12話 ポストの日常。
昼下がり。
俺はルミナを待っていた。
陽射しが心地いい。
俺の頭?の上では、あの野良猫——ネコウイチが丸くなって盛大にイビキをかいている。
俺はお前のベッドじゃないぞ。
まあ、動けないから退かせないんだが。
そんな平和な街角に、ペタペタと賑やかな足音が近づいてきた。
「やーい! お化け箱ー!」
やんちゃ盛りの子供だ。
手に持った棒切れで、俺のボディを突っつこうとしている。
軽い衝撃でも地味に響くからやめてほしい。
「こら! ボク、やめなさい!」
通りがかった母親が、慌てた様子で子供の手を引っ張る。
「だってー、変な箱なんだもん!」
「ダメでしょ! 郵便箱にイタズラするとね……投函口から『ニューっ』て手が伸びてきて、中に吸い込まれちゃうのよ!」
「うっそだー! そんなの嘘だー!」
子供は無邪気に笑っている。
だが、俺は心の中で静かに頷いた。
(あながち、間違いではない)
「ほら、行くわよ。手紙を出す人に迷惑でしょ」
「ちぇー」
母親に首根っこを掴まれ、引きずられていく子供。
去り際、子供とバッチリ目が合う。
俺はほんの少しだけ——投函口の蓋を、パタ、と動かしてみた。
「……っ!?」
子供の顔が引きつる。
「おかあさん! いま! パクッてした! パクッてしたぁぁぁ!!」
「はいはい、嘘つかないの」
泣き叫びながら去っていく子供を見送る。
俺は満足感を覚えていた。
ポストの威厳は守られたな。
たまには、こんな平和な瞬間があってもいい。
頭の上で、ネコウイチが「ニャ……」と満足そうに寝返りを打った。




