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寿命365日の最弱ウミウシに転生した元プロゲーマー〜今度こそ世界一位をハメ殺す〜  作者: 神城ラグ
『第二章:深海エリアへの進出と強敵との遭遇、ライバルとの実力差の測定』
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第十四話 見えない一撃

 深層は静かだった。

 いや。

 静かすぎた。

 ネオン紫の軌跡を引きながら、ノアはゆっくりと暗闇を下降していく。

 先ほどまでいたエビハゼの縄張りは、もう遥か上だ。

 周囲に生体反応はない。

 海流も弱い。


 まるで世界そのものが死んでいるような静寂だった。

「……不気味だな」

 ノアは呟く。

 だが警戒は緩めない。

 深層に入ってからの経験値効率は明らかに高い。


 つまり。

 出てくる敵も強い。

 寿命は残り二十九日。

 無駄な足踏みをしている余裕はなかった。


 視界の端でログを開く。

 現在のスキル構成。

 スロット使用数は九。

 限界まで近い。


「そろそろ整理するか」

 ノアの視線が三つのスキルへ向く。


《フレーム・アナライザー》

《水流演算》

《共生リンク》


 どれも優秀だ。

 だが役割は似ている。

 敵を見る。

 動きを読む。

 未来を予測する。

 結局やっていることは同じだった。

「重複してるな」

 普通なら別々に運用する。


 だが。

 ノアには普通じゃないスキルがあった。


《システム干渉》


 世界樹システムへ直接触れる、イレギュラーの権能。

 ネオン紫の亀裂が明滅する。

「やってみるか」


 直後。

 三つのスキルが強制的に接続された。

 ジジジジジッ――

 紫色のノイズが海中へ走る。

 ログが乱れた。


【スキル統合を確認】

【統合対象】

【《フレーム・アナライザー》】

【《水流演算》】

【《共生リンク》】

【統合処理を開始します】


 脳が焼けるような熱を帯びる。

 膨大な情報。

 海流。

 生体反応。

 筋肉の収縮。

 神経信号。

 全てが一つへ収束していく。


 そして。


【統合完了】

【新規スキル】

【《未来フレーム予測パケット・インスペクション》】

【スキル枠使用数:7/10】


 その瞬間だった。

 世界の見え方が変わる。

「……なんだこれ」

 遠くの海流が見える。


 いや。

 違う。

 見えているのは海流そのものじゃない。

 その先だ。

 数秒後に海流が流れる場所。

 魚が泳ぐ場所。

 岩陰から生物が飛び出す場所。

 未来の残像。

 ネオン紫の輪郭となって視界へ浮かび上がっていた。


「未来予測か」

 思わず笑う。

 悪くない。

 かなり好きだ。


 その時だった。

 視界の端に紫色の線が走った。

 一直線。

 まるでレーザーみたいな軌跡。


「ん?」

 ノアが振り向く。

 何もいない。

 生体反応もない。


 だが。

 未来フレーム予測だけが異常な警告を出していた。

 次の瞬間。

 海が爆発した。

 ドゴォォォォォン!!


「――ッ!?」

 衝撃。

 激痛。

 身体が吹き飛ぶ。

 岩盤へ叩きつけられる。

 ゼラチン質の外皮が裂けた。

 黒い体液が海中へ散る。

 何が起きた。

 見えなかった。

 反応もできなかった。

 ノアは即座に体勢を立て直す。

 視界を走査。

 索敵。

 解析。


 だが。

 何もいない。

「……は?」


 その瞬間。

 また紫色の軌跡が浮かぶ。

 一直線。

 今度は右。

 違う。

 上だ。


 いや。

 もう遅い。

 ドガァァァァァン!!

 二撃目。

 岩盤ごと吹き飛ばされる。

 深層の海が揺れた。

 ノアは数十メートル弾き飛ばされる。

 痛みより先に思考が動く。

「速すぎる」

 見えない。

 認識できない。

 未来フレーム予測ですら補足しきれていない。


 それでも。

 わずかに見えた。

 紫の残像。

 長い魚体。

 鋭い尾。

 弾丸みたいな突進。

 ログが展開される。


【解析開始】

【対象を捕捉】

【深層大型個体】

【名称:《レールガンマグロ》】


 ノアの顔が引きつる。

「名前からしてクソゲーじゃねぇか」

 直後。

 暗闇の向こうで。

 巨大な赤い眼が開いた。

 海流が震える。

 周囲の海水が吸い込まれる。

 加速。

 圧縮。

 突進準備。

 未来フレーム予測が警告を鳴らした。

 ネオン紫の軌跡が無数に浮かび上がる。


 だが。

 まだ足りない。

 見える。

 だが避けられない。

 ノアは口元を歪めた。


「なるほど」

「そういうボスか」

 深層の暗闇。

 その奥で。

 レールガンマグロが再び加速を始める。

 海そのものを砕くような轟音が響いた。


 そして。

 ノアは笑った。

「面白い」

「攻略してやるよ」

 次の瞬間。

 深海を切り裂く第三撃が迫る――。

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