル枠へ登録します】


 口元が歪む。

「いいね」

 身体を傾ける。

 次の瞬間。

 世界が吹き飛んだ。


 ドンッ!!

 海流を蹴った俺の身体が、弾丸みたいな速度で加速する。

 景色が流れる。

 岩場が後方へ消える。

 ただ這うしかなかった最弱生物の面影は、もうどこにもない。


「これなら最低限の機動力は確保できるな」

 そのまま一気に潜行。

 水深100メートル。

 120。

 150。

 光が徐々に消えていく。

 海が青から黒へ変わり始めた。


【進化完了:『オオクラゲウミウシ』へ移行しました】

【個体名『ノア』のレベルがリセットされます:Lv20 → Lv1】

【現在のレベル上限カンストが拡張されました:次回上限『Lv30』】


「……なるほどな」

 視界のログを見ながら、俺は静かに理解する。

 レベルが消えていた。

 だが違和感はない。

 むしろ感覚として分かる。

 今まで蓄積していた“栄養”が、新しい肉体へ丸ごと使われたのだ。


「経験値ってのは、ただの数字じゃない」

 進化用エネルギー。

 だから進化すれば空になる。

「理にかなってる」

 さらにログが追加される。


【次回小進化可能レベル:Lv30】

【次回種族進化可能レベル:Lv40】


「つまり、20の報酬はもう回収済みってことか」

 普通の生物は、一生に一度の進化を極限まで温存する。


 だが俺は違う。

 レベルを“貯める”んじゃない。

 即変換する。

 RTAでリソースを抱え込む奴は遅い。


「この仕様ならなおさら、進化は最速で切った方が強い」

 その時。

 《フレーム・アナライザー》が、暗闇の中の異常な動きを捉えた。


【種族:カクレウツボ】

【Lv15】

【脅威度:C】


 岩陰。

 細長い身体がゆらゆら揺れている。

 だが妙だった。

「……発生モーションが見えない?」


 いや。

 違う。

 隠している。

 岩陰を利用して、攻撃前の予備動作を完全に潰しているのだ。


 格ゲーでいう“見えない中段”。

 初見殺しのクソ技。

 俺の口元が歪む。


「いいね。そういうの好きだ」

 レベル1の今、まともに食らえば即死。


 だが。

 俺はあえて間合いへ踏み込んだ。

 岩陰が揺れる。

 来る。


 だが、俺はウツボ本体を見ていなかった。

 見ているのは“海水”。

 突進の瞬間、水流は必ず乱れる。


 その極小の変化を、《フレーム・アナライザー》が演算する。

 5。

 4。

 3。


「――今」

 シュゴォォォッ!!

 闇を裂いて牙が飛び出す。


 俺は《ハイドロ・ダッシュ》を入力。

 身体を斜め前へ滑らせた。

 紙一重。

 完全回避。

 ウツボの牙が空を噛む。


「確定スカり」

 突進後。

 長い身体には巨大な硬直が発生する。

 俺は即座に側面へ潜り込んだ。


「もらった」

 深く噛みつく。


【『カクレウツボ』の捕食を確認しました】

【戦闘評価:高】

【Lv1 → Lv4】

【スキル《水流演算》を獲得しました】


「……渋いな」

 格上。

 ノーダメージ。

 完璧攻略。

 それでも3レベル。

 つまりこの世界は、“作業狩り”を許していない。

 簡単に倒せる雑魚からは経験値がほとんど出ない。

 常に格上を攻略し続けろ。

 そういう設計。


 だが。

 俺は少し笑った。

「最高じゃん」

 簡単なゲームほど、すぐ飽きる。

 理不尽だからこそ攻略しがいがある。


 俺は《水流演算》を空き枠へセットし、さらに深い闇を見下ろした。

 漆黒。

 未知。

 危険。

 だがその先にあるのは、“攻略不能”じゃない。

 ただの未解析ステージだ。


「さて」


 ゼラチン質の身体が水流を掴む。


「次はどんなクソ技持ちが出てくる?」

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