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寿命365日の最弱ウミウシに転生した元プロゲーマー〜今度こそ世界一位をハメ殺す〜  作者: 神城ラグ
『第一章:プロの戦術論、群れのリーダーへの冷徹なる捕食(ざまぁ)』
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第二話 最適解

冷たい海流が身体を撫でる。

第一の目標は決まっていた。

レベル上げ。

進化。

生存。


そのために必要なのは感情ではない。

効率だ。

「まずは状況確認だな」

ノアは岩陰に張り付きながら周囲を観察した。

浅瀬。

水深はそこまで深くない。

海藻が多く、小魚や甲殻類もいる。

ウミウシとしては恵まれた環境だ。


だが――

「安全地帯ってことは経験値もマズい」

ゲームでも同じだった。

初心者エリアは死ににくい。

その代わり成長も遅い。


世界一位を目指すなら、こんな場所で何ヶ月も過ごしている暇はない。

視界の端で数字が減る。


【残り寿命:365日 22時間 14分 38秒】


「一年しかないんだからな」

ノアは苦笑した。

人間なら一年は長い。

だが、この世界では違う。

深海は広い。

海底は遠い。

一年なんて一瞬だ。


「だったら最短ルートを通るしかない」

その時だった。

目の前を小さな甲殻類が横切る。

エビの幼生だろう。

逃げる速度は遅い。

ノアは迷わず飛びついた。

ぱくり。


【捕食を確認】

【経験値を取得】

【固有スキル《捕食強奪》が発動しました】

【微小スキル《遊泳補助》を獲得しました】


「お」

身体が少し軽くなる。

水を押す感覚が変わった。

進む。

曲がる。

止まる。


ほんの少しだけだが性能が上がっている。

「なるほど」

ノアは理解した。


この世界のスキルは魔法じゃない。

生物の機能そのものだ。

速く泳げる生物を食べれば速くなる。

強い顎を持つ生物を食べれば噛む力が上がる。


つまり。

「食えば食うほど強くなるのか」

ぶっ壊れだ。

だが同時に納得でもあった。

ウミウシには実際、食べた相手の能力を利用する種類が存在する。


毒を蓄える種。

刺胞細胞を再利用する種。

前世で見た生物図鑑を思い出す。

「そう考えると俺の能力は、その延長線上か」


ノアは再び周囲を見る。

獲物。

獲物。

獲物。


全部経験値だ。

そこから数時間。

ノアは休まず狩り続けた。

小魚。

プランクトン。

甲殻類。

捕まえやすい獲物を優先する。


無駄な戦闘はしない。

危険な相手には近寄らない。

完全なRTA思考だった。


【Lv2】

【Lv3】

【Lv4】


レベルが上がる。

だが。


「遅いな」

普通なら異常な速度。

それでもノアは不満だった。

世界一位を目指すには足りない。


圧倒的に足りない。

もっと経験値が必要だ。

もっと格上を狩る必要がある。


その時だった。

海流の先に見覚えのある姿が見えた。

群れの連中だ。

自分をいじめていたウミウシ達。

リーダーもいる。

ノアは少しだけ目を細めた。


「……」

復讐するか?

今なら奇襲くらいはできる。

だが。


すぐに首を振った。

「いや、ないな」

今の目的は世界一位になること。

群れのリーダーを倒したところで経験値は少ない。


時間の無駄だ。

RTAで寄り道イベントを回収しないのと同じ。

効率が悪い。


「お前らなんか、後でいい」

そう言って視線を切る。

連中よりも価値のある経験値を探した方がいい。

そのまま海底沿いを進んでいく。


すると。

妙な場所に出た。

岩場。

砕けた貝殻。

大量の殻。

大量の破片。

まるで何かに叩き割られたみたいだった。


「……ん?」

ノアは動きを止める。

おかしい。

普通の魚じゃこんな壊し方はできない。

大型のカニか?


いや違う。

もっと綺麗に砕けている。

前世の経験が警鐘を鳴らした。

こういう場所は危険だ。

ボス部屋の前によくある。

ゲームでも現実でも同じ。

強者の縄張りには痕跡が残る。

ノアはゆっくり周囲を見渡した。


その瞬間。

ゴッ――――!!

海そのものが震えた。

爆発したような衝撃音。

少し離れた岩が粉々に砕け散る。


「……は?」

ノアの目が見開かれる。

岩陰。

そこから現れたのは巨大な甲殻類だった。

虹色に輝く外殻。

異様に発達した複眼。


そして。

岩すら粉砕する凶悪な拳。

ノアは前世の知識を思い出した。

生物図鑑。

海洋ドキュメンタリー。

世界最速クラスの打撃。


「モンハナシャコ……?」

その名を呟いた瞬間。

巨大な複眼が。

ゆっくりとノアを捉えた。


【危険個体を確認】

【モンハナシャコ】

【エリア上位捕食者】


海流が止まったような錯覚。

本能が叫ぶ。

逃げろ。

勝てない。

今のお前では絶対に。


だが

ノアは笑った。

「いいじゃん」

視界の奥で寿命タイマーが減る。


【残り寿命:365日 18時間 02分 41秒】


「ようやく経験値らしい経験値が出てきた」

モンハナシャコが腕を構える。


そして。

海が爆ぜた。

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