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寿命365日の最弱ウミウシに転生した元プロゲーマー〜今度こそ世界一位をハメ殺す〜  作者: 神城ラグ
『第二章:深海エリアへの進出と強敵との遭遇、ライバルとの実力差の測定』
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第二十三話 感知圏

深海に青白い軌跡が走る。

 深淵鮫。

 レベル68。

 海の頂点に立つ捕食者。


 そして。

 未来フレーム予測を初めて狂わせた敵。

 ノアは距離を取ったまま静かに観察していた。

 攻撃しない。

 逃げない。

 ただ見る。


 攻略の第一歩は情報収集だ。

 それだけは前世から変わらない。

 深淵鮫がゆっくりと旋回する。

 巨大な身体。

 傷だらけの皮膚。

 長い尾。


 そして。

 鼻先付近に並ぶ無数の小さな孔。

「……ん?」

 違和感があった。

 どこかで見たことがある。

 そんな感覚。

 ノアは記憶を探る。

 前世。

 暇潰しに遊んだゲーム。

 生物を進化させるタイプのやつだった。


 確か。

 サメ系統の説明文に――

「名前なんだっけな」

 思い出せない。


 だが。

 特徴だけは覚えている。

 深海でも獲物を見つける。

 視界がなくても捕食できる。

 そんな能力だったはずだ。


 その瞬間。

 深淵鮫が動く。

 未来フレーム予測が紫色の線を描いた。

 左回避。

 成功率九十四パーセント。

 ノアは即座に動く。


 だが。

 ドゴォォォォォォォォン!!

 牙が直撃した。

 紫色の外殻が砕ける。

 海中へ破片が飛び散った。

「やっぱりだ」

 吹き飛ばされながらも。

 ノアは笑った。

 見えてきた。

 こいつは未来を見ているわけじゃない。


 だが。

 結果として同じことをしている。

 深淵鮫は追撃しない。

 ゆっくりと距離を取る。

 獲物を観察するように。

 ノアは思考を回した。

 なぜ当たる。

 なぜ読まれる。

 何を見ている。

 視界か。

 匂いか。

 振動か。


 違う。

 どれも違う。

 もし振動なら。

 《亜音速航行》で距離を取った時に反応が遅れるはずだ。

 もし視界なら。

 この暗闇で正確に追えるはずがない。


 なら。

「もっと別の何かか」

 深淵鮫が再び突撃する。

 海流が裂ける。

 ノアは動かない。


 あえて。

 最後まで。

 ギリギリまで。


 そして。

 直前。

 右へ回避する。

 その瞬間だった。

 深淵鮫も軌道を変えた。


 まるで。

 ノアが右へ動くと分かっていたかのように。

「……確定だな」

 ノアの瞳が細くなる。

 読んでいる。

 行動を。


 いや。

 もっと手前。

 行動を決めた瞬間を。


 そして。

 そこでようやく思い出した。

「あー」

 前世の記憶。

 生物ゲーム。

 サメの進化ツリー。

 説明文。


「ロレンチーニ器官だったか?」

 確かそんな名前だった。

 うろ覚えだ。

 だが能力は覚えている。

 微弱な電気を感知する器官。

 神経。

 筋肉。

 生物が動く時に発生する電気信号。

 それを読み取る。

 そんな説明だったはずだ。


 ノアは自分の仮説を口にする。

「つまり」

「俺が動こうとした瞬間の神経信号を読んでるのか」

 だったら説明がつく。

 未来フレーム予測は正しい。

 予測自体は外れていない。


 だが。

 ノアが回避を選択する。

 神経が動く。

 電気信号が流れる。

 深淵鮫が察知する。

 軌道修正する。


 結果。

 予測線が外れたように見える。

「生態によるメタかよ」

 思わず笑った。

 強い。

 実に強い。


 だが。

 無敵ではない。

 攻略法はある。

 深淵鮫が再び迫る。


 だが今度は違う。

 ノアはわざと進路を変えた。

 左。

 右。

 上。

 下。

 無意味な挙動。

 無意味なフェイント。

 意味不明な入力。

 格闘ゲームで初心者がやるような動き。


 その瞬間。

 深淵鮫の軌道がわずかに乱れた。

「やっぱりな」

 感知できることと。

 処理できることは別だ。

 情報量が増えれば判断は遅れる。

 ロレンチーニ器官も万能じゃない。


 なら。

 勝ち筋はある。

 未来フレーム予測が再び展開された。

 紫色の線が収束する。


 回避ルート。

 攻撃ルート。

 撃破ルート。


 そして。

 一本だけ。

 今まで存在しなかった線が現れた。


【攻略可能性を算出】

【成功率:28%】


 ノアの口元が歪む。

「十分だ」

 二十八パーセント。

 低い。


 だが。

 ゼロじゃない。

 攻略において。

 それは勝利宣言と同じだった。

 深淵鮫が咆哮する。

 海流が荒れる。

 巨大な牙が迫る。


 対するノアは加速した。

 ネオン紫の軌跡が深海を裂く。

 解析は終わった。


 ここから先は。

 攻略の時間だった。

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