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# 第9話 ## 「優月の誕生日」

# 第9話


## 「優月の誕生日」


六月。


雨の多い季節。


窓を叩く雨音を聞きながら、僕はカレンダーを見ていた。


もうすぐ。


優月の誕生日だった。


「今年は何が欲しいんだろうな」


僕が呟くと。


唯ちゃんが笑う。


「聞いてみたら?」


その時だった。


背後から声がする。


「だめぇぇぇ!」


結愛だった。


ものすごい勢いで走ってくる。


「びっくりした!」


僕は思わず飛び上がる。


結愛は真剣な顔だった。


「きいたらだめ!」


「なんで?」


「ひみつだから!」


どうやらサプライズをしたいらしい。


優月本人は何も知らない。


結愛だけが勝手に盛り上がっている。


---


翌日。


結愛は朝から悩んでいた。


ソファの上で腕組み。


難しい顔。


優月が聞く。


「どうしたの?」


「なんでもない!」


怪しすぎる。


優月は首を傾げる。


結愛は慌てて逃げた。


その後も。


「うーん……」


「どうしよう……」


「ない……」


ずっと悩んでいる。


夕方。


ついに僕が聞いた。


「何がないの?」


結愛は泣きそうな顔になる。


「ぷれぜんと!」


なるほど。


優月への誕生日プレゼントだった。


「なにあげたらいいかわかんない……」


結愛にしては珍しく本気で悩んでいた。


僕は少し考える。


そして言った。


「物じゃなくてもいいんじゃない?」


「え?」


「優月が喜ぶものなら」


結愛は考える。


真剣に。


ものすごく真剣に。


---


誕生日当日。


朝。


優月が起きると。


リビングには飾り付け。


風船。


手作りのガーランド。


そして。


家族みんな。


「お誕生日おめでとう!」


優月はびっくりした。


「えっ!?」


結愛は飛びつく。


「おめでとー!」


優月は笑った。


「ありがとう」


その笑顔だけで。


準備した甲斐があった。


---


夜。


誕生日パーティー。


ケーキもある。


ごちそうもある。


プレゼントもある。


優月はとても嬉しそうだった。


そして最後。


結愛が前へ出た。


緊張している。


珍しい。


「ゆづき」


「うん?」


結愛は一枚の紙を差し出した。


優月が受け取る。


そこには。


クレヨンで描かれた絵。


家族四人。


真ん中には大きなハート。


そして。


一生懸命書いた文字。


---


ゆづきへ


だいすき


いつもありがとう


---


たったそれだけ。


でも。


結愛が何日も悩んで。


一生懸命書いたものだった。


優月は絵を見つめる。


しばらく黙って。


そして。


小さく笑った。


でも。


その目には涙が浮かんでいた。


「ありがとう」


結愛が不安そうに聞く。


「いやだった?」


優月は首を横に振る。


「ううん」


そして。


結愛をぎゅっと抱きしめた。


「すっごく嬉しい」


結愛の顔がぱっと明るくなる。


「ほんと!?」


「ほんと」


優月は笑った。


「これ、宝物にする」


結愛は飛び跳ねた。


「やったぁぁぁ!」


---


パーティーが終わり。


夜も遅くなった頃。


優月は一人でプレゼントを見返していた。


本。


キーホルダー。


手紙。


そして。


結愛の絵。


一番最後まで見ていたのは、その絵だった。


僕はそっと聞く。


「そんなに気に入った?」


優月は頷く。


「うん」


「どうして?」


優月は少し照れながら答えた。


「だって」


そして。


優しく笑った。


「世界に一つしかないから」


その言葉を聞いて。


僕も嬉しくなった。


---


寝る前。


優月は家族みんなに言った。


「今日は最高の誕生日だった」


僕たちは笑う。


唯ちゃんも。


結愛も。


みんな。


そして僕は思う。


プレゼントの値段じゃない。


豪華な場所でもない。


大切なのは。


「おめでとう」を伝えたい人がいること。


その幸せを。


優月はちゃんと受け取っていた。


窓の外では雨が上がっていた。


新しい一年が。


優月にとって素敵なものになりますように。


そう願いながら。


僕たちは静かに灯りを消した。


---


### 次回予告


**第10話「結愛、家出する!?」**


「もうしらない!」


初めて家族とケンカした結愛。


リュックを背負い、家出を宣言!?


しかし行き先はまさかの――。


笑って泣ける、結愛の大冒険が始まる。


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