# 第10話 ## 「結愛、家出する!?」
# 第10話
## 「結愛、家出する!?」
事件は突然だった。
その日の夕方。
リビングに響いたのは――
「もうしらないっ!!」
結愛の大声だった。
僕も唯ちゃんも優月も驚く。
何事かと思ったら。
原因はプリンだった。
最後の一個。
冷蔵庫に残っていたプリンを。
優月が食べた。
ただそれだけだった。
もちろん。
悪気はない。
そもそも名前も書いてなかった。
しかし。
結愛にとっては大事件だった。
「ゆあのぷりんだったのにー!」
優月も慌てる。
「ご、ごめん!」
「しらない!」
「明日買ってくるから!」
「しらないー!」
完全に怒っていた。
そして。
結愛は部屋へ走っていった。
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十分後。
リビングに現れた結愛。
背中にはリュック。
帽子。
水筒。
そして。
折り紙のペンギン。
完全装備だった。
僕は嫌な予感しかしない。
結愛は真剣な顔で言った。
「いえでします」
静寂。
優月が吹き出す。
「家出?」
「そう!」
「どこ行くの?」
結愛は少し考えた。
真剣に。
ものすごく真剣に。
そして。
「こうえん」
近い。
徒歩三分。
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唯ちゃんは笑いをこらえながら聞いた。
「いつ帰ってくるの?」
結愛は考える。
「よる」
「夜?」
「うん」
「ご飯は?」
結愛、固まる。
そこ考えてなかった。
「……たべる」
「どこで?」
「……」
沈黙。
計画が甘い。
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それでも。
結愛は出発した。
「いってきます!」
家出なのに挨拶した。
そして。
三分後。
公園到着。
僕たちは少し離れて見守る。
結愛はベンチに座る。
腕組み。
完全に家出人。
しかし。
五分後。
鳩が来た。
結愛は喜ぶ。
「こんにちはー!」
家出を忘れている。
十分後。
ブランコ発見。
乗る。
楽しそう。
十五分後。
滑り台。
笑っている。
もうただの公園遊びだった。
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夕焼けが広がり始めた頃。
優月が公園へやって来た。
手にはコンビニ袋。
結愛はまだ少し拗ねている。
「なに」
優月は隣に座った。
そして。
袋から取り出す。
プリン。
結愛の大好きなやつ。
「ごめん」
結愛は黙る。
優月は続けた。
「本当に間違えたの」
「……」
「今度から名前書こう」
結愛はプリンを見る。
優月を見る。
プリンを見る。
そして。
ぽつり。
「ほんと?」
「ほんと」
優月は笑った。
結愛も少し笑う。
「じゃあゆるす」
早い。
ものすごく早い。
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そして。
二人で家へ帰る。
手を繋いで。
途中。
優月が聞いた。
「家出終わり?」
結愛は元気よく答えた。
「おわり!」
即終了だった。
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家に着く。
玄関を開ける。
すると。
唯ちゃんと僕が待っていた。
「おかえり」
結愛は少し照れた。
そして。
にっこり笑う。
「ただいま!」
その声を聞いて。
僕は思う。
やっぱり。
家族って不思議だ。
ケンカもする。
怒ることもある。
でも。
最後には同じ場所へ帰ってくる。
それが家族なんだろう。
その夜。
結愛はプリンを食べながら言った。
「やっぱりおうちがいい」
優月が笑う。
「知ってた」
唯ちゃんも笑う。
僕も笑う。
そして結愛は胸を張った。
「でもまたいえでする!」
「しなくていい!」
家族全員の声が重なった。
リビングは大笑いに包まれた。
結愛の初めての家出。
滞在時間、一時間。
移動距離、三分。
でも。
それもきっと。
いつか笑いながら話す家族の思い出になるのだった。
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### 次回予告
**第11話「雨の日の宝探し」**
外は大雨。
遊びに行けず退屈する結愛。
すると優月が提案する。
「家の中で宝探ししない?」
そして見つかる、思いがけない"宝物"とは――。
笑顔と発見がいっぱいの雨の日が始まる。




