# 第7話 ## 「優月、初めての反抗期?」
# 第7話
## 「優月、初めての反抗期?」
「別に」
その言葉を聞いたのは、その週の月曜日だった。
朝ごはんの時間。
唯ちゃんが聞く。
「優月、今日の給食なんだっけ?」
優月はパンをかじりながら答えた。
「別に」
「いや、給食のメニュー聞いたんだけど」
「あっ、ごめん」
優月は慌てて言い直した。
でも。
なんだか様子がおかしい。
そして学校から帰ってきても。
「学校どうだった?」
「普通」
「何かあった?」
「なんでもない」
短い。
とにかく短い。
僕と唯ちゃんは顔を見合わせた。
夜。
結愛はもっとストレートだった。
「ゆづき」
「なに?」
「こわれた?」
優月が吹き出した。
「壊れてない!」
「ほんと?」
「ほんと!」
結愛は安心した。
「よかったー!」
単純だった。
---
でも。
数日経っても。
やっぱり少し違う。
笑う。
怒る。
話もする。
だけど。
どこかモヤモヤしているように見えた。
僕は気になった。
ある日の夕方。
優月がベランダで一人、空を見ていた。
夕焼けが広がっている。
僕は隣に立つ。
「きれいだな」
「うん」
少し沈黙。
風が吹く。
そして僕は聞いた。
「何か悩み事?」
優月はすぐには答えなかった。
しばらく空を見ている。
やがて小さな声で言った。
「別に……」
そして。
少しだけ笑う。
「って言うと思った?」
僕は思わず笑った。
「思った」
優月も笑った。
その顔を見て少し安心する。
優月は手すりにもたれながら話し始めた。
「最近ね」
「うん」
「学校で将来の夢を書く授業があったの」
「へえ」
「でも書けなかった」
僕は黙って聞く。
優月は続ける。
「みんなはスポーツ選手とか、先生とか、ケーキ屋さんとか書いてた」
「うん」
「私は何も思いつかなくて」
夕焼けが優月の横顔を照らしていた。
「なんか私だけ置いていかれてる気がした」
その言葉を聞いて。
僕は少し胸が痛くなった。
まだ子どもなのに。
そんなことを考えていたんだ。
「優月」
「ん?」
「夢ってさ」
「うん」
「今決まってなくてもいいと思うよ」
優月は静かに聞いている。
「大人だって分からない人いるし」
「そうなの?」
「いるいる」
実際いる。
たくさんいる。
僕だってそうだ。
「大事なのは」
「うん」
「好きなことを見つけることじゃないかな」
優月は考える。
そして聞く。
「好きなこと?」
「うん」
「私の好きなことってなんだろ」
僕は笑った。
「絵を描くの好きじゃん」
「うん」
「本も好きだし」
「うん」
「家族のことも好きだし」
優月が少し照れる。
「それは好き」
即答だった。
僕は嬉しくなる。
その時だった。
ガラッ。
ベランダのドアが開く。
結愛登場。
なぜか毛布を引きずっている。
「いたー!」
「どうした?」
結愛は優月に近付く。
そして。
ぎゅっ。
抱きついた。
「?」
優月も僕もびっくりする。
結愛は言った。
「ゆづき、すき!」
突然だった。
本当に突然だった。
優月は目をぱちぱちさせる。
「え?」
「すき!」
「う、うん」
「だからだいじょうぶ!」
意味は分からない。
でも。
優月は笑った。
少しだけ涙ぐみながら。
「ありがとう」
結愛は満足そうだった。
「えへへ」
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その夜。
優月は久しぶりにたくさん話した。
学校のこと。
友達のこと。
好きな本のこと。
将来のこと。
全部。
僕たちは聞いた。
ただ聞いた。
それだけだった。
でも。
それで良かったのかもしれない。
寝る前。
優月が僕に言った。
「パパ」
「ん?」
「夢、まだなくてもいいかな」
僕は頷く。
「もちろん」
優月は安心したように笑った。
「そっか」
そして部屋へ向かう。
途中で振り返った。
「でも」
「うん?」
「いつか見つける」
その顔は。
少しだけ大人になったように見えた。
僕は静かに頷く。
「楽しみにしてる」
優月は笑った。
そして部屋のドアを閉めた。
その背中を見ながら思う。
子どもは成長する。
悩みも増える。
不安も増える。
でも。
それは前に進んでいる証拠なんだ。
リビングでは。
結愛が毛布に包まっていた。
「なにしてるの?」
僕が聞く。
結愛は真顔で答えた。
「まほうつかい」
まだまだ子どもだった。
僕は吹き出した。
そして今日も。
家の中には笑い声が響いていた。
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### 次回予告
**第8話「パパの秘密基地」**
物置の掃除中に見つかった古い段ボール。
その中には、パパの子ども時代の宝物が詰まっていて――。
「ぱぱも子どもだったの!?」
結愛、大混乱!
家族みんなで過去をのぞく、懐かしくて温かいお話。




