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# 第8話 ## 「パパの秘密基地」

# 第8話


## 「パパの秘密基地」


ある土曜日。


朝から快晴だった。


「よし!」


僕は物置の前に立った。


「今日は掃除するぞー!」


唯ちゃんが拍手する。


「やっとだね」


優月も頷く。


「ずっと言ってたもんね」


結愛は物置を見上げる。


「たからばこ?」


だいたい合ってる。


物置には長年しまいっぱなしになっていた段ボールが山ほどあった。


そして。


掃除開始から三十分後。


事件は起きた。


「あ!」


優月が一つの箱を見つけた。


少し古びた段ボール。


マジックで書かれている文字。


**『しんいちの宝物』**


静寂。


僕は固まる。


嫌な予感しかしない。


結愛の目が輝いた。


「たからものー!」


ダッシュ。


確保。


終わった。


---


段ボールは容赦なく開けられた。


中から出てきたのは。


ビー玉。


ミニカー。


昆虫図鑑。


折れた木の枝。


なぜか石。


そして。


大量の秘密基地の設計図。


優月が笑う。


「なにこれ」


僕は頭をかく。


「秘密基地だよ」


「本気で作ろうとしてたの?」


「本気だった」


優月、爆笑。


唯ちゃんも笑っている。


結愛は設計図を見て感動していた。


「すごい!」


初めて味方がいた。


---


さらに箱を探る。


すると。


一枚の写真が出てきた。


そこには。


小学生くらいの僕。


泥だらけ。


満面の笑み。


木の上に立っている。


結愛が固まる。


写真。


僕。


写真。


僕。


何度も見比べる。


そして。


衝撃の一言。


「ぱぱも子どもだったの!?」


全員吹き出した。


「そりゃそうだよ!」


「ええええ!?」


結愛、本気で驚いていた。


どうやら僕は最初からパパだったと思っていたらしい。


---


昼過ぎ。


さらに奥から古いノートが出てきた。


僕は少し懐かしくなる。


「それ……」


開いてみる。


そこには。


小学生の頃の夢が書いてあった。


---


ぼくのゆめ


ひみつきちをつくる。


ぼうけんする。


ヒーローになる。


---


字も下手。


内容も単純。


でも。


なんだか懐かしい。


優月が聞く。


「叶った?」


僕は少し考える。


ヒーローにはなれなかった。


冒険もしていない。


秘密基地も完成しなかった。


だけど。


ふと家族を見る。


唯ちゃん。


優月。


結愛。


みんな笑っている。


僕は微笑んだ。


「違う形で叶ったかな」


「違う形?」


優月が首を傾げる。


僕は頷く。


「今のこの家が、秘密基地みたいなものだから」


みんなが帰ってきて。


笑って。


安心できる場所。


それって。


子どもの頃に作りたかった秘密基地と同じかもしれない。


唯ちゃんが優しく笑った。


「それ、素敵だね」


---


夕方。


掃除は終わった。


でも。


なぜかリビングには段ボールが残っていた。


結愛が中に入っている。


「みてー!」


秘密基地完成。


しかも本人は隊長らしい。


優月も入った。


唯ちゃんも入った。


僕も入った。


狭い。


ものすごく狭い。


でも。


なぜか楽しい。


結愛が満足そうに言う。


「ここ、さいきょう!」


優月も笑う。


「たしかに」


僕も頷く。


「最強だな」


段ボール一つ。


それだけなのに。


家族みんなで笑っている。


それだけで十分だった。


---


その夜。


寝る前。


優月が聞いた。


「パパ」


「ん?」


「今の夢ってある?」


僕は少し考えた。


そして答える。


「あるよ」


「なに?」


僕は隣の部屋を見る。


そこには。


結愛の寝顔。


唯ちゃんの笑顔。


優月の優しい瞳。


全部あった。


「みんなで笑って過ごすことかな」


優月は少しだけ照れながら笑った。


「それなら叶ってるね」


「うん」


本当に。


叶っている。


毎日少しずつ。


静かに。


確かに。


---


### 次回予告


**第9話「優月の誕生日」**


もうすぐ優月の誕生日。


しかし結愛はなぜか大パニック。


「ぷれぜんとがないー!」


家族みんなで考える、世界に一つだけの贈り物とは――。


笑顔と涙の誕生日が始まる。


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