# 第3話 ## 「優月の秘密のノート」
# 第3話
## 「優月の秘密のノート」
日曜日の午後。
窓から入る春の風が気持ちいい。
リビングでは。
僕は洗濯物をたたみ。
唯ちゃんは読書。
結愛は床に寝転がりながら、お絵描きをしていた。
平和だった。
本当に平和だった。
五分前までは。
「みつけたー!」
結愛の大声が響く。
嫌な予感。
ものすごく嫌な予感。
優月の部屋からだった。
僕たちが駆けつけると。
結愛が一冊のノートを掲げていた。
「あったー!」
優月の顔色が変わる。
「あっ!!」
猛ダッシュ。
しかし遅い。
結愛はページを開いてしまった。
「なになにー?」
優月、真っ青。
「だめぇぇぇぇ!!」
その声に僕も唯ちゃんも驚く。
普段は落ち着いている優月が、本気で慌てていた。
結愛は逃げる。
優月は追う。
家の中で大追跡劇が始まった。
「まてー!」
「やだー!」
「それ返してー!」
「やだー!」
僕と唯ちゃんは見守るしかない。
そして。
数分後。
ようやく確保。
優月はノートを抱きしめる。
顔が真っ赤だった。
唯ちゃんが優しく聞く。
「そんなに大事なの?」
優月は少し迷った。
それから小さく頷く。
「うん」
僕は無理に聞かないことにした。
誰にだって秘密はある。
優月も成長している。
そう思った。
ところが。
その日の夜。
夕飯を食べ終えた頃だった。
優月が突然言った。
「見てもいいよ」
「え?」
「ノート」
僕たちは驚く。
優月は少し照れていた。
「別に隠したかったわけじゃないし」
そう言ってノートを差し出した。
僕は恐る恐る開く。
そこには。
絵。
文章。
小さな日記。
たくさんの言葉。
優月が見た景色。
感じたこと。
家族との思い出。
全部が書いてあった。
その中の一ページに。
僕は目を止めた。
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今日、水族館へ行った。
結愛はペンギンになっていた。
たぶん本気だった。
面白かった。
ママは笑っていた。
パパも笑っていた。
私も笑った。
みんなで笑った。
そういう日が好き。
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次のページ。
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今日、少し嫌なことがあった。
でも家に帰ったら結愛が変な踊りをしていた。
笑った。
嫌なことを少し忘れた。
家ってすごい。
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僕は黙ってページをめくる。
そして最後の方。
そこには。
短い文章があった。
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私の家族はうるさい。
結愛は毎日騒がしい。
パパはたまに変なことを言う。
ママは優しい。
でも。
私はこの家が好き。
ずっと好き。
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僕の目が少し熱くなる。
唯ちゃんも静かに微笑んでいた。
結愛は内容をよく分かっていない。
ただ聞いた。
「ゆあ、いた?」
優月は笑った。
「いっぱい出てたよ」
結愛は大喜び。
「やったぁ!」
自分が登場していることだけで満足らしい。
優月は少し恥ずかしそうだった。
「変だった?」
僕は首を振る。
「全然」
唯ちゃんも言う。
「素敵だったよ」
優月は安心したように笑った。
その笑顔は。
少しだけ大人っぽかった。
夜。
みんなが寝静まった後。
僕はふと思う。
子どもは成長する。
毎日見ているから気づかない。
でも。
確実に。
優月の中には、優月だけの世界が育っている。
それが少し嬉しくて。
少し寂しい。
そんな気持ちになった。
隣では。
結愛が寝言を言う。
「ぺんぎん……なかま……」
まだ言ってる。
僕は思わず吹き出した。
そして静かな夜の中で思う。
今日もまた。
忘れたくない一日だった。
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### 次回予告
**第4話「結愛、ママになる」**
ある朝。
結愛が突然宣言する。
「きょうから、ゆあがママ!」
家事を始める結愛。
しかし、その結果は――!?
笑いが止まらない家族の一日が始まる。




