第二十話 雷帝攻略
深海に青白い雷光が走る。
巨大な身体。
海水そのものを発電器官に変えた異形。
【個体名:深層雷帝ウナギ】
【Lv60】
その瞬間だった。
未来フレーム予測が警告を鳴らす。
【危険】
【危険】
【高出力放電を検知】
「――っ!?」
反応した時には遅かった。
バチィィィィィィィッ!!
海全体が発光する。
超高圧放電。
雷は弾じゃない。
水流じゃない。
避けるための移動時間すら存在しない。
「ぐっ……!」
全身が硬直した。
神経が焼ける。
筋肉が悲鳴を上げる。
紫色の外殻が焦げる。
ノアは吹き飛ばされた。
海底を転がる。
シールド展開。
間に合わなかった。
「なるほど」
それでも笑う。
「そういうタイプか」
マグロは速かった。
エビハゼは連携型だった。
だがこいつは違う。
純粋な範囲制圧。
回避ではなく。
発動前に潰さなければならないタイプ。
⸻
雷帝ウナギが口を開く。
再び放電。
だが。
今度は見えた。
発電器官の膨張。
筋肉の収縮。
海流の変化。
未来フレーム予測が紫色の線を描く。
「発生前があるなら」
「攻略できる」
⸻
《未来フレーム予測》最大出力。
世界がスローになる。
予測線が収束する。
発電開始地点。
放電タイミング。
全部見える。
雷帝ウナギが吠えた。
再び放電。
その瞬間。
《亜音速航行》
ズドォォォォォォン!!
ノアの姿が消える。
雷が通った。
だがそこにはもういない。
直後。
雷帝ウナギの懐へ潜り込む。
⸻
「捕まえた」
《確定反撃・針地獄》
ドバァァァッ!!
猛毒針が炸裂する。
『ギィィィィィィッ!?』
肉が裂ける。
神経が破壊される。
だが。
まだ倒れない。
レベル60。
これまでの敵とは格が違う。
巨体を振り回しながら暴れる。
放電。
突進。
尾撃。
海そのものが荒れ狂う。
⸻
しかし。
もう遅い。
未来フレーム予測が完全に捉えていた。
動く前に分かる。
攻撃する前に分かる。
どこへ来るか。
全部分かる。
「チェックメイトだ」
⸻
《音速衝撃波》
《高圧遠隔砲》
《隠密毒素》
三重接続。
圧縮。
増幅。
重ねる。
雷帝ウナギが突進を開始した。
だが。
その先には。
ノアが置いた攻撃がある。
持続当て。
完全な置き技。
『ギャァァァァァァァァッ!!』
自ら最高速で突っ込む。
回避不能。
毒。
衝撃波。
高圧砲撃。
全てが同時に炸裂した。
⸻
ドゴォォォォォォォン!!
巨体が吹き飛ぶ。
外殻が砕ける。
発電器官が破裂する。
青白い雷が暴走した。
そして。
最後の悲鳴と共に。
深層雷帝ウナギは崩れ落ちた。
⸻
ノアは迷わず捕食する。
肉。
神経。
発電器官。
雷帝の全てを喰らい尽くす。
次の瞬間。
脳内に大量のログが展開された。
⸻
【『深層雷帝ウナギ』の捕食を確認】
【経験値を獲得】
【Lv50→55】
【Lv55→60】
⸻
ノアの目が細くなる。
ちょうどいい。
無駄がない。
理想的なレベリングだった。
⸻
次の瞬間。
脳内へ新たな情報が流れ込む。
⸻
【新規スキル獲得】
【《天逆鉾の放電》】
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海水を媒体にした広域殲滅。
感電麻痺。
神経破壊。
広範囲制圧。
小さく紫電が走る。
パチリ、と周囲の海水が震えた。
「悪くない」
むしろ強い。
対多数。
足止め。
牽制。
用途はいくらでもある。
だが。
アインにはまだ届かない。
これだけでは足りない。
⸻
さらに新たなログが表示された。
⸻
【スキル枠使用数:8/10】
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ノアは静かに笑う。
「あと二枠か」
まだ余裕がある。
まだビルドは完成していない。
もっと尖らせる。
もっと理不尽にする。
もっと攻略する。
アインをハメ殺すために。
⸻
その時。
最後のログが展開された。
⸻
【経験値が60へ到達しました】
【進化権が解放されます】
【進化可能】
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「来たか」
ノアは深海の闇を見上げる。
次の進化。
次のビルド。
次の攻略。
そして。
さらに強い敵。
その全てが待っている。
寿命は減るだろう。
だが。
立ち止まる理由にはならない。
世界の底。
アイン。
そこへ至るためなら。
何だって使う。
ノアはゆっくりと口元を歪めた。
「まずは進化だな」
ネオン紫の軌跡を残しながら。
《アビス・グリッチウミウシ》はさらに深い闇へと沈んでいった。




