# 第5話 ## 「優月の小さなウソ」
# 第5話
## 「優月の小さなウソ」
春休みも終わりに近づいた頃。
その日の優月は、どこか様子がおかしかった。
夕飯のあと。
いつもならリビングで宿題をするのに。
「ちょっと部屋いくね」
そう言って、すぐに自分の部屋へ行ってしまった。
僕は首をかしげる。
「珍しいな」
唯ちゃんも気付いていたらしい。
「そうだね」
結愛はプリンを食べている。
気付いていない。
平和だ。
翌日。
朝。
優月は学校から帰ると、ランドセルを置いてすぐ部屋へ向かった。
そして。
ガチャ。
バタン。
閉めた。
結愛が聞く。
「なにしてるの?」
優月は慌てて答えた。
「な、なんでもない!」
怪しい。
ものすごく怪しい。
結愛の探偵魂に火がついた。
「きっとひみつだ!」
「そういうのじゃない!」
「ひみつだ!」
「違うって!」
夕方。
結愛はついに作戦を決行する。
部屋の前で張り込み。
しかし。
五分後。
寝ていた。
探偵失格である。
その夜。
僕は洗い物を手伝いながら唯ちゃんに聞いた。
「何か知ってる?」
唯ちゃんは少し笑った。
「知ってるけど」
「うん」
「たぶん、まだ秘密」
なるほど。
優月から聞くのを待つべきらしい。
そして数日後。
その日は日曜日だった。
朝から雨。
家族みんなで家にいた。
昼過ぎ。
優月が少し緊張した顔でリビングへやって来る。
手には大きな封筒。
「みんなに見せたいものがあるの」
僕たちは顔を見合わせた。
優月は深呼吸する。
そして。
封筒から何枚もの紙を取り出した。
そこには――
絵。
たくさんの絵。
家族の絵だった。
僕。
唯ちゃん。
結愛。
そして優月。
みんなが笑っている。
水族館の日。
公園の日。
誕生日の日。
旅行の日。
たくさんの思い出。
結愛は目を輝かせる。
「ゆあだ!」
僕も驚いていた。
どれも上手だった。
そして何より。
優月の優しさが詰まっていた。
僕が聞く。
「これ、ずっと描いてたの?」
優月は照れながら頷く。
「うん」
「なんで秘密に?」
優月は少しだけ恥ずかしそうに笑った。
「だって完成してから見せたかったんだもん」
なるほど。
そして最後の一枚を取り出す。
そこには大きく書かれていた。
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『わたしたちの家族アルバム』
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その下には。
小さな文字。
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いつもありがとう。
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唯ちゃんが口元を押さえた。
僕も胸が熱くなる。
結愛はまだ状況を理解していない。
でも。
なんとなく大事なことだと分かったらしい。
「ゆづき、すごい」
優月は少し照れた。
「えへへ」
その時。
結愛が突然走り出した。
自分の部屋へ。
数分後。
何かを持って戻ってくる。
「ゆあも!」
手には一枚の紙。
クレヨンで描かれた絵。
丸が四つ。
そして。
謎の生き物。
僕が聞く。
「これは?」
結愛は胸を張る。
「かぞく!」
「じゃあこの謎の生き物は?」
「ぺんぎん!」
まだいた。
家族だったらしい。
リビングは大爆笑になった。
優月も笑う。
唯ちゃんも笑う。
結愛も笑う。
そして僕も。
雨はまだ降っている。
でも。
家の中はとても暖かかった。
優月の小さなウソ。
それは。
家族を喜ばせるための秘密だった。
僕は思う。
優月は本当に優しい子に育っている。
それが嬉しかった。
少しだけ誇らしかった。
そして。
その日からリビングには、
『わたしたちの家族アルバム』
が飾られることになった。
家族みんなのお気に入りとして。
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### 次回予告
**第6話「唯ちゃんの元気がない日」**
いつも笑顔の唯ちゃんが、なぜか元気がない。
心配する優月。
張り切る結愛。
そして家族が考えた、とっておきの作戦とは――。
少し優しくて、少し泣けるお話。




