第十二話 通信エラー
ズガァァァァァン!!
超高圧の衝撃波が海中を裂く。
直撃コース。
回避不能。
普通なら。
だが。
衝撃波はノアの横を通り過ぎた。
岩盤が吹き飛ぶ。
砂煙が舞う。
ノア自身が一番驚いていた。
「外れた?」
偶然じゃない。
狙いが逸れた。
明らかに。
ほんの一瞬だけ。
その時。
体表を走るネオン紫の亀裂が淡く明滅した。
ジジッ。
耳障りなノイズ。
深海の水が歪む。
バグ画面みたいな残像。
そして消える。
「……今のか」
ノアの目が細くなる。
進化後から存在する固有特性。
《システム干渉》
説明文はない。
仕様も不明。
だが。
何かが起きた。
それだけは確実だった。
座標取得。
射撃準備。
完璧な連携。
ノアは動かなかった。
避けない。
逃げない。
観察する。
検証する。
攻略勢の基本だ。
ズガァァァァン!!
衝撃波発射。
ノアはギリギリで身体をずらした。
その瞬間。
意識的に《システム干渉》を発動しようとする。
だが。
何も起きない。
「発動条件があるのか?」
次弾。
回避。
失敗。
衝撃波が身体を掠めた。
バチィィィッ!!
外殻が抉れる。
激痛。
だが。
ノアは笑った。
「なるほど」
「試行回数が必要なタイプか」
再び検証。
移動。
停止。
急加速。
急停止。
フェイント。
回避。
回避。
回避。
何度も繰り返す。
その途中。
ノアはある違和感に気付いた。
ハゼがノアを見た瞬間。
干渉が起きやすい。
さらに。
テッポウエビが射撃直前になると。
ノイズが強くなる。
共通点。
情報伝達。
「そういうことか」
脳内でパズルが組み上がる。
ハゼ。
索敵担当。
テッポウエビ。
砲台担当。
そして。
二匹を繋ぐ共生リンク。
もし。
《システム干渉》が触れているのが。
その通信経路だったら。
ノアはわざとハゼの視界へ飛び込んだ。
直後。
ネオン紫のノイズが弾ける。
ジジジジジッ!!
水流が乱れる。
ハゼが身体を震わせた。
そして。
テッポウエビが放った衝撃波は。
何もない空間を撃ち抜いた。
「当たりだ」
ノアの口元が歪む。
今のは偶然じゃない。
確信。
通信が乱れた。
座標がズレた。
だから外れた。
つまり。
この能力は。
対象そのものじゃない。
システム。
情報。
接続。
そういったものへ干渉する能力。
完全なチートではない。
だが。
使い方次第で。
ゲームを壊せる。
「面白いじゃないか」
ノアは笑う。
ズガァァァァン!!
再び衝撃波。
だが。
今度は見える。
この敵の勝ち筋が。
そして。
敵の敗因が。
完璧だった共生システム。
だが。
システムである以上。
通信がある。
同期がある。
遅延がある。
エラーがある。
ノアの目が怪しく光った。
「なるほど」
紫色のノイズが広がる。
ハゼの瞳が揺れる。
テッポウエビの照準がブレる。
そして。
ノアは確信した。
「ラグらせればいい」
その瞬間。
ハゼの表情が初めて変わった。
まるで。
本能的な恐怖を感じたみたいに。
ノアはゆっくり前へ出る。
ネオン紫の軌跡が深海へ伸びた。
「攻略法は見つけた」
テッポウエビが最大出力を溜める。
ハゼが必死に座標を送る。
だが。
もう遅い。
ノアの口元が歪んだ。
「攻略開始だ」




